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あの空を忘れない

天にも届きそうなほど、青空が近くにある。

ここは、山々に囲まれた鍋底のような場所。
見上げた空は、丸い青の天井のよう。

草原を吹き抜ける風に、
若草色の波が、白くなびいている。

白い雲が足早に流れては、
私の上に影を落としながら通り過ぎていく。

ところどころにある巨大な水たまりに、
青空と雲と風が流れて、世界そのものを映し出す。

牛たちが美味しそうに草を喰み、
大きな落とし物もあちこちに落ちている。

落とし物を踏まないようによけながら、
水を含んだ泥にズブリと足をとられながら、
真ん中にぽつりとある丘へ
登っていく雲たちを追いかけてひたすら走る。

どこまで行っても続きそうなこの緑は、
夢の中を永遠に走っているような感覚になる。

ふと後ろを振り返ると、
私の背中を見守るあなたの姿があった。

遠い記憶。

私にとって、天に一番近い場所。
あの場所に行けばもう一度、
あなたに会えそうな気がする。

そこは、太古の昔からある地上の楽園。