地球温暖化は思ったよりもずっと人間のせい_でも意外と対策にも成功している_

地球温暖化は思ったよりもずっと人間のせい。でも意外と対策にも成功している。

ハイライト
・世界の気温は100年あたり0.74℃上昇している。日本の温暖化スピードは1.7倍速い。
・気候学者の97%は、地球温暖化は人が原因で起こるという結論に合意している。
・CO2排出量の頭打ちに成功している国もあるぞ。
今回の記事は、サークルメンバーより頂いたギモン
”地球温暖化”についての内容です。ギモン提供ありがとうございます!

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地球は本当に温暖化しているのか🌏

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気象庁が公開しているデータによると、
"世界"の気温は100年あたり0.74℃のスピードで上昇しています。

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日本の気温は100年あたり1.24℃ずつ上昇しています。

気温の上昇スピードは日本の方が1.7倍速いという結果です。


とはいえ、100年でたったの1.24℃と思えてしまいますよね。

この気温変化は、地球にどんな影響を及ぼすのでしょうか?


🌱地球温暖化が季節に与える影響🍁

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Science誌に掲載されたバーゼル大学の情報によると、春が来るのが早まってきています。

彼らは植物の芽が花開き、そして枯れるまでの期間を調べることで、1971年から10年ごとに2.5日ずつ春が来るのが早まっていることを示しました。

彼らの計算を単純に適応すると、1970年 → 2020年の間に、春の到来は12.5日早まっている。つまり、1/3か月ほど早くなっていると言えるのです。

この変化は、私たちの生活に、意外にも大きな変化を及ぼします。


地球温暖化で感染症が増える🦟

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2005年のミシガン大学の研究では、地球温暖化に伴う感染症の増加について調べられました。その結果、

蚊の生息範囲が拡大し、蚊が媒介するマラリア・デング熱などの致死的な感染症に罹患する
・飲料水の減少や汚染による感染症の原因となる
・農作物が腐って感染症を媒介する

などなど、さまざまな悪影響が予測されています。

感染症以外にも、魚の分布の変化や農作物の変化、動物の生息域の変化などによって、食生活や居住環境への影響も多大に発生すると考えられています。


地球温暖化で干ばつが起こる・・・?🐫

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地球温暖化が起こると、気温が高くなる為、地表は乾燥し、雨の降らない砂漠地帯が増えるように思えます。

しかし、nature誌に2013年に公表された論文では、もっとリアルな干ばつについての問題提起が行われました。

現在、干ばつの定義や地球規模での温度・降水量の観察データはまだまだ不十分です。地球規模の天候データは不確実性が高く、せいぜい10年程度のトレンドを理解することしかできないのではないか?と考えられています。

残念なことに、同じデータを複数の研究チームが解釈しても、結論はつかず、温暖化によって干ばつが起こる or 起こらないについて論争している段階です。

したがって、人為的な要因によって干ばつが起こるかどうかは”まだ”わかりません。さらに、そのタイミングを予測することもできません。

一方、わかっていることもあります。一度干ばつが起こった地域は、地表から水分を蒸発させて温度を下げることが出来ない為、太陽光による地表熱を下げることが出来ません。したがって、より早く干ばつが進み、拡大していくと考えられています。

さらに、雨が降りやすい地域では、蒸発した水分が雨になる為、干ばつは起こりまらないものの、温暖化が進むほどに雨の勢いが激しくなり水害のリスクは高まっていくと予想されています。

したがって、干ばつをなるべく最小限に抑える努力が必要であることは間違いありません。


地球温暖化が起こるのは人間のせいなのか?🗿

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「地球温暖化が誰のせいかなんてわからないじゃないか」

この単純な批判に答えを出すことは困難です。正しい結論を出すためには、人間を地球上から消し去って、地球の温度を100年くらい測ればいいのですが、現実にそんなことはできないからです。

しかし、気候学者たちの結論は「地球温暖化は人為的なものだ」というものです。それを明らかにしたのがEnvironmental Research Lettersに掲載された2016年の研究です。

研究チームは、過去の2,412個の研究内容を精査し、科学者たちが地球変動は”人為的なもの”だと考えているかどうかを調べました。気候変化の専門家である気候学者たちが出した結論をたくさん集めることで、科学者たちの合意点がどこにあるかを探ったのです。

その結果、気候科学者たちの97%が、地球温暖化は”人為的なものだ”と結論付けていることが判明しました。これが科学的なコンセンサス(合意)です。

科学的コンセンサスが97%よりは低いとする論文もいくつかありますが、少なくとも、地球温暖化は人為的なものだという考えが、9割以上間違いないというのが科学者たちの結論です。

これだけ圧倒的な科学的証拠があるのだから、地球温暖化の知識はだれもが持っている常識になっているハズですよね。しかし現実は違います。

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Plutzerらは、2016年にアメリカ国民が地球温暖化に対する科学的コンセンサス(合意)をどのくらいだと考えているかを調査しました。

その結果、科学的コンセンサスが91%~100%だと考えている人は、

国民全体:12%
中学の科学教師:30%
高校の科学教師:45%

つまり、教える側も地球温暖化が人為的なものだとは信じられていなかったのです。これには、教育者の勉強不足以外にも大きな理由があります。


なぜ、地球温暖化対策はいつも消極的なの?💣

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地球温暖化と政治的・経済的なイデオロギーは対立しています。

地球温暖化の原因は、主に温室効果ガスの増加にあります。つまり二酸化炭素(CO2)の排出量が多いことです。これは先ほど紹介した科学者のコンセンサスから得られた結論です。

視点を変えて、政治的・経済的な立場で物事を考えてみましょう。経済を回し、うまく国民を統治するためには、お金が必要です。お金を生むためには、モノを売らなければいけません。モノを作るためにはエネルギーが必要です。現代で最も重要なエネルギーは電力。その電力を作るためには多くの化石燃料が燃やされ、CO2が大量に排出されます。

このように対立構造にと政治的・経済的イデオロギーは対立しています。

地球温暖化対策を行うと、モノがあまり作れなくなります。生産のために必要な電力の多くが火力発電で賄われている現在、CO2排出を減らすことは、生産量の低下に直結します。モノが作れなくなれば、お金を得ることが出来ません。お金が得られなくなることは、当然恐ろしいのです。したがって、地球温暖化対策は一筋縄では進んでいきません。

ジレンマ

しかし、こういったジレンマと戦いながらも、CO2の排出量に制限をかけることに成功している国々があります。

1970年以降、アメリカ、イギリス、日本の3か国は1人当たりのCO2排出量を制限し、増加させることなく維持することが出来ています。アメリカ・イギリスは既に減少トレンドに入っていることも注目です。

*3か国以外にもこのレベルに達している国はたくさんあります。

もちろん、途上国においては成長とともにCO2排出量が増えているため、地球全体としては対策をしていくことが急務ではあります。

しかし、私たちは決して後退しているワケではありません。

一歩ずつ、前へ進んでいけるのです。


地球温暖化の原因:CO2の世界各国の排出量🗺️

1人当たりのCO2排出量を調査してみましょう。世界中のデータを集めるのにとても便利なサイト:Gapminderを参考にしています。

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円の大きさは、1人当たりのCO2排出量を表しています。

この図を見ると、アメリカやヨーロッパ諸国など、いわゆる先進国のCO2排出量は多いことが分かります。石油産出国であるアラブ諸国も非常にCO2排出量は多いと言えます。

日本はというと、確かに1人あたりのCO2排出量は少なくないのですが、他の国と比べて何倍も多いかと言われると微妙なところです。

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1951年、アフリカ諸国のCO2排出量はもっともっと少ない量でした。今後、アフリカ諸国の経済発展に伴い、CO2排出量が増えていくのはほぼ間違いないのです。

そうなってくると、CO2排出量のコントロールはまさに世界規模の問題です。おそらくその大きな流れを止めることは困難でしょう。

特定の地域だけが悪いという話ではないのです。

アメリカやイギリスのようにCO2排出量を減少傾向に変えていける国も存在しています。ポジティブ要因もちゃんとあるのです。私たちは、協力しなければなりません。

世界を引っ張るリーダーには、地球規模の問題を解決する資質が求められています。私たちにも、世界と協調して地球を良い方向へ進めていくことが求められています。


地球温暖化や気候変動に樹木や動物は適応していく🧬

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2013年にGlobal Change Biologyに掲載された研究では、少なくとも植物は気候変動や環境に、遺伝子的な変化を使って対応していることが示されています。

彼らは、90%の樹種が環境変化に沿った遺伝的変化を引き起こし、環境に適応していることを示しました。樹は、同種・異種間での相互作用を示しながら、より環境に適した種へと変化していくと考えられています。


さらに、2003年にnature誌に掲載された研究では、動物も環境変化に伴って変化することが示されています。研究チームは過去に行われた143件の研究結果を統合し、気候変化と種の変化を調査していきました。

その結果、鳥類、両生類、脊椎動物など多くの動物種が気候変動に伴ってその行動や遺伝パターンを変化させていました。

これらの結果が示すように、人間も樹種や動物のように環境に柔軟に対応しながら未来を創っていくことができるかもしれません。


樹が使う手段は遺伝子の柔軟な変化です。

人類は、何を使っていくのでしょうか?


今の各国のCO2排出量は理想的なモノではありませんが、維持までは成功している国もあります。日本もその段階に突入しようとしています。さらに進んだ、減少トレンドに足を踏み入れている国だってあるのです。


私たちがグローバルに協調し合うこと。

それが、未来の地球を守る大切な大切なファクターです。

アナタはどう思いますか?


今回紹介した各国のデータはGapminderから作成したものです。GapminderはFACTFULNESSの著者:ハンスロスリング氏が中心となって作成したツールで、世界の客観的な事実を紹介してくれる有用なものです。

質問 世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%

本書は、簡単そうに思える質問で、世界を正確にわかりやすく説明してくれています。大半のヒトの正解率は3分の1以下で、チンパンジーよりも正答率が低い。学歴や社会的な地位がある人ほど正解率が低いのです。

私たちの常識がゆがめられていることを知り、事実を理解することは、とても楽しいことです。痛快な一冊という言葉がまさにふさわしい。まだ読んだことのない方はぜひチャレンジしてみてくださいね!


おしまい

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引用

Trenberth, Kevin E., et al. "Global warming and changes in drought." Nature Climate Change 4.1 (2014): 17-22.

Körner, Christian, and David Basler. "Phenology under global warming." Science 327.5972 (2010): 1461-1462.

Alberto, Florian J., et al. "Potential for evolutionary responses to climate change–evidence from tree populations." Global Change Biology 19.6 (2013): 1645-1661.APA

Root, Terry L., et al. "Fingerprints of global warming on wild animals and plants." Nature 421.6918 (2003): 57-60.

Cook, John, et al. "Consensus on consensus: a synthesis of consensus estimates on human-caused global warming." Environmental Research Letters 11.4 (2016): 048002.

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