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大学病院のST長期実習で学んだこと

大学病院。
そう、超急性期病院です。

昨日書いた療養型の病院とは全く違った実習となりました。


そこには、乳幼児や幼児、難病、精神科など学校ではほとんど習っていない分野の様々な患者さまが入院しています。

患者さまはどんどん入れ替わるし、手術、検査はバンバンやる、カンファレンスも多い。

1日があっという間に終わる目まぐるしい7週間でした。


そんな大学病院での実習、バイザーは前回とは全く違ったタイプで、新卒からその大学病院に10年ほど勤めている、STではやや珍しい男性の先生。

この先生のおかげで、初日に私は心臓が止まる思いをすることになります。


実習初日といえば、緊張もピークに達しており前日から寝られない人もいたでしょう。

それくらい大変身構えている初日。
バイザーはあいさつもそこそこに、

「1人患者さんに行くよ〜」

とPCに向かいました。
着いていくと、その患者さまのカルテをのぞきながら、

「なんかこの患者さんの情報で知りたいことある?」

と聞いてきます。
今となってはなにを聞いたかは全然覚えていませんが、きっと数個当たり障りのないことを聞いたことでしょう。

数分後、個室に到着。
入って患者さまにあいさつをした後に言われた言葉は

「はい、じゃあなにする?」


……………え?????
えっ??????????
えええええ????????


もう混乱、大混乱です。
意味がわかりませんどうもできません。
完全にパニックです。

あいさつ終わりました、自己紹介しました。
その後なにするかなんてわかりません。
だって初日の午前中ですもの、マネする人も思い浮かびません。
前回の実習で新患対応なんて見なかった、なんてったって療養型病院です。

パニックのまましばらく沈黙して絞り出した言葉は、

「なにをしたらいいかわかりません」

するとバイザーから衝撃の一言。

「はい実習中止〜」

卒倒するかと思いました。
まぁ、そのすぐあとに、

「っていうのは冗談で。ちょっと今からすることをよく見てて、あとでなにをしてたか聞くから」

と言われ、引き攣った笑顔でわかりましたと答えたのを鮮明に覚えています。


さて、初期評価が終わり居室からの帰り、バイザーの発言の謎が解けました。


「初日に完璧にこなせたらそれこそ実習いらないから。最終日に同じことして、今よりも動けたらそれで合格」


なんって合理主義な人なんだと思いましたね。
おかげで寿命が数年は縮みました。
だって学生にとっての実習中止は人生終了とかと同義ですし!!!

さらに、先程言われた【よく見てて】という言葉、これも課題の伏線でした。


「うちでは、症例報告書よりもなにより観察レポートを一番大事な課題にしてる。患者さまのこと、周りのことをよく見て、よく聞いてありとあらゆる情報をインプットして、レポートにアウトプットするように」


この言葉通り、ここでの7週間の実習の内、およそ5週間はずっと観察レポートを提出していました。

しかも、見たまま、聞いたまましか書いてはならず、自分の考えや予想は綺麗に削除されました。

患者さまの見た目、着ている衣類の色、形、挿入されているチューブの場所、色、太さ、長さ、ベッド周辺の物一つ一つ…

リハ中は発話内容はもちろん目線、呼吸数、唾液嚥下の回数などなど…


全てメモに書き取り、帰ってからレポートにひたすら書き起こすという作業の繰り返しでした。

約1ヶ月もの間、毎日たくさんの患者さまの観察レポートを書き続けたおかげで、かなり細かいところまでの観察する癖が養われました。

また、終盤は観察だけでなく、その観察したことに考察を加えました。

例えば、ベッドサイドに野球選手のポスターが貼ってあり、時計も同じ野球チームのものだった⇨プロ野球が趣味で、〇〇チームのファンと考えた。

といった感じです。
発話内容も、失語症の方であれば失語症状と、構音障害の方であれば構音・発声の特徴なども考察していきました。


おかげさまで、約5週間を観察レポートに費やしたにも関わらず、症例報告書はほぼそのレポートを削るだけで7.8割はできてしまいました。

いや、今同じ指導方法を学生さんにやれと言われても絶対できませんけどね。


症例さんに関しても、脳外科の患者さまの中に対象となる人がいないという理由で、まさかの右肺癌亜全摘後の嚥下障害の方になりました。

が、もはやそんなことでは動揺しないくらいにはなっておりました。

訓練プログラムにはかなり悩んだ記憶がありますが。


そんな大学病院での実習、心臓の毛も何本か生えたこともあり、最終日にはあの恐怖の質問。


「はい、じゃあなにする?」


にも落ち着いて答えることができ、無事合格して終えることができたのでした。


手術見学など大学病院ならではの経験もたくさんさせていただきましたが、なによりもバイザーの指導方法が記憶に残る実習でした。

恐怖体験をしたものの、この実習で学んだことは新卒入職してから初めて臨床に出た時にものすごく役に立ちました。

臨床場面でしか出来ない経験をさせてもらえて、考え方を教えてくださったのはすごく大きかったです。


私も今後また実習生を受け持つ機会があれば、恐怖体験はさせずに、臨床でしかできない経験ができた、勉強になったと言われるバイザーになりたいですね!


以上、長期実習体験記、長くなりましたが読んでいただき、ありがとうございました。

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