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視覚に囁く『小ご絵』

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いつも大きくて立派な扉ばかり見せられてきたように思う。 深く考えることなく、大きくて立派な扉ばかり追いかけてきたように思う。 だけどいつもうまく開けられるわけじゃない。 ある… もっと読む
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2021年6月の記事一覧

繋がりし者。

 家庭教師は銀河鉄道の客車の中で、教え子と共に海に沈んでいった。  読んだことさえ忘れて…

チューニング。

 みんながいいと認めるものはたしかにいい。好き嫌いはあるにせよiPhoneはよくできているし、…

引かれた弓は過去。現代に放たれ、矢は未来に刺さる。

 知らなかった。水上を浮き行くサーフボードが存在していたことを。    あのマーティ・マク…

期待値と起こりうる現実。

 世の中、なかなか思ったとおりにコトは進まない。バターを塗った面をカーペットに落とす確率…

嫌いがあるから好きになる。

 線を引いたみたいに降る雨の梅雨を好きになったことなどなかった。歯を喰いしばるみたいにし…

来年会おう。

 観戦リスクは今回がお初じゃないけれど、ずいぶん険しい霊峰のてっぺんで勝負を仕掛けてきた…

止められた時間の復元力。

 TOKYO2020。間近に迫ったオリンピックの愛称が耳に入るたび、そこだけ恣意的に時間が止められたように思うのは気のせいだろうか。時はマイペースで先へ先へと歩を進めているけれど、意志が歯止めをかけている。結果、時間はゆがみ、意識は失われた昨夏に戻っていく。だけどそこに漂うのは、取り戻せないもどかしさ。    思えばこの百年は駆け足の歴史だった。地から足を離し、よちよち歩きで飛び立った空は宙へと舞台を移し、積み上げてきた歴史の書をデジタルの小箱に押し込んだ。効率化は同じ労働時

逆算の幸せ。

 ときどき、しょうもないことを思いつく。あまりにくだらないから口にはできず、人様に話すこ…

欠いたモノを売る店。

 その小さな商店街には、空からひと抱えもある雫が降り立ったように毛色の違った露店がたつこ…

再燃。

 友は、運び込まれた救急外来の入口で心臓を止めた。胸にのしかかる鉛のような錨に海底に沈む…

行くかぁ、ハワイ。

 憧れのハワイ空路を辿らなくなって久しい。  あのせいではない。海外旅行というものから縁…

『熱源』に揺さぶられた熱源。

 読み始めてしばらくしてから読み終えるまで雲海のような靄がずっと鈍く立ちこめていたのは、…

時間に生まれる。

「わたしはどこから生まれてきたの?」    訊かれて困る質問がある。大人になると、なまじ知…

タイム・ピース。

 2人でいる時間だけを切り取って、その甘美に震える感覚に浸っていたいよね。少なくとも君と一緒にいる時は、そういうタイム・ピースに押し込められていたいんだ。  だってほら、人には区切られた時間ごとにカプセルの中にいるみたいなものでしょ? 仕事する時間は仕事時間カプセルにいるし、眠る時間は睡眠時間カプセルの中にいる。それらのタイム・ピースが組み合わさって1日ができている。君にも見えるでしょう? 僕たちはいつだって24時間分のnに息をしている。  今は見えていなくても、何とはなし