見出し画像

「歩む道ではなく手段として」  プレミアリーグ 第21節 マンチェスター・シティ vs エヴァートン マッチレビュー

試合結果

結果:MCI 2 vs 1 EVE
得点者:51′ ガブリエル・ジェズス(MCI)
    58′ ガブリエル・ジェズス(MCI)
    71′ リシャーリソン(EVE)
場所:エティハド・スタジアム
主審:アンドレ・マリナー

前半 〜配置と個の力で殴る〜

 共に2019年最終戦を勝利で終えた両チーム。新年最初の一戦、リヴァプールを勝点14差で追いかけるシティが、マルコ・シウバ解任後調子を取り戻しつつあるエヴァートンをホームに迎えた。

 スタメンはこちら。水色がシティで、紺色がエヴァートン。

第21節 vs Everton スタメン

シティ ボール保持 × エヴァートン ボール非保持

 前半はシティがいつも通りボールを握る展開。まずはシティのボール保持時を見ていこう。

画像2

 シティは前節のシェフィールド・ユナイテッド戦の後半でも採用した3バックをそのまま継続。フォーメーションを噛み合わせると、エヴァートンの2トップに対して3枚のバックで数的優位な状態。よって脇のCB二人がハーフスペースへの入り口となる。

 シティがこのフォーメーションでくることをおそらく考えてなかったであろうエヴァートンは、当然マークが混乱。右ではT・デイヴィスが過剰労働の状態になる。ロドリがボールを持てばロドリにプレスをかけ、ディニュがカンセロにつききれなければそのサポートをし、チャンネルを埋める仕事もこなす。右サイドで起こる問題を全て引き受けました!って感じ。一方の左サイドでも、シグルズソンは何をすべきかわからない状態。エリック・ガルシアはフリーになり、ギュンドアンも捕まえられなくなる。

 もちろんシグルズソンが全て悪いってわけではない。この日のギュンドアンは一級品。スペースを見つけてサイドへ流れることもあれば、出しどころを失ったCBからパスを受けてワンタッチで捌くこともある。細かい動きで相手を翻弄し、スルーパスでチャンスメイクまでしたギュンドアンは、まさにチームの心臓であった。

画像4

 このようにシティの配置で翻弄されたエヴァートン。シティの攻めは左サイドが主戦場に。フォーデンの引く動きにコールマンは簡単に食いついてしまい、裏にスペースを作ってしまう。そこを機動力に優れたメンディに使われ、フリーのエリック・ガルシアやギュンドアンからパスを出されるという形が何度かあった。コールマンは得意の対人戦の強さでなんとか対応していたものの、本職SBである以上こういったプレーに翻弄されやすいのかなという印象を持った。

エヴァートン ボール保持 × シティ ボール非保持

画像3

 続いてエヴァートンのボール保持。シティはシャドーに入ったマフレズとフォーデンがジェズスに加わって3トップ化し、プレスをかける。エヴァートンは5バック(3バック)であるため、シティの前プレに対して数的同数の状態。ビルドアップ時にはシグルズソンが一列落ちてデルフと共に2ボラ化し、T・デイヴィスが一列上がる構造のエヴァートンに対して、シグルズソンにはギュンドアンが、デルフにはデ・ブライネがつくことでショートパスによる前進を防ぐ形をとったシティ。前プレ時においても優位に立つ。この構造上、T・デイヴィスはフリーになるが、ピックフォードはそこにバシッとパスを付けられるGKではない。そこでもたもたして止むを得ずクリアするという状態が続いたエヴァートンのビルドアップであった。

 そうなるとエヴァートンが付け入るべき部分はボールを奪ってからのカウンター。しかし、これもボールの雑さやフェルナンジーニョの対人戦の強さといった部分で後手に回ってしまい、これといったチャンスは訪れない。

 予期せぬ配置とシティの個の強さで攻守ともに後手に回ったエヴァートン。前半途中で修正が入ることもなかった。その一方で点を取られなかったことはなんともまあアンチェロッティのチームらしいところ。前半を0-0で終えた。

後半 〜問題の取捨選択〜

守備におけるエヴァートンの修正

画像5

画像6

 後半になるとアンチェロッティはフォーメーションを442に変更する。まずはその変更の守備における狙いを見ていこう。

 後半のエヴァートンの442の守備ブロックは簡単に言えば「中を閉めて外に誘導」である。この守備陣形における一番のタスクは、シティの1トップと2シャドーに「時間」と「スペース」を与えないようにすることである。そのためまずはその前線3人に楔を入れさせないのが第一。楔が入れば2列目の4人は体を180度回転させなければならず、その分「時間」を与えてしまう。すると、その分幅を取るシティのWBはフリーになる。ここにボールが出ればSBがアプローチし、同時に2列目がスライドして、シティのWBから斜めのボールを入れさせないように封鎖する。こういった守備の仕組みをとった。

 しかし、その分「時間」と「スペース」の猶予を持てるのがシティの2ボラ、つまりギュンドアンとデ・ブライネである。前半にもギュンドアンどうする問題が出ていたエヴァートンだが、アンチェロッティはそこを捨て、代わりにそこからゴールに直結しないようにするという選択をした。

 結果から言えば、この選択が勝敗を分けることになる。1点目2点目ともにシティの2ボラの狭いパスコースをつく楔のパスから生まれている。不意打ちのような楔のパスにより、エヴァートンはエリア内で受けたシティの選手に「時間」と「スペース」共に与えてしまった。特に2点目のデ・ブライネは外と見せかけての中というブスケツがやりそうな体の使い方からパスを出した。エヴァートンの2列目選手は完全に騙されてしまった。

ビルドアップにおけるエヴァートンの修正

画像7

 後半に行われた442への修正は、守備における修正だけではなく、ビルドアップにおける修正も行われている。前半は3バックでシティの3トップに対し数的同数だったエヴァートン。それを4バックにすることで数的優位を確保した。マフレズとフォーデンは誰にアプローチをかければ?となって、何回か走らされていた印象。前半できなかった前進をようやく行うことができた。

 しかし、そこから先どうする?となってしまうのがこの試合のエヴァートン。エヴァートンは2ボラの重心が低くなってしまい、前進後の手段はSHかCFの個の能力で戦うしかないという状況に陥る。その状況を今すぐに打開できるかって言われるとできないので、結局個の能力で打ち勝つべくウォルコットとケーンを投入したものの、共に微妙な振る舞い。チャンスメイクはできなかったといっても過言ではないだろう。

 シティが早い時間に2得点してからはシティが再びボールを持ち始めるも、ミスも少なからず出るようになり、オープンな展開に。エヴァートンはブラボのミスから1点を返したが、打開のきっかけを作り切れずに試合は終了。新年の幕開けとなるリーグ戦はホームのシティの勝利で幕を閉じた。

あとがき

 シェフィールド・ユナイテッド戦の後半で採用した3421をそのまま継続したシティ。この試合のエヴァートンは、シェフィールド・ユナイテッドやウルブズほど5バックの守備の強度は高くなかったものの、5バックを相手にする場合にわざわざ5枚のバックに対して6枚の攻撃陣を置いて数的優位を確保しなくても、質的優位で攻撃力は担保されており、カウンター対策と攻撃力の両面のバランスの取れたフォーメーションであると感じた。

 その一方で、守備時の陣形には疑問が残る。後半のように4バックに対して簡単に前進を許してしまっては、シティの組織守備の脆さが簡単に出てしまいかねないように思えるし、前線の守備負担も極めて大きい。カンセロやメンディといった守備力がまだ足りない選手を人数でカバーできるという利点が5バックにはある一方で、簡単に前進を許して後手に回ってしまう以上、人数でカバー仕切れない部分は相手の個の力で殴られかねない気がした。そういう面も含めれば、この3バックはシティというチームの最適解となるフォーメーションではなく、あくまでも5バックで引いて守る相手に対しての一つの手段に過ぎないのだ、と実感した試合であった。


トップ画像引用元
https://twitter.com/ManCity/status/1212425649002029059?s=20

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

5
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。