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ゲームシナリオ原案『人械(仮名称)』#2

―第2話―

あの話を聞いた後すぐに、飲み会はお開きとなった。

店の外へ出ると気持ちの良い夜風が体を透った。

現在時刻23:00。

辺りはまだ夜は始まったばかりといわんばかりに

栄えている。

ざわざわ、がやがやとお酒を飲む人やそうでない人の話し声が

お祭り騒ぎのように飛び交っている。

はあ。と息を手ですくうように吐くとほのかにアルコールの香りがした。

匂いに顔をしかめつつジーパンのポケットに手を突っ込んで歩き出した。

ここら周辺は飲み屋が多く、路地裏に点在していることから

裏飲みと言われている。

そんな場所から少し離れたところに公園がある。

酔いを醒ますため公園のブランコへ腰を掛けた。

公園内は人通りが少なく、街灯に群がる蛾の羽が電灯にあたる音でさえも

聞こえてきそうだ。

ぎぃ、ぎぃとブランコを軽く揺らし、空を見上げる。

すると、ざっ、ざっ、と公園内を歩く足音が聞こえてきた。

音がする方へ目を向けると、コンビニのビニール袋を手にぶら下げた

黒く長い髪の女性がこちらへ向かってくるのが見えた。

彼女は僕の前で足を止め、

「なあ、少年。」

とおもむろに声をかけてきた。

おどきつつも

「....僕ですか?」

と恐る恐る返答した。

「君以外に誰がいるんだ。」

そう言われ周囲を見渡すと確かに僕と彼女以外

誰一人としていなかった。

「横、いいか?」

そういって隣のブランコを指さした。

拒否をする理由もなかったため、彼女の要望を承諾した。

彼女は座ると手にぶら下げていたビニール袋から

缶ビールを一缶取り出し、タブを引いた。

缶はプシュといういい音を鳴らした。

それを彼女は口元へ運び

ゴキュ、ゴキュ。

と体内へ流していく。

プハア!

とお手本のような飲みっぷりについつい見入ってしまった。

「なんだ少年。私の顔に何かついているか?」

「い、いや。いい飲みっぷりだなあと思いまして」

「そうか?」

そういいながら彼女はまた一口体へ流し込んでいった。

しかし、なんで急に声をかけてきたのだろうか。

この疑問はこの時間にも頭にぐるぐる回っていた。

そんな訝し気な目で彼女を見ていると

「なにか言いたそうだな。

おおむね、なんで急に声をかけてきたんだ。だろ。」

「そうですけど....」

彼女はふぅーと息を吐き空を仰ぎながら言った。

「話し相手が欲しかったんだ。うん。それだけ。」

そのまま話を続ける。

「なあ、少年。

もの心ついたときから最期がわかっていたらどうする?」

僕が理解していないのを向こうは悟ったのか

「ああ、悪い、言い方が悪かったな。

じゃあこうしよう。

何年何月何日。ここまで具体的に自分が死ぬ日がわかっていたらどうする?」












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