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太田酒俱楽部オンラインマガジン

全国の居酒屋をめぐり、数多の著作を世に問うてきた 居酒屋探訪家・太田和彦のオンラインマガジン。 毎月2回更新される「コラム」「フォト日記」「太田図書館」「お便り交歓室」など多彩な…
好評の「コラム」「フォト日記」に「太田図書館」「お便り交歓室」を加えた、太田さんの魅力たっぷりの品…
¥330 / 月
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#太田酒倶楽部

盃つまんで Vol.05

土曜のある日、銀座に出かけた。銀座がいちばん良いのは新緑が目に染みるころと、歳の押し迫った師走ころ。並木通りに葉が繁り始めた今は、ビアホール「銀座ライオン」のビールがうまくなる時だが。  目的はグラフィックデザイナー・木村裕治さんの個展だ。木村さんは雑誌「エスカイヤ日本版」「ミセス」、朝日新聞別綴「Glove」など、編集デザインの第一人者。ANAの機内誌「翼の王国」は、ずいぶん昔に私が連載をしていた関係で毎号とどき、そのページデザインに舌を巻き、捨てられずに残していた。特徴は

フォト日記 Vol.05

    銀座並木通りも緑が繁ってきた。         陽光まぶしい銀座七丁目。           資生堂パーラーのウインドは、     伝統の唐草をヘアスタイルにした女性。        平成5年、通りに置かれた、茂木弘行の彫刻「はな」は、     女性が椿を手にしている。      銀座「天國」で好物

盃つまんで Vol.04

若い頃からアートディレクターとしてテレビ番組に参加する機会はよくあった。「愛川欽也の探検レストラン」では、ラーメン激戦区荻窪に埋もれた ラーメン店をリニューアルする回に、店「佐久信」のロゴマークやちらしを制作。中央本線・小淵沢駅に新名物駅弁を作る回では、懇意の第一線コピーライター、イラストレーターらと組み、山本益博氏監修の二段弁当を制作。駅弁名「元気甲斐」を、なんと黒澤明監督の大作時代劇「乱」の題字を書いた重鎮書家、今井凌雪氏に依頼。奈良のお宅へうかがいその揮毫臨書も画面にお

盃つまんで Vol.03

釧路の居酒屋「しらかば」の女将から、コロナ禍の影響で経営がたちゆかなくなり、閉店する報せが来た。 釧路の居酒屋は炉端焼が多く、大きな炭火網を囲むカウンターで、自分のが焼けるのを見ながら、店の人と話を交わすのが楽しみだ。「しらかば」女将は、白割烹着の胸ポケットに差した割り箸二膳がトレードマーク。明るく ざっくばらんな雰囲気が愛され、それをきいた若き日の紀宮様や、世界自然保護基金総裁として来日されていた英国エジンバラ公、自然写真家として 撮影に来ていたベイカー駐日アメリカ大使など

盃つまんで Vol.02

昨年(2020)の新酒鑑評会地域別入賞は、新潟(39)、福島・長野 (各33)、兵庫(24)、秋田(21)と続く。 必ずしもこの数字がすべてとは思わないが、かつて入賞が少ないことに危機感をもった福島県酒造組合は、1992年に、それまで門外不出だった杜氏の 技を共有しあう取り組みを始めて質が向上。やがて7年連続入賞トップとなり、不動の信用を得るようになった。私は、今の福島酒の育ての親でもある会津の居酒屋「籠太」主人が、これと思うものをずっと送ってくださり、 福島酒の優秀さは、は

盃つまんで Vol.01

コロナ禍で、居酒屋はほんとうに大変だ。私のテレビ番組も局の要請で、 地方や外ロケはまだできない。今続けている「がんばれ居酒屋」シリーズは、苦境の居酒屋をなんとか応援したいと始めた。 しかし店もがんばっている。ただ休んでいても仕方がないと、店内を徹底的に大掃除する、懸案だった厨房やトイレを工事して最新清潔に替える。 私のなじみの大阪の何軒かは、この際、移転して模様替えと前向きで、 いずれ番組でそこを訪ねるのが楽しみだ。 時短営業を余儀なくされても客の絶えない店はある。それは常