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色について考える -デザイナーとして考えたい「固定概念」-

デザイナーのasakoです。株式会社ゆめみで、クライアントワークのかたわら、Liberal Arts Labというインターネット以降の知のアップデートを促す活動をしています。そろそろ1年も振り返りのターンに入ってきたところで...今年実施したイベントで、来年も引き続き考えたいデザイナーとして大事な機会があったので、記しておきたいと思います。

色と「ことば」にみるダイバーシティ

今年の4月、ファシリテーターのかつたろさんにお願いして、こんなイベントを主催しました🎨

" 色は人にとって視覚情報としても、とても重要な要素の一つと言えます。
しかしながら、色の定義は正確に定まっているものというよりは、育った国や文化、記憶や知識、もしくは時代によっても感じ方が違うかもしれません。色は案外、曖昧なものでもあります。"

こんな誘い文句から始まったこのイベントですが、きっかけは、普段のデザインワークで使っていたムードボード制作・カラーコンセプト設計でした。

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これまで、クライアントやチームメンバーと新たなビジュアルのコンセプトを合意形成していくステップとして、イメージスケールというツールを何度か使っていました。
イメージスケールは、「人は色に対して抱く共通のイメージがある」という前提で心理学を研究してつくられた言語と配色の等価互換が可能なシステムです。「言語イメージスケール」で「ことば(形容詞や名詞)」を軸にコンセプトをチームでマッピングした後、システムによって紐づくであろうと定義された「カラーイメージスケール」を重ね合わせてを紐づけるプロセスを活用していました。

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これまで、特にデザイナー間においては「クールなデザイン」「トラディショナルなデザイン」「フレンドリーなデザイン」などと言われると、思い浮かぶ「画」は大抵似通って一致しており、それを再確認するようにムードボードを作っていけば、大枠の中で描いているイメージが異なる、なんてことはあまり起きませんでした。ですが、ふと立ち止まって考えてみると、それは「ことば」と「カラーイメージ」が一致している世界の中で通用しているものなのでは?と思うようになりました。

思い起こしてみると、近年でも「色」の認知について変化があったことにも気づきました。

「肌色」が消えたクレヨン

この出来事はもうそんなに新しい話ではないのですが、私は今で言うペールオレンジやピーチ色のことを「肌色」と呼んでいた世代です。改めて思い返してみると、「肌」の「色」と認識していたことはさほどないのですが、確かに「はだいろ」という名称で記憶していました。日本においてもダイバーシティが謳われてもう10年くらい?たちますが、教育課程の中でもそのような意識改革の声があがって、「肌色」という名前のクレヨンや色鉛筆はなくなったそうです。

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女性  = ピンク?

女性に向けたプロダクトであれば、当たり前かのようにピンク(や暖色)系のイメージになっていることは未だによくあるのですが、例えば家電業界でいうと、それまで男性向けカラバリはシルバーや紺色、女性向けカラバリはピンクや薄紫、など固定化することが多く、iPhoneが出した「白」「黒」という展開は、その概念から開放された感覚さえありました。
自分自身、幼い頃から当たり前のようにピンク色のものばかり提供されるのがすごく苦手で、拘って青色を選んでいたことをハッキリ覚えています。

入れ替わったトイレアイコン

色の情報は人間にとってとても重要で、形よりも色の印象を強く覚える傾向があります。例えば、国際的なピクトグラムになっている男女モチーフのトイレアイコンも、形はそのままで「赤」と「青」を入れ替えて実験をおこなったところ、色の印象で間違った性別のトイレに入ってしまう人が多かったという実験結果も出ています。

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ただし、外国人に関しては同様の結果が出なかった(色と性別イメージの紐付けがなかった)ということも報告されていて、国によっては「赤」「青」が日本と逆の認知がある国もあるそうです。

ランドセルや運動着の色などは、すっかり選択肢が広がり、社会的にも教養の段階では性別と色の紐付けは取り払われつつありますね。

虹色が示すもの

昨今では、割と当たり前のようにLGBTQの文脈で定番のモチーフとなった🌈。10年くらい前までは、海外旅行にいった際、そういった旗を掲げているお店のもつメッセージをバスガイドさんに説明してもらったりなんかして、私たち日本の文化にはない新しい知識だったことも覚えています。虹色自体も日本では7色が定番ですが、海外だと6色や5色が一般的な国もあるようです。


そんなことを思い浮かべながら、これは,,,デザイナーとしては優れたツールがあるからと信用仕切って固定概念を持ってしまってはまずい...!と感じ、まずは多様な認知があることに「気づく」イベントを企画したいと考え、実施に至りました。


私たちを巡る色彩観

今回は、既存の概念から共通の印象を持ちやすい「形容詞」ではなく、人によって違いが出やすい「名詞」を使って向き合ってみることにしました。

例えば、「青春の色」と言われて、あなたはどんな色を思い浮かべますか?「青」という文字通り青色?それとも若葉のような新緑の色?みんなこの色なんじゃないの?と思っても意外と違ったりするのです。

ワークショップシートでは25個のワードに対して、自分が思い浮かべた色を置いていきました。

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短い時間で直感的にどんどん置いていったので、もう一度やると多少は違いがあるかもしれませんが、今改めて見ても、自分としては違和感のない配色になっています。

こちらは、他の方のワークの一部です。

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ちょっと他の人のシートを見るだけでも、さまざま。暖色系・寒色系で近いものの場合もありましたが、見比べてみるとなかなか面白かったです。

おそらく、言葉に対してこれまでの経験値の中で紐づく原体験があったり、関連して思い浮かべている別の言葉からの印象も影響を受けていたりするのだと思います。

比較して気づいたのが、私は「白」「黒」はまったく選択肢になかったなということもわかりました。「色」に焦点を当てていく中で、私の中では必然的に「有彩色」に絞られていたことも他の人と違う部分だと気づきました。

「普通」ってなんだろう?

ダイバーシティが叫ばれている今、価値観は多様化し、「普通〇〇だよね」は通じないものになってきています。つい思考の癖でそのような気持ちが浮かんでしまうことも私はあるのですが、実際のところ、「普通」が他人と一致しないことは理解しています。

それをデザイナー視点に映してみたときに、「セオリー」というものも存在するが故に、つい「xxといえば普通〇〇だよね」を使っているシーン、まだまだあるなあ、と思ったりもします。

ときどき、立ち止まって当たり前に使っているツールや決まり事が、「本当にそう?」と問いかけてみることは大事です。デザイナーとしては常々気をつけたいことですが、「思考停止をしない」(A is B は常々変わるかもしれないということ)ことを肝に銘じておきたいと感じています。

とはいえ、まだまだ身近なクライアントワークの中で、意思決定をする上では「共通認識」を探る機会も多いものです。

冒頭に話したカラーコンセプト策定においては、「広告的」な戦略からの脱却を図るのも一歩かなと思いました。つまり形容詞などを使ったことばとイメージの紐付けでなく、性別や年齢、国籍などに対し、これまでの教育や経験の上で持ってしまっているアンコンシャスバイアスです。プロダクトやサービスが、「どのような属性(ターゲット)に向けたもの」という視点ではなく、「何を成し遂げたいものなのか(価値観・ビジョン)」という視点に移して向き合ってみること。次はこれを意識してみようと思っています。

ゆめみでは、その後UIデザインをベースにしたアンコンシャスバイアスのワークショップを社内外に向けて開催したり、Liberal Arts Labのメンバーを中心に、D&Iについてもみんなで探っています。ぜひ今後も機会があれば参加してもらえると嬉しいです。

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おまけ)イベントの様子を一部youtubeにもUPしてます🎨

おまけ)普通ってなんだろう?にモヤった方は、こちらもどうぞ🎞



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