第二の相談メール「二次創作一年目、コピー本を作るのが怖くなりました」

縫「ちょっと今回は指令があって」

組「はい、今度はどんな印刷の話をしましょうか?」

縫「うちの姉おりますでしょう。縫山同人マシーン1号が」

組「縫山くんのお姉さんは二次創作の小説を書き続けて15年、出した同人誌の数は三桁を数えるという立派な方なんですが、先日縫山くんのお宅に僕はお邪魔しまして、お姉さんからいろいろな同人誌を見せていただいたんです。初対面の僕にいろいろ見せてくださって親切な方でした。縫山くんその節はお世話になりました」

縫「そんなに立派な人間じゃないです。ガッカリフェイスのクソオタ小説書きです。あの人だけ服もやばいんだよな。まあそれはさておき指令が来ていまして。ぜひ組木さんに相談したいと」

組「いい人ですよ。はい、僕にできることがあればなんでもお手伝いしましょう」

縫「あの人はずっと……。そう、ずっと同人をやっているのですが、もちろんジャンルはいろいろ変ったり掛け持ちをしていて、最近いるところで最近、メインジャンルじゃないところでなんか気の合う若い人を引っ掛けたらしいんです。それはたまにやるんでいいんですけど、なんかその人が同人誌のことで悩んでいるらしく、ちょっと関係のない人間として先入観なく相談に乗って欲しいと言われまして」

組「なるほど。先入観がないという意味では僕はそもそも同人活動に関する知識がまだまだ乏しいので、適任かもしれません。お役に立てればいいんですが」

縫「はい、姉からぜひ組木さんに、とのことで。そのお若い方からの文章を預かってきたので拝読させて頂きます」


はじめまして。わたしは19歳の大学生です。二次創作を始めたのは去年、一人暮らしを始めて自由にテレビを見られるようになったのがきっかけでした。
生まれてはじめて小説を書き、ネットで交流も始めました。そして、一月、イベントにサークル参加したのですが、ネットで知り合った友達が買ってくれた以外、本は一冊も売れませんでした。

ジャンルもカップリングもマイナーなので、仕方ないのかなとは思うのですが、それからなんとなく全部やる気が出ません。小説を書くのも本を作るのも楽しいと思っていたはずだし、続けたいとも思っているんですが、どうせ誰も読まないのにまたひとりでコピーしてひとりで製本してひとりでイベントに行って、ほとんど全部持って帰るのかと思うと暗い気持ちになります。

書き忘れていましたが、本は全部コピー本です。どうせ買ってもらえない本を夜に近所のコンビニで印刷することを考えると、すごく寂しくなります。
別に買ってもらえないのは仕方がないと思うんですが、せめて自分の作った本に愛着を持ちたいというか、自分にとって大事なものを作っているという感覚を取り戻したいです。

よくわからないことを書いてすみません。相談に乗ってくださってありがとうございます。よろしくお願いいたします。


縫「以上です。えっこれ大丈夫?おじちゃん暗くなっちゃうよ!? あ、姉からのメモが付いています『この子の本は超いいので絶対続きが読みたいよろしく。あとこのカプには三人しか人がいません』」

組「三人というのは少ない……?」

縫「うちのきょうだいだけの流行とかわらないということですからね」

組「なるほど。まとめると、本を作るのがつらくなってしまった、つらい理由としては、第一に本の需要がないことだが、これは問題視していない。第二に、えーとコピー本というのは先日も見せていただいた、コピー機や家庭用インクジェットプリンタで出力した紙を手作業で綴じて作った本のことだよね?」

縫山「はい、その認識で間違ってません。コピーの専門店だったり、コンビニだったり、表紙だけ印刷に出したりはありますが」

組「ありがとう、はい、第二にコピー本制作をひとりで行っているため寂しさが助長される、本を作るという作業が、そのまま、本が売れないという寂しい思い出と直結してしまっているので、本を作ることが気が進まない。この第二の点に関して、楽しく作れるようになりたい、というご相談ですね」

縫「そういう話みたいですね。つかまとめんの上手いっすね」

組「僕も同人活動や同人誌即売会についての話題にずいぶん慣れてきたからね! さて、じゃあ、気になるのはさっき『表紙だけ印刷に出す』という情報が出たのが気になるけど、とりあえず順番にいきましょう。コピー本をコピー本として作る意義はなんですか? 印刷所に出さない理由ということだけど」

縫「単純にロットがそこまで見込めないというのが多いかな。印刷所にお願いするとなると少なくとも30冊とかになるでしょ。価格も割高になるし。さっき出た話みたいに、同人誌を作り始めたばかりで自分の本の需要もわからないとなると、たとえば中身が16ページの本なら面付けして4枚の両面コピーがあれば作れますから、手間とコストを考えてコピーで10冊くらい作ったらいいかな、と言うのはあると思います」

組「ふむ。まずロット」

縫「ほかには、印刷に出すとなるとイベント何日前かには確実に原稿を仕上げないといけないですよね。そこに間に合わなかったり、それはできたけど余力があるからもう一冊つくりたいとかになると、コピー本という形になったりするみたいです」

組「ふむふむ。小ロットと短納期ですね。小ロットに関しては、オンデマンドの同人誌印刷所には1部から作れるサービスを提供しているところはけっこうあるみたいだよ」

縫「まあページ数が多かったりしたらそれもアリかもしれないですけど、12pや16pとかだったらコピーになるんじゃないですかね、コスパ考えるとやっぱり」

組「そう、コストの問題もある。このサービスでも16ページ本が240円から。同人誌の価格、というか頒布額っていうのかな? はページ数×10というのが一般的という印象をうけたんだけど、その考え方でいくと、ようやくとんとんになるのが48ページあたりから。これくらいになるとそろそろ印刷所に出してもいいかな、という感覚になってくるのかな、と僕は見てるんですが、そんな感じで合ってるかな?」

縫「そうですね、印刷代もあるし、手間ってコストもあるけど、少ないページ数だとやはりどうなのかなってかんじです。何より、同人誌を始めて作る人はやっぱり印刷所にいきなり入稿するのに抵抗があったりもするみたいです」

組「人に仕事を依頼するという工程が最初は勝手がつかめないのでできればやりたくないというのはわかる気がする。なるほど、コピー本の魅力は小ロット低コスト短納期。気軽に作れる。でも多分それだけではないですよね。先日縫山くんのお姉さんに見せてもらった本でいうと、小ロット手作業なので、無理がきくというか……」

縫「ああ、あのシール貼ったり穴開けたりハンコ押したりのやつですね。そうですね十冊くらいならああいうこともそんなに手間じゃないので。表紙に布を貼ってハードカバーの本みたいにしたやつとかもありましたね」

組「そうそう。そういう感じで、まず、作ること自体が楽しい、買った人もびっくりして楽しんでもらえてって感じになると、楽しくなるんじゃないかなと思いました! 今回そういう案を考えていきましょう。といっても僕は印刷屋なのでどれくらいお役に立てるかはわからないけど……」

縫「そうですね。おれは姉や妹やその友達がやっていたことからよさげなものを探しておきます」

組「では次回から楽しいコピー本の世界について考えていきましょう!」

縫「わーtipsぽくなってきた! バズりた~い」

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