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「食べられない」をどうしたら納得できる? 人が生まれ持つ力も信じて

〈どんなことに悩んで解決してきたか〉その4


食欲が無くて治療のため入院すると病院では点滴で水分や栄養を補うことが多くあります。

退院してからも必要な点滴は、本人や家族が方法を覚えて、
私たち看護師は、お手伝いをします。

老衰や病気の進行でむくみやすくなって、家に帰ってからの点滴は必要ないと判断されていても、希望する方がいます。

本人や家族の安心のために行う意味はあるのでしょうが、
食べる量がたとえ少なくても、体が欲しがる量を口から摂る方が、
むくみや息苦しさなどの苦しみは少ないことは事実です。

あくまで経験からお伝えしますが、食べられないときは、
体が栄養として取り込む力を持ち合わせていないのか、
(点滴で水分や栄養を入れても)排泄する力がないのだと考えます。

むくみが出ると手や足の感覚が鈍くなって動きづらく、
痰が増えて息が苦しくなります。

対策として、医師が必要と判断したら、
大きくふくらんだお腹から時間をかけて
水を抜いてもらいます。
2週間くらいで、また元の大きなお腹に戻ります。

抜いていい水と悪い水があるので、むくみがあっても
同じ手当ができないことがあります。



スポーツ飲料で有名なメーカーの研修で、
同じ成分の水分を点滴で入れた場合と口から飲んだ場合に、
体が栄養として取り込める量が多いのは、
経口摂取(口から飲む)だと学びました。

点滴で少ないカロリーを血管から人工的に入れるより、
食べたい物を、食べたい分だけ自分の口から摂ることが
栄養になるということです。

何より苦しくありません。

家族が「食べないと元気になれない」「少しでも食べて欲しい」と
焦る気持ちは当然ですが・・・
体の栄養を取り込むスイッチがOFFになっているからだと
考えてみてはどうでしょうか。

家族の思いが、本人を苦しめないように
「体を休めて、穏やかでいい時間が積み重なることを優先する」と
頭を切り替えると楽です。

むくみが減ると同時に、息苦しさや動きにくさは減っていきます。
「楽になった」と話す笑顔にたくさん会いました。

むくみのことを「お弁当」と言って説明する医師がいました。
むくんだ体は、栄養が含まれた水分(お弁当)を
体にまとっているようなもの。

約2週間スポーツ飲料数口で過ごした方がありました。
食事が入らない分の栄養を、
自分の体の水(お弁当)で補って、
お腹や背中、手足がすっきりしました。

むくみが減って、本人も家族も喜びました。


別の方ですが、在宅(家)で看取った家族が、
急性期病院の中堅看護師さんで、
「在宅で酸素も点滴もなくて最後まで過ごすのは無理だと思っていたのに、こんなに静かに亡くなれるんですね」と言いました。

私も病院にいる時は、点滴をするのは日常でしたし、
血圧が下がったら昇圧剤を入れて、
モニターの数字が下がったら酸素をするものと思っていました。
自然に任せると苦しくないということは、
同じ看護師でも、経験しないとわからないことです。


生まれ持った力を信じることが、みんなにとっていい時間になります。


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