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子どものゲーム課金 取り消せる?「保護者同意なくば可」が原則 “お小遣い”範囲内など例外も

 

子どもがオンラインゲームに多額の課金をしてしまうトラブルが増えています。保護者の同意なく18歳未満の子どもがオンラインゲームで課金した場合、契約は取り消せます。どのような条件なら取り消せるか、実際に起きた事例から考えてみました。(染矢ゆう子)
 オンラインゲームにはまっている東京都内の中学3年生、ハルトくん(14)。母親が寝ている間に、母親のスマートフォンのキャリア決済(※)で3万5000円の課金をしました。
 課金を含むスマホの代金を銀行から引き落とせなかったため、家に請求書が届いて、母親が課金に気がつきました。スマホの販売店に支払いを拒否できるか聞いたところ、「ゲームのお金を払わないと、スマホが使えなくなります」と言われてしまいました。
 困った母親は住んでいる自治体の消費生活センターに相談に行きました。相談員に「未成年のゲームの課金は取り消しができます。でも1回だけです。次にもっと大きな額の課金があったときに取り消せないかもしれない」と言われたといいます。母親によると、実際に2回目に相談があったときに、取り消すことができなかったと相談員は話しました。

状況の記録を

 ではどうすればいいのでしょうか。消費者問題にくわしい東京経済大学教授で弁護士の村千鶴子さんは「法定代理人(保護者)の同意がない未成年の買い物(契約)は、取り消すことができます。1回に限るなどの条件はありません。何回でも取り消せます」と話します。そのことは民法5条2項に明記されています。
 しかし、保護者が目的を定めずに子どもに渡している“お小遣い”の範囲内は適用外となります。今回は「必要なものは買っているので、“お小遣い”は渡していない」と母親は言います。
 村さんは「お小遣いの範囲を超える場合、どのゲーム会社にいくら払ったのか、ゲームの課金の際はどのような画面表示になっているか、などの記録を持って、お住まいの消費生活センターに相談しましょう」と話します。
 何に使ったのかを子どもから聞けない場合でも、決済を行ったスマホの会社に消費生活センターが問い合わせて、わかることがあります。
 子どもが保護者のクレジットカードを使った場合は、カード会社を通じてゲーム会社と交渉することができる場合があります。ただし、「クレジットカードを他人に使わせることはカード名義人の責任になり、カード名義人にカード会社への支払い義務があります」(村さん)。

裁判の場合も

 オンラインゲームの課金で、取り消しが1回限りと言われるのはなぜでしょうか。一般に、店で子ども(未成年)が高額の買い物をする場合、相手が子どもとわかるので、保護者の同意を得ない場合には、何回でも取り消しが可能です。
 しかし、インターネットを介した取引では、店側は年齢がわかりません。そこで、未成年者の買い物(契約)には保護者の同意が必要だということを、ゲーム会社は子どもが理解できる文章表現や注意をひく文字の大きさなどで説明する必要があります。
 契約の取り消しができるかどうかは、話し合いで解決できなければ裁判で争うことになります。子どもにもわかる説明がある場合、子どもが年齢や生年月日を偽って入力するなどの「詐術」を働くと取り消しができません。「詐術」を繰り返す場合、15歳以上であれば不法行為による損害賠償を請求される場合があり、15歳未満の場合は保護者の監督責任が問われることがあります。「会社の利益がかかっているのでゲーム会社はお金と時間をかけてでも裁判をする場合がありえます。そのためゲーム会社との話し合いで全額が返還されるのは、“1回限り”ということもある、というわけです」(村さん)
 家庭や子どもの事情はそれぞれ違いますから、2回目以降であっても消費生活センターに相談するなどして、お金が戻ってくる場合もあります。「消費者問題にくわしい弁護士に聞いてみることもお勧めします」(村さん)

■「詐術」に当たらない場合

・15歳未満
・年齢や生年月日を入力する画面はなく、「成年ですか」との質問に「はい」と答えただけ
・利用規約の一部に「未成年者の場合は法定代理人の同意が必要です」と記載しているのみの場合

■「詐術」に当たるかどうかの考え方

・未成年者を対象にしていたり、訴求力がある商品か
・未成年向けの勧誘・広告があるか
・画面上の表示が未成年者に対する警告の意味を認識させるものか
・運営企業が虚偽の入力を困難にする年齢確認のしくみを設けていたか
 (経済産業省の準則を参照)


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