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「おみくじ」を探究したボクと「世界探究部」の話

探究インテリジェンスセンター研究員の小林誠道です、こんにちは。

高校時代、「おみくじ」を題材に探究して卒業論文を書きました。おそらく、そんなテーマで論文を書く人はそんなに多くないんじゃないでしょうか。

今日はそんな、探究の経験と、社会人になったいま、高校生向けの世界探究部(略称セカタン)というプログラムを作ったことについてお話ししていきます。


探究学習がつまんない、という話

2022年度から始まった高校生の必修科目「総合的な探究の時間」。他の科目とは異なり、学校ごとにかなり自由度が高いはずなんですが、どうなんでしょうね、「探究学習がなぜつまらないのか」という作文が注目されるほど、どうやら必ずしも生徒たちが楽しんでいるということはなさそう。

そんな探究学習ですが、文部科学省のサイトによると、こんな点が重視されています。

自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し,解決していくような学びを展開していくことを重視している。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/sougou/20230531-mxt_kyouiku_soutantebiki03_2.pdf

いやぁ、なんか難しく感じないですか?探究する側も、教える側も。
高校生に「自己の在り方」とか言ってもわかんねーよ!とか思われちゃったり、自分で課題見つけられるんだろうかと悩まれたりしそうです。

自由度低めの調べ学習=探究の場合も・・・

しかし探究は本来、自分の好きなこと、気になったこと、世の中に対する疑問や悩みに、知的活動を通して正面からぶつかることだと思うんですよね。

そこで今回は、自分が経験した高校時代の探究活動から、探究を面白くする3つの要件をお伝えします。

探究テーマとの出会い

私の在籍していた関西の高校では、卒業論文の執筆がカリキュラムに組み込まれていました。分野はいくつか指定されていましたが、何について調べて書くかは完全に生徒任せだったため、私は「日本史が好き」という理由で、歴史の分野で探究することにしました。

ただ、当然何を探究のテーマにすればいいかわからない状況だったので、同じグループの仲間たちと奈良に行き、「とにかくアイデアを探そう」としました。

なかば遠足感覚で寺社仏閣を見てまわることにしたのですが、春日大社に参拝した時に転機が訪れます。人生で初めて、おみくじで「凶」を引いてしまったのです。

「おみくじ」の探究

占いでも嫌な結果が出たら不安になるものです。世界遺産の神社で引いたおみくじの「凶」は私に強烈な印象を与えました。家に帰って早速調べはじめ、おみくじの運勢は寺社仏閣により色々な設定があること、全国には変わったおみくじがあることを知りました。

さらになんと、同年冬に部活で訪問した北野天満宮でもまた私は「凶」を引くという・・・(しかも受験前)。これは何かの縁だな、と感じ、私は「おみくじ」をテーマに探究を始めることにしました。

受験前というタイミングに引いた因縁の「凶」(著者撮影)

自分の関心から広げる

「凶」を引いたショックから、まず私はおみくじの運勢の基準について調べようと考えます。そのため日々の生活の良いこと悪いことを意識しながら、寺社に行くたびにおみくじを引く、家族や友達と出かけるときに寺社を行き先にする、といったことを行っていました。十数回の参拝を繰り返した時、同じようなおみくじを何度も引いていることに気付きます。見た目を含むフォーマット、形が同じおみくじを色々な寺社で見かけたのです。

そして、日本全国のおみくじの内、70%以上を生産している会社が山口県の神社内にあることを知りました。もともと明治時代に女性の自立のための運動組織が設立され、その機関誌を発刊するため、資金源にする目的でおみくじ製造を始めたそうです。日本だけにとどまらず、ハワイにある神社にもおみくじを「輸出」しているとのこと。色々な場所で引いたおみくじが、同じところから来ているのは興味深いです。

現在はこうした情報をWebで簡単に見ることができます。しかし私が高校生だった当時は出典が不明など不確かさの高い情報が多かったため、文献や論文を探して探究を深めました。難解な文章を読むのは大変でしたが、根気よく頑張った経験は卒業論文の執筆に大いに役立ちました。少なくともおみくじに関する知識量は学校で一番だったと思います。

こうした探究を続けている時、自分が気になったことを深く調べることの面白さに気付きました。今振り返ると、重要な3つのポイントがあったように思います。以下に示すような3つの要件なしには、この面白さには気付かず、いやいや卒業論文を書いていたことでしょう。

探究を面白くする3つの要点

①自分が衝撃を受けた経験をきっかけにする。
いきなり興味関心と課題を繋げることは容易ではありません。
私の場合は、歴史という興味関心が、寺社仏閣を引き寄せ、「凶を引く」経験からおみくじの探究に結びつきました。
(最初は難しいかもしれませんが)自分の琴線に触れた”何か”を探して、探究のきっかけにすると、調査を進める起爆剤を手に入れたも同然です。
手に入れるきっかけが先生の手助けなのか、仲間との協力なのか、ふとした経験なのかはあなた次第です!

②ふとした気付きを大切にする。
おみくじを探究のテーマにしたから、おみくじの会社を調べたわけではありません。数百円を払っておみくじを買い続け、何度も同じ形のおみくじを見かけたことで「誰が作ってるんだろう?」と気になったことがきっかけでした。自分で決めたテーマと何回も触れ合うことでそうしたきっかけは自然と訪れます。ここは根気よく向き合ってみてください。

③知らないことを大切にする。
あなたがこれから探究するテーマは、「自分が知らないから、経験したことがなかったから」こそ、テーマになると思います。知っていることは心動かされにくく、テーマに継続して関心を持つことが難しくなるでしょう。「知らないな、気になるな。」と思った点が、探究の重要な切り口です。まず知っていることを増やしてから、探究を深めても遅くありませんよね!
その時に先生や友達など、他の人の視点があるとかもしれません。今この記事を読んでいるあなたの好きなこと、嫌いなことが、面白い探究のテーマだと教えてくれるのは、自分だけではないと思います。

私が立ち上げにかかわった高校生向けの探究プログラム「セカタン」

探究すれば世界はもっと楽しくなる!

探究インテリジェンスセンターでは、この3つの要点を押さえつつ、世界を探究しようとする学生の皆さんに向けた”世界探究部「セカタン」”という講座を開設しました。

発足第一弾の「オンライン合宿」では、2日間の活動を通して、参加者の視野を広げつつ、自分の興味関心に基づいた探究を行うという内容。じぶんの大好き!大嫌い!という感情を出発点に、テーマを広げるワークを行い、言語を超えて一次情報にアクセスできる”RuleWatcher”を使って調査。ふつうの検索と違って、調べた結果が他の人とかぶるということもありません。知的な刺激に満ちたこの合宿の様子は、また別のnoteでご紹介します!

大好評だったセカタンのオンライン夏合宿

こうした経験は、単に自分の未来に役立つだけでなく、自分が心から面白い・楽しいと思えることを探すきっかけになると信じています。

心から楽しめる探究活動を、私たちとぜひやってみませんか?

センターでは
・インテリジェンスと合意形成力を鍛えることで、あなたのやりたいを社会のやりたいに変える社会人講座”探究インテリジェンスプログラム
・一次情報に触れて自分の興味関心を広げ、仮説を立てて探究し、自分で語れるようになる学生向けプログラム”世界探究部「セカタン」”を提供しています!


あの、因縁の二発目の「凶」ののち、おみくじをテーマとした探究の成果は、研究発表大会で視点の鋭さと幅広い調査の点が評価され、賞をもらいました。「凶」のおみくじにも感謝、というわけで、それ以降も、初めて行った寺社仏閣では必ずおみくじを引いて「ここのはオリジナルかな?」などと言いながら楽しんでいます(笑)。


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