そのフルカラー、ほんとに正解?~一番伝えたい情報について~

縫「ぬいやまで~す。お疲れ様でーす」

組 お疲れ様です。組木です」

縫「いやーちょっとばたばたしてて、時間あいちゃいましたね。たのしみにしてたみんな~! ごめんね!!」

組「改めて、よろしくお願いします」

縫「さて、今回はえーっと、箔押し? でしたっけ?」

組「そうだね。儲けたお金を印刷で還元していこうという」

縫「ありがたいことです。そういえばひとつ気になってることがあるんですけど、組木ハカセは一色刷りも好きなんですよね。それはどうしてですか? カラーのほうが見栄えいいし、みんなできたらカラーにしたいって思ってるんじゃないでしょうか?」

組「フルカラーってたしかに伝えられる情報の量は多いけど、多ければいいというものじゃないと思うんだよね。寄せ鍋より二種類くらいのお鍋のほうが味がはっきりわかるというか。だから、フルカラーだから派手とか、伝えたい情報が伝わる、ってわけじゃないと思うんだよ。デザイン自体の情報量が多い場合、色をたくさん使わないことでバランスが取れる、ということもあると思います」

縫「へーっ、じゃあっそもそもこの方はフルカラーや箔押しが必ずしもベストの回答じゃない、ってことですか」

組「うーん、うん、いまフルカラーがデザインにマッチしないようで悩んでいるんだったら、一回一色刷りに戻ってみるのもひとつ手段かもしれないですね。箔押しをするにしても、一色と箔で二色っぽくしてみるとか」

縫「箔を使って二色刷りなんてこともできるんですか?」

組「えーと、えーと、二色刷り。この場合は特色の二色ですね。これは版をふたつ作るんですが、このへんはみんなわかるかな?」

縫「せんせー、おれは流石にわかりますがわからないひともいるとおもいます!」

組「特色二色というのは、その色ごとに版、つまり、はんこみたいなものですが、一色ごとのはんこを作って、一色おして、その上からもう一色おして、二色使った印刷物を作るわけです。 これの、一色を黒なり特色で刷って、一色分ワンポイントで箔で入れる、ということをすれば、単色と箔で特色二色の考え方の印刷ができるわけですね」

縫「ふむふむ。じゃあこう、いわゆるスクリーントーンみたいな表現を箔でいれたりとか、そういうこともできるわけですね」

組「そうそう、最近は結構細かい点や線も箔で出せますから、たとえば人物の目とか、影とか、重要な部分に箔を入れるということもできるます。 強調したい部分とか。イラストメインだと、文字や図案を箔で入れるより、イラストを際立たせるように箔を使うほうがクールかもしれませんね」

縫「そうなんですか。おれ、同人誌の箔っていうのは、タイトルにどーんというのが多いんじゃないかな、っておもってました」

組「このご相談をいただいてから、いくつか同人誌印刷所に載っている作例を見てみたんですが、そういう使い方が多いみたいですね。でもせっかくみなさんきれいなイラストを描かれているのに、タイトル箔押しだけじゃなんだか勿体ない気がするんですよ。それもいいけど、あまり特別なものだと思わずに、自由な使い方もしていいと思います」

縫「おれ、箔押しって言ったらやっぱ金とか銀とかホロとかでゴージャスでキラキラしたもんだと思ってたんですが。もっと表現の一つのツールみたいな認識でもいいと」

組「黒インキと黒箔を合わせて質感の違いを出すなんていうのもおしゃれだと思います。詳しい方はご存知かと思いますが、箔の種類は色箔やホログラム箔などとてもたくさん出ていて、たとえばタイトルを台詞風にふきだしで囲んで赤箔で注意喚起っぽくしてみるとか、さっき言った影の表現に水色のパール箔とかも墨と合わせた場合を考えてきれいだと思います」

縫「おお~。それだと黒箔のところはよりつやっとした感じになって、触るのがたのしそうですね。フキダシをどーんと箔でぬいちゃうのとか、この方の絵にあいそうです。ただそういう全体的に箔を使うのって、すっごくお高くなっちゃわないですか?」

組「同人誌印刷所を見ていると、25センチ平方メートルくらいからなのかな? それはデザインのどこを強調したいか絞ってピンポイントに使いたいですよね。それこそ、フルカラーの情報量があれば伝わるってことでもないし、全面に箔を使うより、効果的な使い方はあるはずです」

縫「へえー。箔って何センチ四方とかで値段がかわるんですね。おれの営業先では使わないからあんまり気にしたことなかったな。これだったらマークとかピンポイントにしてベタッとつかったりしてもカッコよさそうですね」

組「タイトルに使う以外にも、いろいろな使い方をしていけたら楽しいですよね。箔はちょっと使うだけで情報量が多いので」

縫「箔の使い方考えるのたのしいですね! 姉にも教えてあげよう~!! なんかめちゃハードル高いイメージでした」

組「実際技術が進歩しているので昔よりは使いやすくなっていると思います。そういえばコールドフォイルっていうものもあるんだよ。版を作らなくてもいい、熱押しが必要ではないオフセット機でも箔が刷れるもので、調べたところ、みかんの樹さん http://www.mikan-no-ki.com/item_introduction/coldfoilandemboss/ では煌箔という名前で出してるみたいです。糊で箔をぺらっと張り付けた感じになって凹凸がないので、大げさになりすぎないし、こちらの印刷所のプランでは面積は全く気にしなくていいみたいで、使いやすいと思います。高級感よりポップな印象をつけたいときにいいんじゃないかな」

縫「これだったらほんとに気軽に使えますね! 上に印刷を載せたりできるわけか。すごいですね。ものすごくリッチな表現も出来そう。あ、でも今回の方は暑苦しい、って言うのを気にされてましたね」

組「そうですね。今回の件で行くとそもそも絵の情報量が多くて、本来単色刷りでもしっかり見栄えがしているということじゃないかと思います。フルカラーがダメということではなくて、デザインや内容に合わせて、抜きどころを考えてみるといいんじゃないかなあ。印刷に正解はないので、みなさんの個性とか、やりたいこととか、いろいろな幅を持ってチャレンジしていただきたいなと思います」

縫「なるほどなあ。おいしい卵焼きを作れるならむりして幕の内弁当にするよりもより卵焼きが美味しく食べれるおかずを用意して引き立てたほうがいいって感じですかね!」

組「そうだね、居酒屋さんで食べる卵焼きのほうが弁当に入ってるのよりおいしかったりするけど、あれは弁当には入れられない別の種類のものだしね……」

縫「今日聞いた話だけでもいろんなことが出来そうですし、個々人に合わせた表現をかんがえていきたいですね。今後はいろんなケースで例を出しながらみなさんの疑問に答えて行きます!」

組「今日は単色と合わせる箔押しのご提案をしてみましたが、お役に立てましたでしょうか。フルカラーや金箔にこだわらず、一番伝えたい情報はどこか、ということを考えてみるとよいのではないかと思います。」

縫「こんなかんじでどうでしょうか。べんきょーになりましたね! それでは、また次回! 」

組「また次回。ありがとうございました」

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