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今日のおとどけ | KREVA「あかさたなはまやらわをん」 | 2024.08.15

この夏の暑さにやられてしまって、近頃は食事の用意をするのさえ面倒だ。
今日も、お昼の支度が本当に億劫で、手っ取り早くそうめんを茹でた。
「そうめんを茹でる」という行動はたった8文字なのに、今日の私には心底面倒くさかった。
そもそもである。
小麦を精製し、細く延ばし、風にさらして乾かす。
そうめんができるのにひとまずこれだけ手間がかかっている。
その後、一旦乾かした物体を、私たちは改めてお湯で戻して、その上、冷やしそうめんならば、冷たい氷水でしめる作業までして食べるのだ。
人間がものを食うという、たったそれだけのことで、こんなに面倒がかかっている。

私は何もクソ真面目に「食べ物を粗末にせず、感謝して食べましょう!」ということを言いたいのではない。
要するにこういうことなのだ、まだ聴いてくれ。
もしそうめんを茹でもせず食べたとしたら、私は胃腸が弱いのでお腹を壊すだろう。そういうリスクがあるから、人は火を使って料理をして、食べ物を体内にとりこむ。
つまり「食べる」というそのことに、そうまで面倒をかけなければならないほど、人間は弱い。
こんなどうでもいいくらいシンプルなことを考えながら、今日、私はそうめんを食べた。

お昼には全国戦没者追悼式が行われていた。
今日は戦争が終わった日だ。
私の祖母は畑仕事をしている最中に空襲にあったが、逃げて助かった。
祖母の家の庭には防空壕があった。
家の建て替えをして今はもう跡形ないけれど、元あった場所の前に立つと、戦争のことをどうしても思う。
戦争は嫌だ、とそうめんを食べながら私は思った。
人と人が殺し合うなんて、本当に馬鹿げている。
だけど、戦争がなくなるなんて夢みたいなことだとも思っている。

人間は、弱い。
そうめんを啜りながら、もう一度思った。
夢みたいなことなのはわかるけど、こんなに弱い人間が、戦争なんてしないで済む方法ってなんだろう。
本当に殺しあったり、争わなくていい方法ってなんなのだ。

私は音楽の力をいつでも信じている。
だってボブ・マーリーは、ライブで、立場の違いで対立していた政党の党首をステージに上げ、握手をさせた。
音楽ひとつで平和が実現できるなら、それはもう夢みたいなことなのは分かっている。理想論だ。
でもやっぱり私には、例えば素晴らしい音楽が鳴っている時に、人と争うなんてちょっとできない。
ささいなことにイライラしたり、うまくいかなくて情けないことがあっても、この世界にまだ音楽があるなら、そこに希望を感じてしまう。

そうめんひとつで、ひとりこんなに熱くなった後、KREVAの「あかさたなはまやらわをん」のMVのことを思い出した。
アニメで構成されているMVだと、空から降ってくる爆弾が出てくるこの歌は、戦争のことも平和のことも直接的には言っていない。端的には「コミュニケーション」のことをテーマにしている。だけど私にはずっと、「当たり前は、本当は当たり前じゃない」と言ってるように聞こえている。
2008年の歌だけど、私たちがそれ以後に経験したことを考えると、今の時代にこそ響いてほしい。
鳴らそう、音楽を。

*この歌は、2008年リリースのアルバム「クレバのベスト盤」に収録されています。
*MVは、DVD「チャートバスターズK!」に収録されています。


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