大量の蟲

大量の蛆、大量の蜚蠊、大量の小蝿、大量の蚊、大量の壁蝨、大量の蠕虫、大量の羽蟻、大量の白蟻、大量の死番虫、大量の紙魚、大量の蜘蛛、大量の蚰蜒、大量の百足、大量の天牛、大量の蝗虫、大量の椿象、大量の蛞蝓、大量の竈馬、大量の便所虫、大量の虱、大量の虻、大量の蜂、大量の馬陸、大量の腕虫、これらがかさかさ、ごそごろ、ぐにょぐにょ、ぐにゅぐにゅ、ぺたぺた、ぶんぶん、ばちばち、きーきーと蠢動するおどろおどろしい部屋で、ぞわぞわしながら、眠ることを、想像してみてほしい。大量の蛆は穴という穴へ入り込む、大量の蜚蠊は忙しなく部屋中を動き回る、大量の蠕虫は身体中を這う、大量の蜂は毒針を皮膚へ食い込ませる、大量の椿象はひたすら悪臭を撒く、大量の便所虫が口へ入ってくる。考えるだけでおぞましい、気分が悪くなる。私は、部屋に出た蜚蠊をただ一匹逃すだけで、その晩は、大量の蟲の部屋で眠ることを空想しなくてはならない。この絶対に覆すことのできない悪癖を避けるには、すべての害虫を殺戮するか、部屋を徹底して清潔に保つかの二つに一つだが、もちろん後者の方が格段に楽であろう。あぁ、面倒くさい。

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