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「脱ハンコ」よりも大事なこと

みなさんどうも、おたろすです。

ご利用されている方も大勢いらっしゃると思いますが、chromeのスマホ版では、ユーザーの過去の検索・閲覧履歴等の情報をもとに、トップページにオススメのページが表示されます。個人的に結構気に入っている情報収集ツールのひとつで、暇な時はよく目を通しています。

先日もそんな感じで眺めていた時に、面白い記事を見かけました。最近流行りの「脱ハンコ」に関する、山梨県知事へのインタビュー記事です。
なぜ脱ハンコで山梨県かというと、山梨県では江戸時代に現地産出の水晶を使った水晶印の生産が行われ、現在でも手彫りはんこの製造で全国約6割のシェアを占めているという背景があるようです。

もう少し理解を深めようと、自分から情報収集したところ、次の記事も見つかりました。余談ですが、私はこんな感じで、chromeやニュースアプリでパッシブに得た情報のうち、興味関心のあるものをアクティブに調べてみるというスタイルが好きです。

「脱ハンコ」とは

コロナ禍において、ソーシャル・ディスタンス確保の観点から、物理的な移動を伴う出社を控える動きがある一方で、一定数以上の組織において、書類等にハンコを押す・押してもらう必要があるため、テレワークが浸透しないという話題があります。

こうした世相のもと、菅義偉新政権において行政改革担当相に任命された河野太郎大臣が、改革の初手として「行政手続きにおける押印廃止の検討」を各省庁に対して指示したことをきっかけに、「脱ハンコ」に向けた議論が加速しました。

記事の内容

さて、山梨県知事がインタビューに回答した内容を要約すると、だいたい次のような感じです。

テレワーク浸透による2地域居住の広がりなど、社会のデジタル化によって山梨県が恩恵を受けることもあるため、デジタル化自体は大いに歓迎する。
しかし、デジタル化に向けた取組みの中で、本来は「押印手続の省略」を議論するはずが、「ハンコ廃止」にすり替わっている。ハンコ自体を撲滅しなくても、不必要な押印を省略していけばいい。
「押印デバイス」(印章を読み取ってデータ変換する専用機器)の活用によって、印章がパスワードを代替することもあり得る。また、ハンコ文化を海外に輸出したり、インバウンド需要の喚起に繋げることもやっていきたい。

正直、最初に読んだときは、突っ込みどころ(例えば、押印の省略がDXであるかのように書いていること。それはただの業務効率化・・・)の多い記事だなと思いましたが、何度か読み返す中で色々感じることがありました。

【おたろす的所見1:手段と目的の逆転現象】

本テーマの根っこの議論としては、慣例的な押印手続の廃止(手段)によって、無駄を削って生産性を向上させること(目的)だと思います。しかし、センセーショルな報道や流行り言葉(DX、デジタライゼーションなど)の濫用から、生産性の向上ではなくハンコ撲滅が目的にすり替わっているように感じます。この点は知事に同意です。

【おたろす的所見2:押印デバイスの必要性】

一方で、ハンコとデジタルの共存策として「押印デバイス」を活用したいという意見には疑問を持ちました。契約や本人確認、届出というのは、広く大多数が共通の方式を採用するからこそ信用があるのだと思いますが、このデバイスが銀行の本人確認等以外で広く使われるようになるかは怪しいと思います。ブロックチェーンや生体認証などの技術が広く活用される状況で、わざわざ電子的な印影を押す必要性が見当たりません。

ただ、書いている最中に思ったのですが、真贋判定用の証明データを持たせた上で、装飾的な技巧を施し、デジタルアート作品に押印する、という使い方はあるかもしれません。まあそれも物理的な印章をベースにする必要はなさそうですが・・・。

【おたろす的所見3:本当の生産性向上とは】

行政手続における押印慣行の見直しからは逸れてしまいますが、最後に、ビジネスシーンにおける押印慣行と生産性向上に言及したいと思います。

日本のビジネスシーンにおいて押印文化が根強く残っている理由としては、担当者、上司、管理職、役員、経営者・・・という階層的な組織構造のもと、権限移譲が進んでいないことが強く影響していると思います。段階的な承認を経たかどうか確認する手段として、ハンコは相性が非常に良いとも言えます。

こうした背景に立ち返ると、本当の意味での生産性向上を目指すならば、人事や組織構造、企業風土、企業理念・ビジョンまで含めて議論することが必要でしょう。そして、こうした議論の中でデジタル化の位置付けを明確化することが、DX実現への入り口ではないでしょうか。色々調べた中で、北國銀行さんは、この点分かりやすくPRしていると思いました。

河野大臣が指示したように、期日を設けて不要な押印手続という1点にフォーカスするやり方は、部門横断のプロジェクトチーム等でよく取られる手法で、短期間で一定の成果をあげるには効果的ですが、場面的な問題解決手法であることは否定できません。組織のあり方を抜本的に変革させ、本当の意味での生産性向上を目指すのであれば、もっと上位概念から細部に落とし込む流れで議論を深化させていく必要があると思います。

まとめ

今回は、「ハンコ廃止」に関するニュースを要約した上で、それに対する私の所見を申し上げました。今後も、インプット&アウトプットの練習として、こういう執筆も不定期継続していきたいです。

それでは!

(画像:いらすとや)

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