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食卓のフツーの話題にならないもんかね。「核兵器」ってさ。

不謹慎なタイトル・・・と思わずに、ちょっとお付き合いくださいな。


2023年のはじめ、仕事の行きがかり上「核兵器」について調べることになった。

というのも、ド素人でありながら、たまたま私が核兵器の勉強会を主催することになったからだ。

私の本業は、よその国の政策を調査しやすくするためのITツールの開発。そしてその傍ら、そのユーザー向けの勉強会を主催している。

たまたま主催した勉強会

2022年の年末、私がいつものように、勉強会のネタ探しで、各地の情報を眺めているとき、ヨーロッパの平和組織が出した「アメリカの新型核兵器がついに欧州に運び込まれる」という記事に目が留まった。

え?アメリカの核兵器が「運び込まれる」ってどゆこと?

ICANが発表したアメリカの新型核兵器に関する情報のキービジュアル

恥ずかしながら、私はそのタイミングまで、ドイツやトルコに、アメリカの核兵器が「配備」されていることはちっとも知らなかった。

なにそれ?置いてあるだけってどゆこと?

意外なまでにアメリカの核はあちこちに置いてある

核兵器を保有しているのは、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国。この五か国は条約(核兵器不拡散条約)で保有が認められている。じつに変な話だが、歴史的に持っちゃった後に条約を作ったのだからこうなっている。

そんなのずるい!と言って、その条約に加盟しなかった、インドやパキスタン、北朝鮮もまた核兵器を保有している。そして、ぜんぜん公式には言っていないが、イスラエルも確実に保有している。

さて、この「保有」とは違って、核兵器を「配備」しているのがベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコだ

ちょっとまって?何が違うんだよ。

保有は、自分で核兵器をコントロールできる状態で持っていること。
配備は、ただおいてあり、自分ではコントロールできない状態であること。

めちゃくちゃな理屈だが、アメリカの核兵器を「アメリカのコントロール下で」置いてあるのが、「核シェアリング」という核の配備なのだ。

地下に潜って「悪い奴だけを」ピンポイントで攻撃できるっぽい??

しかもそれらに自律的な推進尾翼をもち、ピンポイントの地下攻撃ができる最新の核爆弾が持ち込まれている。

勉強会の資料より

この核弾頭は、低出力オプションと言って、核物質を少量にして搭載することが可能。つまり、ごくわずかなエリアだけ影響させることができる、というわけだ。

さて、こうなってくると、昔日本に落ちたのとはだいぶ様子の違う武器。どこかの地下に逃げ込んだ「悪いやつ」だけ攻撃できる武器なんだよ、といふうにも聞こえる。

あら?そうなの?だったら使ってもいいんじゃないの?

そんな声が聞こえてきそうだ。いやまて、これは核兵器なんですよ。使っていいわけないじゃないの。

さて、このノートは、この手の、「いまの核」が、私を含め、あんまり知られていないという点を述べたくて書いている。

あんまり知られていないのは、日常会話にならないから

今回の勉強会を主催するまで、私の頭の中は、1945年の広島や長崎のイメージで止まってしまっていた。

キノコ雲、はだしのゲン、被爆者の談話、資料館の展示・・・

あれから80年近くが経過し、状況はものすごく変わったのに、教科書でも、「いまの核」についてはせいぜい、条約のことと、核弾頭の数のことぐらいしか教えていない。

いま、私たちが考えなければいけないのは、2024年段階での核兵器について。しかしこの情報は、意外なまでにもよくわかっていないし、考えるきっかけがない。

会社のメンバーと出かけた「あたらしいげんばく展」

あたらしいげんばく

東京大学で9月5日から8日にかけて開催された「あたらしいげんばく展」に、会社のメンバーで出かけた。

いまの渋谷に原爆が落ちたらどうなる?と言った意欲的な展示だった。

その帰り道、根津のスパゲッティ屋さんでみんなでご飯を食べながら、こんな話になった。

使わなかった核弾頭ってどうなるんだろうね。」
「かなり、お金かけて作ってるんだろうから、ある意味もったいないよね。」
原発で使うのかな。」
「そもそも、使用期限とかってあったりするのかな。」
「あるんじゃないの?いまずいぶん古くなったヤツを解体してるらしいから。」
解体するときって放射線浴びちゃいそうだよね。」
「その前に、核弾頭って放射線出ちゃってるのかな。」
兵隊さん被爆しちゃうよね。」

こんないろんな疑問が浮かんできたが、この段階ではあえて検索せずに、疑問を出し合ってみた。(※上記については巻末に回答を記載します)

日常会話が足りない

こういう、「そもそもどうなっているんだろう」と言うような話ができる場所があまりにも足りていないのではないか。

私たちにとって、1945年のイメージで核の問題が静止画のように固定されていることこそが、まさにいまの核の問題を収束させない根本の原因なのではないだろうか。

スパゲッティを突っつきながら、先日、いっしょにFacebook LIVEをやった、古賀野々華ちゃんやみんなと話した。

おカネから考えてみた

いったいどうやったら、はだしのゲン時代じゃなく、いまの核兵器の観点になるだろうか。

そんなことを考えて企画したのが「ファイナンスから紐解く核兵器」というイベント。平和団体の渾身の調査によって発表されている、核兵器産業への投資の実態を示すレポートを、かいつまんで紹介するというFacebookライブを行った(アーカイブをYoutubeで公開しています)。

広島、長崎という被爆国でありながら、日本の核兵器産業への投資はなんと6兆円にも上ることがICANの報告に掲載されている。

ICAN2022年のレポートによれば、調査対象国別の核兵器産業への投資において、日本は第二位の投資国(投資額は約6兆円)

技術面での進歩も知らなければ、経済面での状況も知らない。

いまの核について、こんなに知らなかったのか、という驚きと同時に、世間一般についても、こんなに知らなくていいのか、と思った。

なるべく易しく、わたしみたいな素人でもわかるように。

オシンテックでは、私たち自身の「どうなっているんだろう?」という視点を持ったまま、できる限り最新の一次情報を題材にオンラインの勉強会や、Podcastなどの配信を行ってきている。

世界の問題は、遠くで起きていることじゃなく、私たちのすぐ横にある。毎日のご飯のときの家族の話題にちょっと加えてもらえるように、これからも発信し続けたい。


<私たちの疑問・回答編>
1. 使わなかった核弾頭ってどうなるんだろうね。かなり、お金かけて作ってるんだろうから、ある意味もったいないよね。原発で使うのかな。

➡耐用年数を超えた核弾頭は、解体して、再び核弾頭の製造に使用されるか原発の燃料として再利用されたり、長期保管している。

2. そもそも、使用期限とかってあったりするのかな。あるんじゃないの?いまずいぶん古くなったヤツを解体してるらしいから。

➡核弾頭は製造から数十年経つと、シールドなどの保護機能が低下するなどの問題が発生する。現在解体が進んでいる核弾頭の多くは、米ソ冷戦時代の1950年代から80年代のもの。これらが解体に向かう一方、新規製造がおこなわれており、世界の核弾頭の総量は微減しているが、「使える核」はむしろ増えている。

3. 解体するときって放射線浴びちゃいそうだよね。その前に、核弾頭って放射線出ちゃってるのかな。兵隊さん被爆しちゃうよね。

➡核弾頭からはごく微量な放射線が出ているが、厚い鉛の層などで覆っており、通常の保管では被爆するリスクは低い。しかし核弾頭を解体する際は、放射線に被曝するリスクが高くなるため、解体作業は厳重な安全対策が施された専用施設で行われる。

最後までお読みいただきありがとうございました!
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