*甘い誘い

「コンヤアイテル？」と
職場のPHSにショートメールが入った
Nからだった

ちらっと確認したことを
Nは見ていた

わたしが返信をしないでそのままPHSを閉じると
「コンヤメシデモドウ？」と
再度ショートメールがきた

「メシですか？」と返信したら
「食事でもどうですか？」と少し丁寧な言葉が届いた。
「お食事ですね。承知いたしました」

レスポンスの後、そっと彼のほうを見ると
小さなガッツポーズをしていた
「かわいい人」

まあ、流れに乗ってみよう
わたしには今特別な人がいるわけでもないし
Nは見た目も素敵だし、会話も楽しいし
時間を一緒に過ごすのも悪くない
口説かれたらどうするのか
それもまたおもしろそう

甘い誘いはのってみよう
のってみないと本当の甘さはわからないから

カジュアルフレンチな店の中は
明るい雰囲気だった

「麻美は何がいい？」

まるでいつもそう話しているようにNはわたしを名前で呼んで
会話が始まる
コース料理を無難にオーダーし
最近見た映画の話しや、大学時代の部活のはなしをする

仕事の話がまったくでずに2時間半がアッという間に過ぎた