見出し画像

空間を作れないなら道具を作れば良いじゃない【リモート謎解きで見つけた没入感のヒント #2】

オンラインで行う打ち合わせやワークショップをもっと快適で面白いものにできないかと思い、会社の人たちとリモート謎解きイベントに夜な夜な参加してみました。

前回の【#1】では、参加したイベントで使ったツール、進め方、特徴などにフォーカスしてご紹介しました。

ここからは、面白かったポイント活かせそうだなと思ったことをゆるく書いてみようと思います。


ゲームなのに仕事感がすごい……!?

リモート謎解きでは、参加者はZoomなどのビデオ通話ツールを使ってゲームに参加します。回答方法は、音声で現場のスタッフの方に伝える以外にも、専用のウェブサイトに打ち込んだり、LINEでbotに送信したりと様々です。

参加したイベントの中にひとつだけ「仕事感がすごい……!😫」と思ったものがありました。そのイベントでは、回答の共有方法としてgoogleスプレッドシートを使っていたのです。

スクリーンショット 2020-06-20 15.26.54

(実際の画面ではありませんが、スプレッドシートはこんな感じです)

実際のシートにはイラストが入っていたりもするのですが、整然と並ぶあの小さなセルを見るととどうしても仕事の感じを思い出してしまいます。このシートをプレイ時間の半分くらい見るようなゲームだったので、かなり強く印象に残っています。


画像や音声によって没入感は大きく変わるっぽい

この体験を振り返ると「オンラインの場では、画面から発せられる画像や音声によって没入感が大きく変わる」ことが分かります。この「画面に映る画像や音声」という視点でみると、リモート謎解きでは以下のようなものがストーリーに合わせて演出されていました。

・問題用紙(画像データ)、謎解きキット
・待機中の音楽
・ストーリー説明用の動画
・使う言葉、名称(時間の区切りを1日目、2日目と数えるなど)
・司会者やスタッフの服装や言動
・司会者やスタッフのいる空間(画面に映る部分)
・小道具(くじ引きの箱など)
・エンディング動画

謎解きイベントはよく「公演」と表現されるのですが、その名の通り細かな部分まで演出が凝らされています。上記のスプレッドシートの例では、ゲームの場なのに、仕事感の拭えないツールを使っていたので、ゲームへの没入感が削がれてしまったのではと考えています。

オンラインの場にはほとんどの人が家から参加しているので、参加者側の空間を操作することはほとんどできません。特にワークショップでは非日常の空間を重視することがあるので、家などの日常空間の中でいかに非日常な場を作り出すかは課題となりそうです。そんな状況では、参加者が見たり使ったりする道具をデザインすることがとても重要そうです。


空間を作れないなら道具を作れば良いじゃない

今回は、道具を使うことの多いワークショップに焦点を絞って書いていこうと思います。私が以前に参加したものだと薪を使ったものがあったりと、付箋やペンやブロックだけでなく、ワークショップでは様々な道具を使います。

オンラインのワークショップでは、どのような道具がデザインできそうでしょうか。リモート謎解きの道具をワークショップに応用してみます。

・ワークシート(フレームやスタンプなどワークで使うもの)
・ツールキット(触れる物体を送付する)
・待機中、ワーク中の音楽
・説明用スライド
・使う言葉、名称
・ファシリテーターの服装や話し方、どんな空間にいるか
・オープニング動画、エンディング動画
・告知用の何か(ウェブサイトや資料など)

こんな感じでしょうか。この中で、個人的にハッとしたものを深堀ります。


・ワークシート(フレームやスタンプなどワークで使うもの

ワークシートは、参加者がプログラムに沿ってワークに取り組めるように行動を促したり制限したりするものです。リアルな会場であれば紙に枠を印刷して配ったり、オンラインの場ではMiroやMuralなどの共同編集できるホワイトボードツールを使うことが多いと思います。

スクリーンショット 2020-06-24 16.48.47

(「みんな最近どう?」的な話を社内で共有するために作ったシート)

スプレッドシートの体験を振り返って「オンラインホワイトボード上にあるものも道具なんだ!」とハッとしました。そりゃそうだろって感じですが、フレームの使いやすさと同時に、どんな振る舞いをする場なのかを伝えることも意識するべきだと改めて感じました。

ここでもう一つ発見したのは、オンラインではワークシートの出し方も工夫できることです。リモート謎解きでは、問題を解いたり何かを発見するたびに新しい問題シートが現れます。そこでは、シートを受動的に「与えられる」ものではなく、能動的に「進んでそこに行くもの」だと感じられ、次は何が現れるんだろうとワクワクしました。

逆に、謎解きでは全体像が見えてしまうと少し覚めてしまうなと感じました。これはゲームだからかもしれませんが、「あー、あと1問で終わりね」と俯瞰モードに入ってしまう感じ。(ただ、その時の謎解きでは、そのツールを使ったあとに続きがあったので「え……!?うわーーー!!!」と盛り上がりました。)

スクリーンショット 2020-06-24 17.05.12

先日参加したWDAのナレッジシェア会では、動作を軽くするためにボードが2枚に分けられていたのですが、1枚目のボードから2枚目のボードに行ったとき「新しいステージに来た!」という感覚になりました。(switchの「ゼルダの伝説」でマップを開放したような感じです笑)ボードの情報を制限することで、今行っているワークに集中できるようにする効果もありそうです。

このように、プロセスははじめに説明した上で、ワークシートは最初から全量見えるようにせず、ワークの進行に合わせて開放した方が集中力が持続しそうだなと思いました。


・使う言葉、名称

こちらは、コミュニケーションに使う道具として挙げてみました。

参加した人狼村からの脱出というイベントでは、フェーズの区切りを「1日目、2日目」と数えていました。「人狼は夜に人を襲う」という設定に沿った表現なので「フェーズ1、フェーズ2」と言われるよりも活動に入り込める気がします。

例えば、実際に箱は無いんだけどボードを「箱」に見立ててその中にアイデアを溜めてみたり、伝え方を「簡単で良いのでやってきてね」から「好きなだけやってきてね」にしたり、言葉もここがどんな振る舞いをする場なのかを伝える道具になります。

もう一つ、言葉に関して大事なポイントがあります。謎解きでは「緑色に光るもの」や「大きな船」などヒントとなる言葉は、参加者が無駄に混乱しないようにかなりちゃんと定義されています。その言葉に当てはまる物事が、イベント内で重複しないように作られているのです。

これはオンラインに限りませんが、議論の場で言葉を定義していくことはとても重要です。例えば、一言で「お客さん」と言っても「エンドユーザー」なのか「導入する人」なのか「管理する人」なのかそれらを全て包括しているのか、文脈からは推し量れない時があります。そうすると議論が進まなかったり勘違いが起きたりしてしまいます。

他にも「長期・短期」ってどのくらいの期間?「未来」っていつのこと?「サービスの価値」って具体的に何?などなど、分かっていそうで実はみんなバラバラなものを想像していることはよくあります。

触れないので道具としては認知されづらいものですが、その場で使う言葉もデザインできる要素です。


・オープニング動画、エンディング動画

始まり感、終わり感をデザインするには前後に流す動画を作るのも良いかもしれません。参加したリモート謎解きでは、ストーリーの説明時に、このような動画が流れました(こちらは同シリーズの別ゲームの動画です)。

動画や音楽によって、どのような気持ちで過ごす場なのかが直感的に伝わります。リアルな場でのカンファレンスやプレゼンテーションなどでも、最初に短い動画やジングルのような音楽で会場を盛り上げている時があります。

エンディング動画があれば、ビデオ通話の終わりにある「ブチッ」と急に終わってしまう感じが軽減できるのではないか…なんて考えています。(費用対効果はまだわかりませんが、とにかくやってみたい)


・告知用の何か(ウェブサイトや資料など)

あまりここまで作ることは少ないですが、ワークショップが始まる前に目にするものもデザインできます。

例として、リアル脱出お化け屋敷(ホラーな雰囲気なので苦手な方は注意)の予約サイトが面白いのでご紹介します。この脱出ゲームは「家賃が激安古民家の内見に行ったら殺人鬼が潜んでいたので、そこから脱出する」というものです。そのゲームの申し込みサイトが、不動産屋のサイトのようになっているんです!すごい再現度!

スクリーンショット 2020-06-20 16.01.40

これは、ストーリーが古民家の内見から始まるので、ゲームへの申込みの段階からストーリーが体験できるようになっているのです。

ここまでの作り込みが必要な機会はワークショップではあまり無いような気がしますが、告知の際の呼びかけ方、事前に共有する資料、ツールキットを送付するならどんな箱に入れるかなどは考慮しても良いかもしれません。


どんな道具が必要かは目的次第

リアルな会場でやるときは、どんなペンを使うか、どんな素材でプロトタイプを作るかなど、プロセスと同じくらい道具を大事にしていたのに、オンラインではすっかり二の次になってしまっていました。

ワークショップや打ち合わせをエンターテイメント風にするべきとは思いませんが、エンターテイメントを体験することで、道具としてデザインできるものが意外と多いことに気づきました。

新しく道具を作るのは費用がかかるので、上記に挙げたものを全て作り込むことはなかなか無いと思います。それに、どんな道具を作る・選ぶかはその場の目的次第です。

ただ、効率の良いやり方も大事ですが、同じくらい「自分がのってるか」もかなり大事なので、自分のモチベーションが上がるなら作っちゃえば良いんじゃないかと最近思っています。



さて、次は「オンラインでも空間や身体を使った体験はなくもないかもしれない」について書こうと思います!今週中には公開したいな〜と思っています。もしよければ♡とかでで応援していただけると嬉しいです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?