「STはすぐVE・VF撮りたがる」に物申す
昔、リハ職なら誰もが知っているであろう、あるお方に言われた言葉。
「 STさんはすぐVE・VF撮りたがるけど、自分の評価にもっとプロ意識とかプライドないの?」
同じようなことを言われたことがあるST、きっといるはず説。
いや、そりゃ撮りたいですよという話。
だって、嚥下内視鏡検査(VE)とか嚥下造影検査(VF)の結果って水戸黄門の紋所級の説得力があるもん。
もちろん、嚥下機能の客観的評価としての役割は大前提として、多職種に指導する上で検査結果があるかないかで提案と強制くらいの差ができます。
最高の流れは
STが嚥下スクリーニング評価
↓
結果を多職種に申し送り
↓
VE・VFで客観的に評価
↓
結果を共有・注意点指導
「STが最初に言ってたことあってたから申し送りとか指導内容ちゃんとやらなきゃ!」
これ!
これができればSTの評価結果の信頼度があがるし、指導内容が統一される可能性もぐっと高くなる。
そもそも、医者だって血液検査、CT、MRIなどなど色んな検査をしてからじゃないと確定診断に至りませんよね。
骨折だってどんだけ痛がって腫れててもレントゲン撮らないと疑いって書かなきゃいけない。
同じように見えないところを判断するのに、嚥下はスクリーニングだけでプライド持ってやれって?嚥下障害あります!って自信持って確定しろって?
無茶苦茶言いますよね。
私達は患者様の機能を正しく評価して、その評価結果を元に訓練プログラムを立案していくという義務があります。
その義務を果たすために適切な方法があるのに使わない方がよっぽどプロ意識がないですよね。
(あの時そう言えればよかったですが、誰かは伏せますが本当にあの上の人なのでちょっとその場では言えなかったんです悔しい)
とはいえ…
検査ができるところも近年増えつつありますが、まだまだ設備が整っていない、できる医者がいないという病院が多く、まして生活期の施設なんてなかなかありません。
そんな中で頸部聴診法等での評価や、スコアを作って活用するなど様々な努力をしているSTがいるというのが現状です。
嚥下学会に行っても、検査がないためスコアやグレードで情報共有を行い、うまく支援に繋げることができたというような素晴らしい発表をたくさん聞くことができます。
嚥下機能というのは、生命にも直結する重要な機能です。
にも関わらず、専門職がいない現場ではなんとなくで食事がだされていたり、専門職がいても検査はない、個々人のスキルの差があるなど、正しく評価することが難しい場合が多々あります。
STは専門職として自身のスキルアップを日々怠らないことは最低限必要です。
ただし、どうしても主観的になりがちな嚥下スクリーニング評価。
それに客観的評価が加わり、自分がした評価のフィードバックがなされることでさらに個人のスクリーニング評価の精度も上がっていきます。
私はありがたいことに、1〜3年目の間に年間約300件のVE・VFを見させてもらいました。
それも、自分がスクリーニング評価や食事評価に入った患者、利用者の検査です。
そして、その検査結果のビデオと日々の食事風景のビデオを毎回、何回も見比べます。
それを何度も何度も繰り返していると、口唇閉鎖、取り込み、送り込み、舌や下顎の動き、喉頭挙上、嚥下音などの全てが検査の映像と繋がるようになりました。
その経験があったからこそ、超急性期でベッド上安静の患者様の評価や、VE・VFのない病院での立ち上げを行うことができました。
だからこそ、新人はどんどん評価をして、どんどん検査をみてもらいたい。
病院や施設はなんとか検査ができる環境を整えてもらいたい。
というのが切実な願いです。
そうして、もっともっと働きやすい環境になるといいですよね。