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視覚に囁く『小ご絵』

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いつも大きくて立派な扉ばかり見せられてきたように思う。 深く考えることなく、大きくて立派な扉ばかり追いかけてきたように思う。 だけどいつもうまく開けられるわけじゃない。 ある… もっと読む
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2021年5月の記事一覧

まだ少しかかるかな。

 今度はLGBT保護法案の声が上がってる。  法律で道筋をつくるーー世の中生きやすくするため…

ジブン・ピアノ。

 コンサートか音楽教室特権だったピアノが街に降り立って久しい。  今どきは、街を歩けばピ…

恋、色、艶。

 ジョルジュ・サンドはショパンを魅了し、フランチェスカ(『マディソン郡の橋』)は確信犯的…

『ジムノペディ』--あまりに短き恋のメロディ。

 硬質で無垢の白色カーテンが、コマを落とし、追いかけながら三拍子で揺れている。 『ジムノ…

『誘引』––夢に戻る。

 あの時たしかに「旅は男と行くに限る」と彼女は言った。  昨日のことのようでもあり、数年…

奇跡の閃光。

 生きていること自体が奇跡だ。  人生100年としたって、地球歴46億年に比べれば瞬きよりも…

ご近所さんの幸せ事情。

 少し前の盛夏。  肩の荷降ろした夏の夜風が頬に心地よく、鼻歌気分で家路を急いだ飲みの帰路。  深酒したわけではないけれど、住宅街はすでに寝息をたててる深い夜。星にまぶたがあるならば、寝ぼけ眼の目をこすりスリスリ、今にも眠りに溶けそうな不覚の夜。  涼の具合がいいとはいっても、そこは夏のただ中。住宅街は大きく窓の口開けて、高いびきをかいている。  いびき?  いやあれは。  物音すれば開いた口から声が出る。  そう、確かにあれは人の声。しっかりくっきり、言葉にならない女の声。

『ジーザス・クライスト=スーパースター』

 復活という神聖を開示し本物の神となったイエス・キリストが、2021年7月、東京でまた復活す…

『ダンス・ダンス・ダンス』

 村上春樹作品の書き下ろしは、『騎士団長殺し』を除いて、すべて発刊直後に購入し読んできた…

『騎士団長殺し』でなかったら。

『騎士団長殺し』というタイトルでなかったら、もっと早くに読んでいたに違いなかった。コミッ…

「捜してくれたの?」

 明鏡止水に微塵の木の葉を落とすような静かな始まりだった。  noteで立ち寄った、とある方…

無常の功績。

 観る、聴く、読むが積み重なって、文化の層が厚みを増した。土台は土台。いま芥川龍之介を読…

風の歌を聴け。

 都会にいても、足場をもたないはぐれた風が気まぐれに連れてくる山の緑を感じることがある。…

文字の歌を聴け。

 風に歌があるように(『風の歌を聴け』)、それらの文章も、足早に行き交う通りすがりの噂話に耳を傾ける者たちに、歌を語りかけている。  劉慈欣もまた、描いた歴史の極小の塵のような一点に、旋律を込めていた。気まぐれに、偶然に、を装いながらも、飄々をまとった表情の内側ではあざとく故意に、耳を傾ける者にだけ聞こえるように、その歌は歌われている。 「夜は、満月が、昇った。」 『円』で描かれた一文の、みごとなまでの三連符の三連打。  否応なしに読み急かされるリズミカルな後押しは、仕組