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vol.52「〈革命〉までに必要な助走」(『ハーモニー』伊藤計劃/ハヤカワ文庫JA/2010年刊)

vol.52「〈革命〉までに必要な助走」

みなさんこんばんは。

とうとう伊藤計劃です。

なんだか分かりませんが、
若い世代のSFファンでは

伊藤計劃を読んでいるかどうか

で談義の広がりがまったく違う…気がします。

ともかく、これで僕も計劃経験者。
はれやかに更新です。

伊藤計劃、『ハーモニー』。
では、どうぞ…。

『少女革命ウテナ』というアニメがあります。

ちょうど今季オンエアしている『さらざんまい』の、幾原監督が担当した作品です。

主人公の、男勝りな女の子が〈王子様〉になることを目指す、という。

ジェンダー格差を〈革命〉する物語です。

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『魔法少女まどか☆マギカ』というアニメがあります。

シナリオ展開が酷(コク)すぎて、最終回で主人公が〈世界のことわり〉をまるごと変えないとビターエンドにすらならない作品。

主人公が希望と絶望をひっくり返す、〈革命〉をする物語です。

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そして本書、『ハーモニー』。

女の子二人が、

医療管理が徹底された代わりに、
生活の自由が失われた世界

〈健康ファシズム〉の世界を〈革命〉したがる物語です。

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なんで三つも作品を並べたかというと、

〈革命家〉の役割を女の子に託したがる

そんな雰囲気が、サブカル界隈にありそうだと思ったからです。

アナーキーなムーブをさせると、
なんとなく女の子の方が映える

もちろん『ブレイブストーリー』とか、
『仮面ライダービルド』といった例外はあります。

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〈革命〉という行為がカタルシスを伴うには、主体が「現状の社会」において虐げられている必要があります。

〈イマココ〉に居場所がないからこそ、
〈イマココ〉以外に向かう動機が出来る

『少女革命ウテナ』は、男女共同参画社会基本法が制定される前に放映されました。
ウテナという女の子は〈お姫様〉にはなれても、配偶者を守る〈王子様〉にはなれない時代において迫害されています。

『魔法少女まどか☆マギカ』は、〈魔法少女〉というモチーフが多様される業界において。
魔法少女達は、「絶望を希望に変える」という奇跡を起こし、そのリスクを一身に負うことを期待される〈物語〉において迫害されています。

〈お姫様〉や〈魔法少女〉といったモチーフが、なぜ女性性と密着しているのかは、本稿では検証しません。

…できそうにないので。

しかし、とりあえずは、〈革命〉には助走としての「マイナスな状況」があることは分かりました。

では、小説『ハーモニー』では、
革命の助走はどこにあるのでしょう。

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本作は、〈健康ファシズム〉を憎む二人の女の子が中心になって展開します。

一人は主人公:トァン。

彼女の〈革命〉への動機は、
彼女なりの個人主義にあります。

自分の体なんだから、
勝手にさせてほしいよね

という考えのもとで、

人体を社会的リソースと考え、
不健康であることを許さない

社会を憎悪します。

自由を得るために〈革命〉を求めているのですが、裏を返せば「他人への無関心」の表れです。

もう一人は、天才少女:ミァハ。

彼女は

社会になじんで生き残る人間と、
社会になじめず自死を選ぶ人間

がいるのはおかしい、不公正だと考えます。

こちらは「他人への関心」から始まっています。

そんな他者愛が、彼女を調和のための〈革命〉へと駆り立てます。

ハーモニーのための革命です。

🧞‍♀️🧜‍♀️

こうして本作では、

二人の女の子と、
二通りの〈革命〉

が並び立つわけです。

果たされるのはどっちか?!

これ以上はただのネタバレになるので、
内容についてはここまでにします。

本稿もここまでにします。

ただ〈革命〉という、〈単なる勝利〉ではないカタルシスには、それなりの助走が必要のようです。

そのうえで、

社会という〈他者の総体〉を忌避する少女と、
世界という〈他者の総体〉を愛する少女

どちらが勝利をおさめるのか。

そこには、伊藤計劃という作家の思想が、
顕著に表れていることだろうと思います。

一冊目としては、
最適解だった。

『虐殺器官』も
『屍者の帝国』も
まだですが。

実際そう思いますし、
人にもそう言って勧められます。

ご興味あれば。

(おわり)

トァンとミァハのビジュアルとしては、

アニメ版と、
シライシユウコさんの表紙と、

公式から二通り提示されています。

読んでいるときは、
アニメの方が脳内に浮かびました。

髪がものすごく長くて、
人間離れした風体で。

非現実的なぶっとんだデザインが、
壮大な思想戦争にベストマッチ。

デザイナーの手際というか、
メディアミックスが起こした化学反応です。

日本のサブカル万々歳。
令和もいい時代になりそうです。

では、次の水曜日にお会いしましょう。

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東北大学/「エキマエ読書会 by東北大生’s」のオーナー/ 「読書生活のサンプル」をお送りします(毎週水曜日)
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