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極端な性格の偏り”困ったさん”

性格の著しい偏りのために、自分も苦しみ、周囲の人をも苦しめてしまうことがあります。
ややその傾向があったとしても、支障なく生活ができていれば、個性の範疇として捉えられますが、仕事や家庭生活に支障が生じるようになると、その程度の強さから「パーソナリティ障害」と診断されることがあります。
最近、増えているといわれている「パーソナリティ障害」について、「困ったさん」という言葉に変えて、解説していきたいと思います。

かつては偏見の目でみられ厄介がられていた

パーソナリティー障害は、かつては治療不可能な状態だと捉えられてきました。
(多くの医療機関で排除されて来た時代があります)
ところが、今では改善が可能だと考えられるようになってきました。
まだまだ専門医は少ないといわれていますが、私が医療機関にいた頃の20年前に比べれば、対応可能な医療機関の数も雲泥の差です。

ただ、整備されてきたとはいうものの、診断される数が年々増加傾向にあるのも事実。
その傾向は日本だけではありません。
アメリカで7〜10人に1人といわれており、日本でも虐待やDV、ストーカーやパワハラなど、現代社会にあふれる問題の背景に、パーソナリティー障害が潜んでいるといわれています。

また、そのことが影響しているのかわかりませんが、私のブログもスタートして7ヶ月目でやっと22,000PVを超えたところではありますが、内訳で多いのが圧倒的に「マニュピレーター(心を操る人)」で、その数は群を抜いています。
次いで「強い猜疑心と恨みを持つ妄想性パーソナリティー」「人のせいにする人」「キレる大人」と続きます。

ご家族なのか、職場の人間関係なのかわかりませんが、きっと身近な人との関係に苦しんでいるのだろうと想像するのです。
ちなみにどれくらい多いかというと、GoogleでもYahooでも「マニュピレーター 性格」で検索すると、トップに出てきます。

これは、とても見過ごすことは出来ません。
困っている人がいかに多いかということですから。
それならば、もっと具体的な支援が出来ないだろうかと考えました。

パーソナリティ障害を理解することで、少しでも問題のカラクリが解ければ、救われる人が増えるのではないか。
不可解な言動の背景がわかれば、改善への希望が見えてくるかもしれない。
また、当人もいい知れぬ生きづらさを抱え苦しんでいるということがわかれば、何か解決への糸口が見出せるかもしれない。

・・・そんなことを思い巡らすようになりました。

そこで、考えたのです。
このような傾向のある人を「困ったさん」と名付け、身近な出来事を取り上げてみたらどうだろう。

何も特別な話ではなく、むしろ医療につながって診断されることの方がはまれなんだという事がわかったり(本人が病識を持って受診することもなければ、診断には周囲へのヒヤリングも重要だからです)、困ったさんの存在を身近に感じることで、お互いに傷つくことなく予防的な関わりができるかもしれない。

そして、何よりも願うことは、将来の「困ったさん」を育てないことです。
それが出来たら、本当の意味で子どもたちを守ってあげられるのではないかと思ったのです。

つまり「困ったさん」は、幼少期の育つ環境と深い関係があり、年齢を重ねた後に、幼い頃の心の古傷がうずくことで、心の均衡を崩してしまうというのがよくあるパターンだからです。

では、「困ったさん」のパターンにはどんな種類があるのでしょうか?
パーソナリティ障害としての診断では、代表的なタイプだけでも10タイプあります。
ぜひ参考にしていただければと思いますので、記事の最後に添付しておきますね。

10タイプは、それぞれ全く違う偏りを示しますが、実は共通する症状があります。
それは、ひと言でいうと「幼さ」。
どのタイプも、とても「幼い心の状態」を示すというのが特徴なのです。
どれくらいの幼さかというと、ちょうど乳幼児から児童期前半の頃に特徴付けられる状態でとどまっているか、退行しているとよく表現されます。

退行とは、精神分析家フロイトによれば防衛機制のひとつであり、許容できない衝動をより適切な方法で処理するのではなく、自我を一時的または長期的に、発達段階の初期に戻してしまう事。ーwikipedia

特徴をもっと細かく専門的に解説すると、以下の通りです。
(岡田尊司著「パーソナリティ障害」講談社より)

全て正しいか全て間違いか

思考が両極端で、白か黒かの二分法で考える傾向が強いです。
「すごく信頼できる人だ」と思って惚れ込んで採用したけれど、ちょっとでも意に反することがあると、「最悪だ、ちっとも仕事ができない」と評価が逆転してしまうようなことがよく起こります。

これは「部分対象関係」といって、乳児期によく見られる特徴と同じで、母親を全体として捉えられず、部分的にしか捉えられないことに象徴されます。

例えば、おっぱいのたっぷり出るママ(いいおっぱいママ」と、満たされない不十分なおっぱいを持ったママ(悪いおっぱいママ)を、まるで別々の存在のように捉えて振る舞うのです。
困ったさんの振る舞いの中に、まだこの名残があると捉えると、不可解な言動が読みとれるかもしれません。

実は誰も信じていない

そもそも過敏な性質があった上に、更に否定的な体験を積み重ねた結果、とても傷つきやすくなっていて、本当は味方である人に対しても、些細なことで「攻撃された」と感じたり、思う通りにいかないのは相手に非があるからだと考え、「敵」とみなすようになるのです。

その際には、相手に激しい攻撃をぶつけ、一人の同一人物に対して手のひらをひっくり返したような態度をとるようになります。
その結果、安定した信頼関係を継続的に築いていくことが難しくなるのです。

自信満々と劣等感が同居

心の奥底には劣等感や自己否定感が渦巻いているにもかかわらず、それを隠そうとしたり、補おうとして、強気で、自信満々に振る舞おうとします。
これは自分を守ろうとする現れで、自分の非を認めず、相手を攻撃して、責任転嫁したり、他人に「優越」することや、「支配」すること、「見下す」と言った言動が多いことに現れます。

失敗やトラブルに対して、自分の非を認めると、無力感と自己否定感で押しつぶされそうになるため、反転させて、相手を非難したり責め立てることで心のバランスを保つのです。

自分へのこだわりが強い

これには、自己愛というものが大きく関わっています。
自己愛とは、本来自分を大切にするという、なくてはならない能力で、生まれてすぐから発達させていかなければなりません。
その成長過程に、大きな分岐点が2つやってくるのですが、その過程でとどまってしまうというのが特徴になります。
詳しく解説しますね。

まず最初は”万能感に浸る”段階です。
周囲の注目を集めることで、自分は歓迎されて生まれてきたという漠然とした万能感に浸る段階です。

やがて”親を神様のように理想化させて自分を一体化させる”段階へと進みます。
子どもからすれば、なんでも出来る、なんでも知っている親の存在を、まるで神様のように感じ、そんな親からほめられ、認められることで一体感を感じ、自分の理想像を育むのです。

この二つの段階を経ることで、現実的な知恵を持った、自尊感情を程よく持つ、成熟した自己愛へと実を結ぶといわれています。

ところが、幼い時に自己愛の発達が損なわれてしまい、誇大自己の段階で止まってしまうと、過剰な自信を持ったまま不遜になったり、反対に、親から否定され、自己愛が萎縮したまま成長すると、自分を粗末に扱うようになったりと、様々なの問題を抱えることになります。

思い込みが激しくなる

本当は自分が相手を嫌っているのに、相手が自分を嫌っているように感じたり、相手を自分の一部だとみなしてしまい、つい「思う通りにすることが当たり前なのに、なぜそうしないのか!」と腹を立てたり、勝手な思い込みによる独り相撲で、親しい関係やストレスの強い状況下で混乱をきたしてしまうのです。

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いかがだったでしょうか?
困ったさんとの関係に悩む方にとって、相手が理解できないということほど、絶望感に襲われることはないのではと思います。
理解不能だった行動の背景が、なんとなくわかってくると、適切な関わり方も見えてくるかもしれません。

周りには、困ったさんに苦しんでいる人が本当に多く、人ごとではないと感じています。
私自身、仕事柄もありますが、困ったさんに困った!という体験をたくさん積んでいるので、その大変さはよくわかります。

この辺りは、また別途詳細をお伝えしていきますが、そもそも私の父が大変厳格で「困ったさん」の側面を持ち、その関係性に苦労する母と似たような関係の築き方を、知らず知らずに身につけてきたことを思い知らされるのです。
困ったさんは、ウチと外では全く違う姿を見せるのも特徴で、表面には出さない隠された素顔を持つので、解決を遅らせる要因にもなります。

この経験は武器になる!

なので、困ったさんを親にもつ子どもの苦労も、想像以上に大変だということも知っています。

ですので、何よりも未来ある子どもたちが、将来の「困ったさん」となって苦しむことのないように、出来ることを、出来る限りやり続けよう!

それが私たちの重要な役割かもしれないねと、スタッフ皆で話し合っています。
子ども時代にしてはいけないこと、ぜひしておいて欲しいことも、わかってきました。
今後も「困ったさん」について、なるべく発信をしていくようにしますね。
(以下、10タイプについて添付しておきますので参考にしてみてください)

鶯千恭子(おうち きょうこ)


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