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「CLに向けて?」 プレミアリーグ 第28節 マンチェスター・シティ vs アーセナル マッチレビュー

※最初は英文字表記で選手名を書こうと思って図を作ったのですが、日本語の方がやはり読みやすいと文章を書いていて思いました。そのため、図と文章で選手の表記が違うというカオスな状態になっています。申し訳ありません。

試合結果

試合結果:MCI 3-0 ARS 
得点者:45'+2 スターリング(MCI)
    51' デ・ブライネ(MCI)
    90'+1 フォーデン(MCI)
主審:ジョナサン・モス
場所:エティハド・スタジアム
スタメン:下図

19-20 vs Arsenal スタメン

【前半】 -1- 非保持で凌駕

およそ3ヶ月ぶりにプレミアリーグが再開する。本来ならもうリーグ戦どころかCL決勝も終わってるはずだったのかーという思いもあれば、通常時のリーグ戦終了〜次シーズンのリーグ戦再開までも3ヶ月くらいなんだから変わんないっしょ!!と強引に考えることで時間を乗り切っていた自分がいた。

再開を彩るのは昨年までこちら側のスタッフであったアルテタが率いるアーセナルとの対戦である。師弟対決の側面もあり、同じボール保持型のチームの対戦は、CLで見るようなビッグマッチで起こるものである。

先立って再開していたブンデスやラ・リーガに比べて準備期間が短いためか、ボールフィーリングの部分でまだ慣れていないように見えたのが第一印象。お互いボール保持に色を持つチームということもあって、序盤はリスクを犯さないようにしつつ、自分と相手の様子見をするといった具合で試合が進む。

そんな中でこれまでとの違いが大きく見て取れたのは、シティのボール非保持の配置である。今シーズンは4-4-2の陣形でハイプレスをかけることが多かったシティだが、この試合では4-3-3の守備を敷く。

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トップのジェズスはパスコースを切るようにしてゲンドゥージを管理。WGのマフレズとスターリングはSBとIHを背後で管理しながらCBにプレスをかける。FWラインの選手がパスコースを消してマークする相手をMFラインの選手、又はSBがカバーする。

◇FW陣のプレスのタイミング
・CB→CBのパスが出た時、WGが外を切りながらプレスを開始
・CFはアンカーを管理するのが第一優先、CBがWGの圧で手詰まりしたらGKへ
◇後方のリスク管理(突破された後の設計)
・SBにボールが出た時、基本的には同IHが出ていくが、相手WGのマークをCBに引き渡すことができれば、SBが出ていく
・この際、DFラインはボールサイドへスライドし、マークを決定。逆サイドのWGは捨てる形

どこかでボールを奪いにいく!というよりは、相手の前進を妨害する!という色の強いプレスだったので、表現としては、「ボール非保持で相手を凌駕」という言葉がなんともしっくりくる。これ、ペップのサッカーを考えれば全くしっくりこないのが、また面白いところ。CLを見据えているのだろうか。

序盤にジェズスがゲンドゥージ番を外すことが何度かあり(意図的?)、それに応じてギュンドアンが押し出される形となっていたため、ゲンドゥージを経由してSBから前進することが何度かあった。擬似カウンターの場面ではオーバメヤンがゴールに一番つながりやすいような気もするが、裏を抜けてエリック・ガルシアを置き去りにしようとするオーバメヤンにパスが出ることはなかった。

アーセナルとしては、アンカーとの二人組で違いを生み出せるIHがいなかったのが、ボールを繋いでする前進に手詰まりしたことの直接的な要因だっただろう。あんまりアーセナルは見ないのでわからないけど、ジャカが負傷交代しなかったらできたのか、それともジャカだとしてもセバージョスと同じような感じになるのか。

また、マリの負傷交代でダビド・ルイスが入ってからは、ロングボールによる前進も増えた印象である。前進の手段がこれしかない!という思いが動作に表れたのかはわからないが、直接的にこれがゴールにつながることはなかった。オフサイドが多かったようだし、ラポルトやメンディ相手となると、サカやウィロック、エンケティアだと物足りない感が出てしまう。もっとオーバメヤンに勝負させたら良いのに!とは思ったけど、相手がウォーカーだったから消極的になったのかも。

この期間中に整理されたシティのボール非保持の部分が、アーセナルにとって予想外だったのはなんとなく想像がつく。試合が落ち着いていき、シティが「ボール非保持で相手を凌駕する」ようになってから、アーセナルの前進に手詰まり感が残ってしまったことが、チャンス創出に繋がらない要因となったように見えた。

【前半】 -2- 本職で貫禄を

そんなわけで、序盤にボールフィーリングの部分でミスの多かったシティも、徐々にボール保持という本職に割く時間が増えるようになる。

アーセナルの守備は、特に中盤3枚が、守備において人に対する意識が強い。ウィロックはD・シルバを、セバージョスはデ・ブライネを見る形だ。そして、守備時によく動くゲンドゥージは、後方をカバーしつつギュンドアンを見る。ボールウォッチャーになってる感がすごかったけど。

CFのエンケティアは、序盤こそCBの間に入ってプレスをかけようとしていたものの、徐々にギュンドアンへのパスコースを切ることにシフトしていった。結果、ギュンドアンはゲンドゥージとエンケティアに挟まれてマークされる。

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ラポルト→メンディのパスを通せれば、メンディの推進力のあるドリブルで前進することができるが、それを相手WG(サカ)に妨害されている時は、ひと工夫が必要になる。ラポルトのボール保持時に顕著だったのは、D・シルバの降りる動きである。ラポルト→D・シルバ→ギュンドアンという具合に、ギュンドアンへの新たなパスコース創出となってプレス回避(サイド展開)が図れるほか、これをオープニングとした左サイドでの旋回も、敵陣進出時にしやすくなる。人への意識が強いマークの外し方という観点でも、D・シルバは流石のプレーだった。

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また、27分ごろからは人への意識が強いアーセナルの守備を逆手にとった動きも生まれる。D・シルバがあえて列をあげるような動きをし、同時にジェズスがそのスペースに降りてくるような動きも見られるようになる。ジェズスが降りることによる利益はD・シルバが降りた時とさほど変わらないが、人への意識が強いアーセナルの守備に対するアクションとしては、D・シルバの個人戦術でマークを剥がす動きよりも、幾分か効率的である(D・シルバが1人でやった方が労力がかからないけど)。なお、ジェズスが降りる際は、ゲンドゥージがジェズスを意識していない時であるのがポイントで、ジェズスはそのタイミング(ギュンドアンを意識している時)や降り方(ゲンドゥージの視野外から入る)など、様々な工夫が見られた。

こうして自陣から前進し、最終ラインをハーフウェーまであげられるくらいに相手を押し込んでも、基本的にここまで書いたような構図が変わることはない。D・シルバが列を降りる動きをしたり、D・シルバが列を上げる動きとジェズスが降りる動きを掛け合わせたりをする。このジェズスがやっていた空いたスペースへの移動は、敵陣進出時にはデ・ブライネも行っていた。降りる移動でゴールに背を向けるジェズスと、横から入る移動で前を向きやすいデ・ブライネでは、後者の方がやりやすそうではあるので、そこからゴールに迫れるか!という観点では、デ・ブライネがそれを行った方が良いように思える。

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こうして、徐々にボール保持チームの貫禄を見せるシティだったが、連続した決定機を作り出せたのは35分辺りである。ボール保持型のチームにとってこれは決して遅いものではないのだが、アーセナルの守備がよくないわけでもないということは、追記しておきたい。特にこの試合で見られたのは、内レーン(ハーフスペース)の封鎖である。シティの旋回に応じて、ベジェリンとウィロックがチャンネル(CB-SB間)を埋めていたことは、シティの定石であるポケットからのクロスの妨害に貢献していただろう。また、CFのエンケティアも、ゴール前までプレスバックする姿を時折見せていて、守備で頑張っていた。

シティが徐々にボールを握り始め、決定機も作り出すようになったところで、シティに先制点が生まれる。マフレズと位置を入れ替えて大外に流れたデ・ブライネからのゴールに向かった斜めのロングボールを、これまた逆サイドのCB-SB間から斜めのランニングで裏をとったスターリングが収め、シュート。ダビド・ルイスの処理ミスを途中に挟んではいるが、このパターンは何度か見たことあるやつなので、運要素が全てだったとは言い切れない気もする。

膠着した前半を、先制点とともに乗り切ったシティが、1点のリードして前半を終える。

【後半】 状況が状況なので...

後半の変更点としては、ゲンドゥージとウィロックのポジション変更と、守備時のオーバメヤンの立ち位置変更だろうか。オーバメヤンの立ち位置がエリック・ガルシアに近くなり、自ずとGKがボールを持つ機会が増えるようになる。

砲台のようにロングボールを発射するエデルソンは、後半開始直後にボールを持つようになると、立て続けに2つのロングボールを右サイドに発射する。このうち2本目が、最終的にPKを招き、かつダビド・ルイスの退場を誘発する。

PKを沈め、2点と1人のリードを得てからは、ワンサイドゲームに近い状態に。自陣での守備をあまり得意としないアーセナルにとっては難しい状況であるとともに、状況が状況なので、お互いに無理をしない方向に動くようになっていく。仕方がない。

エリック・ガルシアの一件は、眠気が吹っ飛ぶくらい衝撃的だったが、その後にフォーデンの1点を加えて3-0となったところで試合は終了。第28節の延期分は、無観客のエティハドで、ホームのシティの勝利に終わった。

雑感

これまでとの大きな違いという意味で見ると、4-3-3によるハイプレスだろう。アルテタアーセナルのようなボール保持型のチームに対して、非保持でも相手を凌駕できる方向性にシフトしているとも読み取れるような、そんな変化であった。ある意味これは4局面コンプリートに近づいているようにも見える。一発勝負のCLを本気で取りに行く姿勢の表れとも言える。

ただ、相手は監督が代わってまもないアーセナルというだけあって、ボール保持での引き出しは少ないチーム。このプレスがショートパスによる前進に対してどこまで耐久できるかはまだわからない。加えてこの試合での勝利はスピード勝負できるオーバメヤンにボールが集まらなかった点が大きい。ちまちまつなぐの面倒なんで、裏に蹴っとくから、あとよろしく!!っていう具合に前線のスピードを生かされた時にどうするかっていう部分はまだ見えてこない。この点、この試合でのエリック・ガルシアの起用は興味深い。もちろん起用の理由にコンディションがあることは言うまでもないが、ペップがこの試合をどこまで読み切っていたかという部分に焦点を当てたいところである。

とは言っても、まだ1試合なので、様子見。今後のビックマッチに要注目ですね。エリック・ガルシア無事そうで良かった。。。


トップ画像引用元
https://twitter.com/ManCity/status/1273333855106236422?s=20


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