見出し画像

おいしいの3要素。

“おいしい”ってなんだろう。

どうやったらマレーシアごはんのおいしさが伝わるんだろう。それもわたしが感じるおいしさを。

なんて、周りからすると「フーン」としか反応できないようなことを日々もんもんと考えているのは、ライターという仕事をしているものの宿命である。

このもんもんにひとつのヒントをくれた記事がある。
2016年に「ほぼ日」で連載されたカレースター水野仁輔さんと糸井重里さんの対談だ。

ふたりは“おいしい”には3つの要素があると語り合う。「カルチャー」「サイエンス」「ノスタルジック」。この3つのカタカナ語が、わたしたちが何かを食べて、おいしいと感じる理由になっているという。

詳しくは上記リンク(内容、おもしろいです!)の記事をぜひ読んで欲しいのだけど、簡単にまとめるとこんな感じ。

・カルチャーとは、その料理を歴史的に食べ続けている人々が、その国で作り続けてきた伝統的な調理法でうみだされるおいしさ。

・サイエンスとは、今、この場所(たとえば日本で)で、おいしさを追求すること。それは本国と違う材料や調理法で再現することになるかもしれない。

・カルチャーとは、あなたのために4時間がんばって作った、というような思いの部分がくれるおいしさ。最たる例が、母さんの作ってくれたカレー。

「どこに軸を置くかで、“おいしい”の正解は変わってくるんです」と水野さん。


うんうん、なるほど。すごく納得。おいしいを表現するとき、この3つを分けて考えなくてはいけない。そうでないと、おいしいを共有できないのだ。たとえるなら、相手の声が小さくて聞き取れないと思っていたら、いやいや英語じゃん!みたいな。

と、理解できたところで実験してみよう。こちらは、大学時代によく食べたスパゲティ。

画像1

通っていた大学の学食のメニューで、わたしの思い出の味だ。この料理を3つ視点で表現するとこうなる。

1. カルチャー
わたしの出身大学は福岡にある。福岡の名物といえば、明太子。福岡市民のたらこ消費量は全国1位だそうで、大学の学食でも明太子をつかった料理が提供されていた。この料理、いわゆる巷で人気のたらこパスタとは違い、写真をみてわかるように、明太子はほぐさず固まりでドーン。この豪華な明太子の使い方こそ、まさに福岡という土地が生んだ美味なのである。

2.サイエンス
スパゲティと明太子の相性は最高だ。明太子のぷちぷちとした食感はスパゲティとつるっとした舌触りを引き立て、和の万能調味料ともいえる塩昆布でうま味を加えるという技ありの調理法。さらに、隠れキャラのように潜むシーチキンが味のアクセントになっていて、最後にからめる卵の香りが食欲をかきたてる。このおいしいループで、あっという間に完食なのだ。(※注 先ほどの文章はカルチャー寄りだったので書き直しました)

3.ノスタルジック
大学時代の思い出の味というのは、青春そのもの、といってもいい。かれこれ20年以上前、サークルの友人と学食に集い、このスパゲティを週に1回は食べていた。その日の食堂のおばちゃんの気分で、明太子が多かったり、卵が一か所に固まっていたり。この毎回違う味がまた楽しみだった。今でもこのスパゲティを家で作ると、あの甘酸っぱい青春時代を思い出す。

どうでしょう? もはや別の料理っすよね。

客観的に文字だけを読むと、おいしく感じるのは2かなぁ。1、3の文章でおいしく感じるためには、福岡に思い入れがある、同じような学食の体験がある、などの条件付きになるようだ。もちろん文章力にもよると思うけど。

長くなってきたのでまとめよう。

言い換えればきっとこういうことだと思う。

サイエンスとは、万人に理解してもらえる実証可能なおいしさ。
ノスタルジックとは、個人的な感覚を通して体感できるおいしさ。
カルチャーとは、この世には、わたし以外の人も生きていて、ともに世の中の流れを作っていることを知る鍵になるおいしさ、かな(カルチャーの定義、長い……。要検討)。

あなたにとって大事なおいしいの要素は何ですか?
その部分に触れる文章を書きたいです。


:::

画像2

これは「ジロー風スパゲティ」といい、ググったら、2015年まで学食で提供されていたそうだ。ゆでたスパゲティをフライパンで炒め、明太子、塩昆布、ツナを加えてさっと混ぜたら、最後にとき卵をからめて卵に火が通ったら完成です。おいしいのでお試しを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?