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1月24日から2月6日まで、二週間に聴いたタイトルを振り返る。

#029 時代の変わり目を見つめる一枚なのです。ヴィオールの時代が終わろうとする頃のヴィオールの音楽... だから、ただヴィオールを聴くのではない、その時代が終わることを意識し、意識することで漂い出す、何とも言えない感傷に、じんわり... 古い楽器、ヴィオールの寂しげな表情と、新しい時代、物憂げなロココが、刹那、響き合い、稀有な時間を生み出す。

#030 ヴィオールの終わりを彩ったケ・デルヴロワの後で聴く、その師、マレによる、ヴィオール曲集、第4巻。それは、太陽王の宮廷に鳴り響いたヴィオールの音楽の集大成で、ヴィオールが真っ直ぐに響き、輝かしい... その輝かしさに、感慨... ヴィオールの黄金期... そんな時代を卒なく響かせるカイエの演奏、じわーっときます。

#031 チェロに似ているけれど、やっぱり違う、ガンバ。で、ガンバとは... を改めて見つめるジーニによる独奏... その真っ直ぐな響きが生む、独特な佇まいと、バロックがまだ煮詰まらない頃、17世紀の真摯な音楽が、ただならぬ空気を生み出して、何だか吸い込まれそうに...

#032 再び、マレを聴くのだけれど、今度は、若きマレによる、ヴィオール曲集、第1巻。ヴィオールという楽器には、渋いイメージがあるものの、若きヴィルトゥオーゾの音楽は、その若さが作用して、圧がなかなか... いや、こういう圧を響かせる、酒井、マルティノー、ルセ、現代のヴィルトゥオーゾたちの演奏に感服。

#033 フルートがあって、ヴァイオリンがあって、チェンバロがあって、そして、ガンバ... テレマンによる幻想曲、改めて、その4つを並べれば、それぞれの楽器の特性を見事に見抜く、テレマンという作曲家の技量、思い知らされる。で、ここでは、ガンバなのだけれど、フルートとも、ヴァイオリンとも、チェンバロとも違うスタンスで、しっかりと音楽を紡いでくる!で、クイッカの鋭利な演奏も、聴き所...

#034 ヴィオラからテレマンを俯瞰するというおもしろさ!いや、ヴァイオリンの影に隠れがちなヴィオラなのだけれど、なればこそ、見えてくるもの、あるのかなと... タメスティの試みに膝を打つ!でもって、惹き込まれます、テレマン・ワールド!

#035 テレマン、フランクフルト時代の教会カンタータに注目するというシリーズ、始まりました!で、おもしろいです。神聖ローマ皇帝の戴冠式が行われる街であり、帝国議会が開かれる街、フランクフルトの都会感、聴こえてくる!そう、テレマンの音楽は、バロック期のシティ・ポップ!

#036 ガリカニスム(フランス・カトリックの独自路線... で、イタリアみたいにド派手に音楽を使うのを控える... )が邪魔をして、フランスの教会音楽は、実は存在感薄めなのかも... を象徴するような、アルドゥアンのア・カペラ・ミサ。なのだけれど、ガリカニスムが求める簡素さ=ア・カペラを以って、フランスのエスプリ=精神がより明確になるようで、おもしろいのです!でもって、魅了されるのです!

#037 19世紀後半から20世紀に掛けての少女たちの合唱による宗教的な作品... って、なかなかにマニアックなのですが、少女たちのピュアな歌声が、かえってフランスらしさを引き立てる!でもって、アンシャン・レジームに活躍したアルドゥアンのア・カペラ・ミサを聴いた後だと、よりフランスらしさというものが明確になって、興味深いのです。

#038 いともたおやかな楽器、ハープ... というイメージに押し留めない、20世紀の作曲家たちによるハープ作品!いや、ハープという楽器の表現の幅というのか、この楽器が、元来、持つ、可能性を、見事、示してくれる、トゥレの演奏!美しいのはもちろんのこと、オルフェウスの昔から存在する楽器の底知れなさ、さらりと響かせて、魅了されます。

#039 四国を旅して生まれた小説から生まれた音楽です。って、日本が舞台なの?!と、驚き、興味津々で聴きました。で、美しかった... いや、安易なエキゾティシズムに流されない、ありのままの情景を音楽として表現し、生まれた、美しさに、感動を覚えてしまう。そう、瀬戸内の美しい夕焼けって、説明、いらないよな... でありながら、作曲家のフランスのDNA、フランス音楽の伝統も活きているというおもしろさ!

#040 21世紀の四国を旅した後で、17世紀の中国を旅する... 北京で活動したイエズス会士、パントーハと、その後の北京を彩ったイエズス会士たちによる音楽の、何と興味深いこと!いや、恐ろしくマニアックではありますが、かつて、文明の垣根を乗り越え、東西の対話から音楽が生まれていたこと、感慨を覚えるわけです。

#041 17世紀の中国から、21世紀、飛行機に乗って世界ツアーへ!って、自分たちの世界ツアーを音楽にしてしまうという大胆さ... でもって、これが、クール!なのだけれど、最後、旅の終わり、帰郷で見せるセンチメンタルにヤラれた... イェーテボリ・コンボ、ギターがただ上手いだけじゃない、音楽を構築してくるセンス、侮れない...

#042 モリコーネを改めて堪能する、ヴァイオリンと管弦楽のための映画組曲。それ、映画音楽をヴァイオリン協奏曲に仕立て直したコルンゴルトを思い起こさせる仕上がり... でもって、ヴァイオリン協奏曲化されるにあたり、モリコーネの魅力、どこか蒸留されるような感覚があって、より美しく、輝かしくなるような... 映画の余韻を残しつつ、映画音楽の制約から解き放たれ、モリコーネ・ワールド、より純度を増して響き出す!

立春を迎えました。が、春の気配はまだまだ感じられませんね... という中、じっくりヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)を堪能した前半。テレマンの多彩さ、いや多才さも堪能してからの、フランスの教会音楽に見出すフランスらしさに、何か春めくものを見出し... 四国、中国、世界を旅し、最後はモリコーネというね、不思議な2週間でした。そんな1月24日から2月6日まで2週間に聴いた14タイトル、最も印象に残ったのが、酒井淳が弾く、マレのヴィオール曲集、第1巻。若きマレの勢いを感じさせる、密度の濃い演奏、魅了されました。

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