飛行機の音のする方を眺めると
スクリーンみたいな空に
小さな白い点の光が見えて
あれが飛行機かと思って
見つめるのだけど
それは一向に動かず
しばらくして
それが星か人工衛星か何かで
飛行機のほうは
もうとっくに視界の外へ去り
音だけが
地上に取り残されているのだと気付く
そうこうしているうちに空は暗みを増し
どこかの家の
お夕飯のいい匂いがして
風に吹かれて
屋上の
あんまり長く寝転んでいたから
立ち上がると立ちくらみがした
屋上のへりでよろめいたら
落ちて死ぬかもしれなかった
幸い落ちなかった
幸いだ
今日のぼくの幸いは
落ちて死ななかったことだった
台風が残していった
いくつもの水たまりが
綺麗だった
#詩