意思を持つデザイナーが、あたらしい体験を創造する
GOGEN株式会社のCXO、金子です。
デザイナーとして「自分だから創ることができた」と誇れるものづくりをするのが夢でした。
デザイナーの下っ端からはじめ一人前になり、→1人では何も創れないことを実感し組織づくりに尽力、→良い組織をつくるには経営に参画しなければならないと知りCXOへ。
やっとここから夢に見たものづくりのスタートラインです。
この記事では私のキャリアプランを元に
あたらしい体験はどう創造されるか?
これからのデザイナーの"意思"の重要さ
意志を持って体験をプロトタイピングしていく
と言ったことをお話していきます。
ジャーニーを変えてしまうような、あたらしい体験を発明したい
「まだ誰も作ったことのない体験を作りたい」それが私がデザイナーを目指した動機でした。
これまで様々なサービスのデザインに携わってきましたが、既存のサイトを少しひねったて組み合わせた転職サイトやショッピングサイト、コンテンツ・メディアなど、あたらしい体験を発明出来ていると言える案件は実はそれほど多くはありませんでした。
もちろんどんなサービスも必ず新規性がありましたが、実際にユーザージャーニーを描いてみると"これまで"と"これから"に大きな差分があるサービスを創れたとはいえませんでした。
これまで"体験"を変えてきたサービスたち
一方で、私の目から見て"体験をガラリと変えてしまった"と感じるサービスがいくつかあります。
その一つの身近な例がタクシー配車アプリのUBERです。
UBERは「タクシーを配車する」というユーザージャーニーを起点から変えてしまいました。
▼これまでのタクシー配車体験
1) タクシーを呼びたいと思う
2) タクシー会社を探す、ウェブサイトや広告を閲覧し電話番号を入手する
3) 電話をかけて位置や人数を伝える(残念ながらここで配車を断られることも)
4) 降りる場所を伝え乗り、決済する
▼UBERのタクシー配車体験
1) タクシーを呼びたいと思う
2) アプリを開き、現在地で乗車ボタンを押しマッチング結果を待つ
3) タクシーで行きたい場所に行き、降りる(事前登録しておけば決済すら自動である。)
→その結果、どの会社のタクシーに乗ったかは覚えていないことすらも多い
「顧客は速い馬がほしいのではなく、目的地に素早く到着したいのだ」という例え話はUXデザインを学んだ人であれば聞いたことがあるでしょう。
このUBERのアプリ起動時に地図が大画面で表示されることが特徴的なUXは人々の心をつかみ、これまでのスタンダードな体験を完全にアップデートしてしまいました。
このような体験のアップデートは、ディレクトリ型検索エンジンからのGoogle、ガラケーからのiPhoneなど常に歴史を動かしてきました。
このような〇〇後で体験のスタンダードを変えてしまうようなサービスを私は作って死にたい。そう思うのです。
理想の体験から逆算する
顧客はタクシー会社を選びたいのではなく、素早く目的地に付きたいだけなのです。
過去、電話がタクシー配車のコミュニケーションとして主流だった頃は電話番号からはじめる体験が理想的だったのかもしれません。
しかし今これだけスマートフォンが普及した時代に、常にウェブサイトを検索させ各社個別の電話番号を見つけさせるのは最適ではないと思います。
真に良い体験づくりとは、
「これまでの体験を元に改善する」というという視点ではなく、常に「そもそもどうあるべきなのか?」から思考するマインドセットが必要だと考えています。
特に、技術の根底が日々変わっていく現代のようなタイミングではこの視点が重要になってくるでしょう。
デジタルの時代、そしてAIの時代へ
理想の体験を思い描くためには、今の時代は何が「できるか?」ということを常に頭に入れておかなければいけません。
例えば位置情報が取得でき、決済がオンラインで完結でき、最近だとchatGPTなどにより自然言語での会話が「できる」ようになってきています。
今の時代は「できること」の変化のスピードがとても早いです。最近はAI文脈で特にその傾向が顕著です。そしてこいいった技術の革新はしばらくはデジタルという盤面の上で起きると思っています。
この変化渦中は、新しい体験を作りたいデザイナーにとっては恰好の機会です。
世間では盛んにDX(Digital Transformation)という言葉が取りざたされるようになりました。しかしその多くは体験のアップデートなしにツールだけがデジタル化されるデジタイゼーション(Digitization)にとどまっています。
今回のUBERの例のようにデジタルの"てまきること"を念頭に理想の体験を描けるプレイヤーが、今後のあたらしい体験を作っていくのだろうと考えます。
新しい体験は意思から生まれる
かのスティーブ・ジョブズはこう言ったといいます。
「人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ」
このような「出来ること」が目まぐるしく変わる時代に、人々は次に欲しくなるものを予想することが出来ません。それこそ人はより速い馬をニーズとして要求するでしょう。
このような時代においては、自分が欲しい物、人々に欲しいと思わせるものを自分で考え、世に問うていく姿勢が重要です。
あなたがこれから創る体験、どうあるべきだと思いますか?
既存のバイアスを壊す
もし既存の体験を改善していくのならば、ユーザーのニーズに耳を傾けるのがいいでしょう。
まずニーズを見つけ、それを満たすアイデアを出し、既存の枠組みを変化させます(下図、左から右の矢印)
しかし新しい体験を生み出したいと思うのならばこのプロトコルを逆にしなければなりません。
既存の「こういうものだよね」という枠組みのバイアスを壊し、自分が、家族が、当事者が、本来どうあるべきなのか?の理想から逆算するのです。
理想からアイデアを生み出し、そのアイデアのニーズを世に問うようなアプローチで価値を検証します。(下図、右から左の矢印)
この理想からはじめニーズを問うプロセスがあたらしい体験の種になります、「人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないもの」だからです。
デザイナーが意思を持つ。「私はどうしたいのか?」
理想からはじめるためには、確固たる意思が必要です。
ある意味ではエゴと言ってもいいでしょう。
この数年のトレンドではデザイナーは分析者であり、仲介者であったように思います。ファシリテーションやリサーチの仕事の重要度が高まっていました。
お客様の感想をまとめ、社内の意見をまとめ、抽象的な"こうあって欲しい"ものに色を付けるような仕事です。
これからのデザイナーは徐々に"意思を持つこと"の重要度が上がっていくように感じます。
あなたが人々に"どうあってほしいか?"から意志を持って色を決めるのです。
社会がどうあってほしいか、そのためにサービスがどう有ってほしいか、そのために私は何を成すのか。
良くも悪くも、これまでのデザイナーが得意にしていたと言われる、曖昧な情報を整理→具体化していくプロセスは、AI(LLM)がより高度かつ高速化に処理できる未来が見え始めてきました。
では、今後どのような仕事がより重要度を増すか?と問われると私は意思決定なんだろうなと思っています。
デザイナーが中立的な立場から一歩踏み出して、強い意志の代弁者となる必要性を感じはじめています。
VISION・MISSIONからはじめる
理想を生み出す、強い意志。
その確固たる意志の根源となるのがビジョンやミッションだと考えています。
意思というのは難しいもので、寄る辺がなければ簡単に揺れてしまいますし、復数のチームで同一の意志を持つことはさらに難しいです。
それでも私達が意思決定をしなければならないのならば、指針にするべきはビジョンやミッションです。企業のビジョンやミッションは「こうありたい」という未来への夢から生まれます。
デザイナーの役割は、このまだ実現できていないビジョン(理想)を、より現実感のある形で具体化すること、
そして、その理想がまるで実現するかのように社内・社外に伝える力が大切になるでしょう。
デザイナーとして、創りたい世界を自信の言葉で語れること、ストーリテリングの力をより大事にしていこうと考えています。
意思をプロトタイピングする
このような意思からはじまるものづくりにおいてはプロトタイピングの重要性が高まるのではないかと思います。
その意志を実現した試作品を素早く作ってみせる、またそこに込められた意志をプレゼンテーションするというような仕事です。
前項で「人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ」と述べましたが、まさに「形にして見せる」プロセスを素早く仮説検証できるのがプロトタイピングの仕事です。
こうしたプロトを用いた企画のプレゼンテーションは旧来よりデザイナーの大事な仕事のひとつでした。
ファシリテーションをもって合意形成していくような仕事も残り続ける一方で、意志を持って伝え、心を動かすようなプレゼンテーションの仕事もまた増えてくるのではないかなと感じます。
モノではなく体験から考える
「〇〇を作ろう」と考えてしまうと、どうしても既存枠組みののバイアスにとらわれてしまうでしょう。
「〇〇という体験を作ろう」と考え続けること
そのために、理想を描く意思を持ち続けることがこれからのデザイナーとして私がやっていきたいことです。
その結果、唯一無二となる体験を創り上げることができれば嬉しいなと思っています。
デザインを学び、組織を作り、意志を持ってサービスを生み出す、
3年後に本当にそれが出来たか?もう一度この記事を読み返すことにします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?