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【小説】肥後の琵琶師とうさぎ

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2021年6月の記事一覧

【小説】肥後の琵琶師とうさぎ2

【小説】肥後の琵琶師とうさぎ2

 雨音が続いていた。ときおり、ひやりとしたすき間風が頬を横切る。
 カエルも鳴かぬ豪雨か。ボロ屋の戸が軋む音が悲鳴のようだ。
 私の前にはおそらく毛玉がいる。おそらくというのは、毛玉が静かで、気配もジンガイだから、なかなかはっきりとその輪郭がつかめないのだ。
「おい毛玉、そこにいるか」
 毛玉の所在を明らかにするための質問をしたところ、舌打ちのような返事が返ってきた。
「殿様気取りか、ジジイ」
 

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