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ますひろ先生にきいてみた「私が外科医になった理由」

「おうちチャンネル」は同じ関心をもつ仲間と、ふだん出会えない専門家から楽しく学べる対話型オンラインサービスです。小学生までの親子に向け、少人数で楽しく学べる対話型のプログラムを提供しています。
その要となるのが、プログラムごとに異なるナビゲーターの存在。子どもたちとおしゃべりしながら、テーマについての学びをナビゲートしてくれます。ナビゲーターってどんな人なんだろうって、気になりますよね?というわけで、この連載ではナビゲーターのみなさんをご紹介していきたいと思います。

Vol.3 ますひろ先生(増田 紘子)

予定しているプログラム:おうちチャンネル5月号「お医者さんってどんな仕事?ますひろ先生に聞いてみよう」
https://coubic.com/ouchichannel/571565

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ますひろ先生(増田 紘子)
昭和大学病院 乳腺外科
2003年 高知大学医学部卒業。2012年 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科にて博士課程修了し卒業。2010年 公益財団法人日本対がん協会とThe University of Texas, MD Anderson Cancer Centerが主催するMy Oncology Dream Awardを受賞。2011年- 2013年 MD Anderson Cancer Centerにて postdoctoral fellowとして治療。抵抗性乳癌の研究を行い、2013年ASCO(米国臨床腫瘍学会)より、Bradley Stuart Beller Special Merit Awardを 受賞。2013年-2015年 国立病院機構 大阪医療センター勤務。2015年7月より昭和大学病院 乳腺外科勤務となる。

どんな仕事をしているの?

私は外科医として、昭和大学病院の乳腺外科で働いています。主な仕事としては3つあって、1つ目は、乳腺外科での診療(外来と手術)です。乳腺外科は、乳房に関する疾患を診る診療科です。私が働いているのは大学病院なので、乳がんの患者さんを診ることが多いです。
2つ目は、新薬の開発のための研究です。医師として働くなかで、今ある薬では治らない症例にも出会うことがあり、新しい薬をつくりたいと思うようになりました。
3つ目は、大学の先生としての仕事です。医学部の大学院生、大学生に教えています。内容としては、乳がんについての専門的な講義や、医学生向けの医学英語論文についての講義です。医学は、英語論文が最先端なんですね。なので、英語の論文を読んだり書いたりするための方法を教えています。それから、PBL、(Problem-based Learningの略で、日本語では「問題(課題)解決型学習」と呼ばれる)の授業も担当しています。例えば、「30代の男性が、頭痛で受診しました」みたいなケースを例に、実際に医師がどのように診察していくか、シミュレーションしながら学ぶんですね。

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どうしてお医者さんになろうと思ったの?

育ったところはいわゆる田舎で、小学校も1学年1クラス30人くらいでした。私は4人兄弟で、祖父、父が医者。家で開業医をしていました。小さい頃、毎年誕生日に、ケーキとプレゼントの前に、1年間の抱負と将来何になりたいかを言う、という習慣があったんですね。それも、真剣に。例えば、弟が、「レンジャーになりたい」って言ったら、お父さんに「どうやってなるんだ?」って聞かれて、答えないといけないみたいな(笑)。それで最後には、必ず、お父さんが、自分はどうして医者になったか、みたいな話をしていたんですね。父が「お医者さんは嘘をつかなくていい」とか、「自分の頑張りが、誰かのためになる」「直接、喜んでもらっているっていうことが、毎日実感としてわかる、ありがたい仕事だよ」って言っていたのを覚えています。そういう環境ではありました。
だけどすごく小さい頃からお医者さんになりたかったかというと、そうでもなくて。幼稚園の頃は花屋さんとか、学校の先生とかって言っていた記憶があります。父も、医者になりなさい、と言うことはなかった。でも10歳の頃の、ある出来事がきっかけで、お医者さんになりたいと思うようになりました。

交通事故にあった人が、来た

家で夕飯を食べていたら、玄関がピンポンピンポンてなって。どうしたのかなと思ってドアを開けたら、お兄さんが2人立っていて。うちの目の前が国道だったんですが、そこでバイク事故を起こした人が、目の前に病院があるということで、駆け込んできた。もう大怪我をしていて、大変な状態だったんですね。お母さんやおねえちゃんは思わず悲鳴をあげちゃうくらい。でも私は、怖くなかったんですよ。父がすごく冷静に「タオル持ってこい」とか言うのを聞いて、「あ、やらなきゃ」って、できる限りサポートをしました。そこで父が応急手当てをした後、その人たちは大きな病院に行きました。その時に、あ、これはすごい仕事なんだなって思ったんですね。その時くらいから、私も医者になりたいなと思うようになった。小学校の卒業文集には、小児科の先生になりたいって書いていました。

「本気で何かをやってみなさい」と言われて

実は、私は小学校高学年くらいから反抗期で。田舎から出たい、両親から離れたいという気持ちが強くて、中学校は寮のある学校を受験したんです。それで、中高と寄宿舎に入りました。
中学校の時は、本当に遊んでばっかりでした。友達と遊ぶのも楽しかったし、田舎から出たから、すごく楽しいことがいっぱいで(笑)。成績も、途中から落ちていた。その時に、今でも覚えているんですが、英語の先生に「適当なことをやって6割とって、それを格好いいと思うのを、もうやめなさい」って言われたんですね。中2の、高校に向けて、そろそろ理系か文系かを決めるという時期でした。もともと、適当にやってできるわ、みたいなところがあったんですけど、そこを突かれて。「本気で何かをやってみなさい」って言われた。
で、本気で何かをやらなきゃいけないって思った時に、何になら本気になれるだろうって考えて、やっぱり医者だなって思ったんです。そこで初めて、医学部を目指そうと思いました。

なぜ、外科に?

最初は、小児科医になりたいなと思っていました。でも大学の授業で、実際に病院で患者さんに接する中で、手術にすごく感動したんですね。それで、外科医になろうと心に決めました。
今、外科医って、全体の4%しか女性がいないんですよ。そうすると、乳がんの患者さんを受け持つことが多かったんですね。乳がんは男性もなりますが、若い女性の患者さんが多いので。
また、がんという病気をなんとかしたい、研究も続けたいという気持ちも強くなっていたのですが、その点でも乳がんを専門とするのはいいなと思いました。乳がんは症例が多く、長期に渡って患者さんと一緒に快復を目指す病気なので、研究が進んでいたんですね。

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医師になってからの留学

そうして働くなかで、やはり化学療法の治療をやっても治らないという状況もあって。そうなった時にやっぱり、新しいお薬とか、新しい治療法を考えないといけないと思いました。それには、日本じゃダメだ。海外で、どのようにお薬を作っているのか、どのようにやっているのかみないといけないなと思って、留学制度に応募したんです。それで30歳から2年間、ポスドクフェローとして、勉強させていただきました。そこでは、実際に新しい薬を作るための書類を書くところまでやって、いろいろなことを学びましたね。帰国後もずっと医師を続け、今年で18年目になります。

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子育てと、仕事

私は、子供が3人います。今、実際に子供がいる状態で思うのは、1人で頑張ってなんとかしているわけではない、ということです。というか、1人ではどうにもならない。周りがあってこそなんです。そのなかで私がしているのは…図々しくなることと、欲張ることをやめないことかなあと思います。もうね、お母さんも完璧にやって、いい奥さんもやって、お医者さんとしても100点満点で働こうと思ったら、やっぱり無理です。
じゃあ、私がどうやっているかというと、「患者さんに失礼なことをしない」、「できることは積極的にやる」ということは心がけています。そしてできないことは、周りにサポートしてもらっている。例えば、「毎日、ご飯作っているんですか?」と聞かれたら、作っていません。それは無理なので、子供達の夕食は、保育園で作ってもらったり、大人用にはお惣菜を買って帰ったりする。仕事も、私は3人子供を産んでいるので、3回×数か月ずつお休みをいただいています。その間、自分の受け持ちの患者さんは仲間に代わりに診てもらっています。自分1人ではできないからこそ、助けてもらえるような働き方をしたいなと思っています。

女性が医師として働くということ

乳腺の専門医は、外科内科合わせて50%くらいが女性になりつつあります。でも外科は、先ほどもお伝えしましたが4%程度。それはやはり、ハードだからということがあると思います。
手術などがあって、自分が責任を持って対応しないといけない時間がどうしても長い。それから、緊急が多い。手術の後、患者さんが出血したら、夜中だろうがなんだろうが、執刀医が行かないとわからないことはやっぱりあるので。そういう意味で、女性が働き続けるという点では、外科は難しいところがあるとは思います。
それでも、私がお医者さんになった時よりは、女性は増えてきました。他の職種の人に比べたら、まだまだだとは思うんですが、少しずつ改善されてきた部分もあります。私が働き出した時は、48時間勤務、72時間勤務とかが普通で、さらに、上の先生が帰らないと帰っちゃいけないような雰囲気もあって。医局のソファで寝て起きてみたいな生活でした。でも、今は、研修医制度なんかでは、研修医をちゃんと帰らせているっていうのが、病院の評価に繋がるようになった。そういう評価体制もきっちりしたし、働く人の仕事に対する価値観も変わってきたんですね。

プログラムの内容を紹介!

今回は「お医者さんってどんな仕事?ますひろ先生に聞いてみよう」ということで、普段の仕事の様子を、写真などをお見せしながら、お話したいと思います。まずは「「外科」って何するところ?」「外科医にとって大切な道具は?」といったことをクイズ形式で、紹介します。それから「どうしてお医者さんになろうと思ったか」「どうやってなったのか」といったこと、また、女性が医師として働く上での大変さ、やりがいなども率直にお話したいと思っています。

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参加してくれる親子に一言

こんなお医者さんもいるよということで、医師という仕事のイメージを持ってもらえたらいいなと思っています。さらに、参加してくれる子供の中からも、いつか仲間になってくれるような子がいたらとても嬉しいです。お医者さんは、大変な仕事だけど、すごく面白い仕事でもあるんですね。病気の時って、みんな大変。その時に、直接診て、少しでもよくなるお手伝いができる。よくなっていくのがみれる。患者さんに、先生と話したいと言ってもらえたり、直接返してもらえる。そういうところに、私はやりがいを感じています。
あとは、仲間がいる。特に、外科は仲間がいないとできない。困ったことは、仲間に相談して解決していくことができるのも、いいところだなと思っています。
それから、知らないこと、わからないことを勉強することって、単純に面白いと思います。だから研究も面白い。病気については、まだまだわからないことがたくさんあります。がんをやっつける方法も、まだまだもっと良い方法があるかもしれない。一緒に研究してがんをやっつけよう!とか思ってくれる子がいたら嬉しいです。

(インタビュー:井尻貴子)


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