企業で評価される人とはどんな人か

　君は、将来どんな大人になりたいか考えたことはありますか。なるようにしかならないし、今聞かれても分からないとも思います。お母さんもそうでした。将来つきたい職業やどんなことをして過ごしたいか、社会とどうかかわっていたいか、どんなチャレンジをしたいかなど、ぼんやりしていました。面白いことに、学生時代、勉強熱心でクラブ活動でも生徒会活動でも頑張っていた友人が、必ずしも社会に出てからも評価されるとは限らないことが分かりました。社会人になってからも研鑽を怠らず、MBAや各種資格を保持しているのにもかかわらず、なぜか会社ではさほど評価されていない人も沢山いることも分かりました。今から20年前、行動力があり、鋭い意見の持ち主として評判のあった人がお母さんの会社にいました。会議中、その方が発言すると、どういうわけか皆が納得し、首を縦に振ってしまうような人でしたが、20年経ってみると、その方に対する評判はずいぶん違ったものになっていました。一方で、時代が変わっても、どんな組織であっても評価される人に共通した要素が幾つかあることも分かりました。これはあくまでもお母さんの主観ですけどね。今日はその要素を綴りたいと思います。
　その要素の1つ目が「誠実さ」です。嘘をつかない、ごまかさない、正直に話すことです。こういう人は、企業内で信用されるだけでなく、お客様からも信頼を寄せられます。特に自分の失敗や悪い話しは隠したがりますし、悪い報告は後回しにしたくなります。しかし、企業においてそれは命取りになり、企業のブランドを毀損してしまうこともあります。”悪いことこそ素早く報告する”ことが浸透されていなければならないのです。ぜひ、ここは早いうちに身につけられるとよいかと思います。
　２つめ目の要素は「感情的にならない」という特性だと思っています。生まれてから亡くなるまで、人はこの「感情」とどう付き合うかが試されます。人にはセルフイメージ（自己概念）があり、そのセルフイメージが作用して思考ができあがり、思考が感情を芽生えさせ、感情が行動に結びつき、行動が結果を生むことになります。如何に感情に振り回されないか、冷静に客観的に対処するかがビジネスにおいて重要なことは言うまでもありません。お母さんはこれまで数々の感情的になったビジネスパーソンを見てきました。多くの感情的になった方々は、自尊心を傷つけられて（まるで幼児のように）相応しくない言動や相応しくない行動をとっていました。これはとても残念なものです。ぜひ、自分の感情のコントロールができる人間になってもらいたいと心から思います。
　3つ目は「成果を出している」です。社内で、『あの人なら結果も出しているので、あのポジションにつくのは仕方がない』と思わせしめるものがそれです。これがないと「なぜ、あの人があのポジションなの？納得がいかない」という雰囲気を作ってしまいます。そのためにも成果をきちんと出し、その成果をきちんと説明することが必要だと思います。聖人君主のような方々は、自分の成果を説明することに躊躇してしまうかもしれませんが、必要な行為だと割り切って、謙虚に事実を説明することはすべきと考えます。
　４つ目は「数字に強い」ことです。ビジネスにおいては、売上、利益他各種指標で事業は評価されます。よって、数字に強いことは必須であるように思います。パフォーマンスにおいても定量的に表現する必要があるため（アカウンタビリティが高い）、総じて、強いに越したことはありません。素養としてのアカウンティング知識、パフォーマンス評価に関わる各種理論は学んでおくとよいと思います。
　５つ目は「行動力」です。口先だけの人に誰もついていきません。やはり行動が伴わない人は評価されませんし、行動が全てとも言えます。
　６つ目は「慕われる能力」です。人が人を動かす上で大切なのは理屈以上に感情になります。この人のためだったら働きたい、なんとかしたいと思わせられる人になることが理想です。無論、恐怖政治というやり方も無くはないのでしょうが、その場合、必ずやどこかで歪がきます。また、仕組化・ルール化して強制的に従わせることも方法論としてはあると思いますが、ここにも限界があるように思います。では、人から慕われるにはどうしたらよいか。それは1番目の誠実さであり、2番目の感情的にならないことに加えて、「愛情があること」なんだと思います。お客様に対してもそうですし、チームメンバーに対しても心から親身になること。共に歩む姿勢や懐の深さ、優しさを持つことが大切です。
　さて、ここまで記してきましたが、一度に全てができるようにはなりません。長い時間をかけて、一歩ずつ培っていけばいいと思います。様々な体験を通じて人は成熟していきます。悲しみも苦しみも辛いですが、経験した分、優しくなれます。そうして、マイナスもプラスに変えて、人間力は増していきます。ただ、ここに記した６つのことはぜひ意識して毎日を過ごしてみてください。きっと、あなたの成長スピードを高めていくことになると思います。