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マドリードで聞いた「自分の身代わりになって地獄に行った人がいたら、あなたはどうする?」という話

 三月まで、バルセロナのギャラリーでアート作品を滞在制作しているが、二日だけスペインのマドリードに深夜バスで移動してきた。ARCOというアートフェアが開催中で、さまざまな作品を見ながら勉強するためだ。

 帰りにソルというマドリードの中心地にある駅に寄る。マドリードはあいにくの雨。それでも短い旅のうちに、少しでも多くの体験をしたいと思い、おさまってきた雨の中、夜の町を歩く。マイケルジャクソンを流しながら踊っている人がいて、演奏している五、六人くらいの男女がいて、彼らを見かけた自分は幸せだな、と思う。

 たまたま通りかかった市場で、軽い食事を済ませて駅に戻ると、駅前でプラスチックの箱の上に立った若い男の子が、何か演説しているのを見かける。スペイン語で内容は分からない。政治活動かなんかかな、と思って周りを囲んで話を聞いている人の一人に声をかける。彼はちょっとびっくりしたように肩を少し上げて私を見る。「彼は何を言ってるの?英語で説明してくれない?」って聞くと、近くの女性を指さす。「彼女なら英語で説明してくれるよ」男性がその女性に何かを説明してくれて、女性が「オーケー」といって話し始める。どうやら、キリスト教の話のようだった。女性は近くにいた友人の女性を呼ぶ。二人とも英語が堪能だった。
「天国に行くには十個のルールを守らないといけないの、一つは嘘をつかないこと。今まで嘘をついたことってある?」
「うん、ある」
「そう、じゃああなたは、死んだあとに地獄に行かないといけないわ。他のルールはね、物を盗まないこと。今まで人の物を盗んだことは?」
「両親のお金とかでもダメなんだよね?それならある」
「両親のもダメよ、だって、両親のものは両親のものでしょ?あなたのものじゃないんだから。もう一つは悪い言葉を使わないこと。いろいろあるでしょう?人を馬鹿にしたりだとか」
「うん、ある。あら、私もう、三つ破っちゃってるわ」
「そう、もう三つよね。他に、両親に従うこと。今まで、両親の言いつけに従わなかったことってある?」
「うん、将来について議論することもあったかな。でもおとなしく従ってないと思う。でも、それが天国に行くためのルールなら、誰も守れてない気がする。だって、生まれてから一度でも破ったらダメなんでしょう?」
「そう、その通りよ!全員が天国には行けないの。全員が地獄行きで、地獄は本当に、全く救いがなくて、永久に苦しむ場所なのよ。でもね、そこで一人の救世主が現れたの。全人類すべての罪を一人で背負って、その代わり、みんなの地獄行きを救ってほしいって言った人がいたのね」
「それがジーザス?」
「そう、その通り!彼が私たちみんなの代わりに地獄に行ってくれたの。だから、私たちは助かったのね。ねえ、全員のために、一人で罪を背負ったのよ、どう思う?」
「すごいね、ねえ、こういうことはできないの?全人類が全員地獄に行くっていうなら、全員で地獄に行って、地獄を良くすることってできないのかな。全人類が全員行くんだよ。どんなに地獄が大変な場所だったとしても、素晴らしい世界に変えられないかな?」
「うーんと、地獄には行かなくていいのよ。行かなくていい方法があるの。それに、地獄にはもう、ジーザスが行ってくれたのよ、私たちの代わりに。その事実を知ってどう思う?」
「私が死んだら、地獄に行くことにする。だって、ジーザスが地獄にいるんでしょう?そしたら、彼と一緒に地獄にいて、地獄を楽しい世界に変えることにする」
「ジーザスはもう地獄にはいないの。もう苦しんで、今はね、天国にいるの。父なる神の隣に。私たちが天国に行く方法はね、Forgive himとOpen new heartなのよ。そうすれば天国に行けるの」

 二人の女性は「あなたのために祈らせて」と言うと、私を囲んで祈りの言葉を捧げた。よく分からなかったけど、「彼女が救われて、この世界で新しいLIFEを開けますように」そんな感じだろうか。

 それから、女性は死後の裁判のことがマンガで描かれた日本語の冊子をくれた。私は、彼女たちと話せたことがすごくHappyだったと伝える。そして「私はアーティストなの。だから、この世界を美しくするものをつくり続けるわ」そう伝える。

 私にとってはつくることが祈りだ。そして発表することが伝道だ。
 世界中のすべての国と地域で、美しいものをつくり、そして伝えていきたい。
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これまでのお話はこちらから読めます。
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