イベント講演の心遣い。メッセージを届けるための現場のナレッジ
「Money Forward Design Advent Calendar 2024」7日目は、toBのBX領域を担当しているosamuがお送りします。
はじめに
今年はどんなテーマで書こうかな〜と1年を振り返ったのですが、最近イベントやセミナーがオフラインに戻ってきたと思います(個人的にはとても嬉しい)。
ということは、講演に関するナレッジも需要が高まってきたんじゃないかな〜?「よし、書くか!」という流れで、筆を走らせています。
届け方=コミュニケーションデザイン
イベント講演におけるナレッジには、オーディエンスに「届けるため」のナレッジがたくさん詰まっています。
どんな見せ方・言葉遣いだと理解しやすいんだろう?
どんなことに配慮すると見てて疲れにくいんだろう?
どんな演出だと楽しんでもらえるんだろう?
つまり、本質は「どうしたら、メッセージが最も伝わるか?」を考えることです。そこで気づいたんですよね。
これって、めっちゃコミュニケーションデザインじゃん!
ということで、今回は、これまでのわたしの登壇経験やイベント参加経験をコミュニケーションデザインの視点で紐解き、ナレッジとしてまとめてみました。
とはいえ、全てを語ると膨大な量になってしまうので、今回は講演現場にフォーカスしてお話します。(ストーリーなど、内容に関するナレッジは、また別の機会に!)
※また、講演にもいろんな種類・目的などがありますので「考え方の1つ」としてお読みいただければと思います。
では、本題に行きましょう!
こんな経験はありませんか?
みなさんは、イベントやセミナーに参加・登壇されたことはありますか?
きっとあると思います。 あるからこそ、タイトルが気になって読んでくださっているんだと信じています。
そう、わたしは今、あなたを信じています(笑)。
さてさて、イベントやセミナーのような講演の場に参加された方の中には、こんな経験はないでしょうか?
スライドがよく見えない
よく聞こえなかった
なんか話に集中できなかった
機材トラブルで、スピーチを聞く時間が減っちゃった
せっかく時間を割いて参加したのに、こういった体験だと残念な気持ちになっちゃいますよね。
もちろん、運営側も同じ気持ちです。
せっかく話を聞くために時間を捻出してくださったり、遠くまで足を運んでくださったりする方に、「来て良かった〜」と思ってもらいたいのが心情でしょう。
では、どんなところにナレッジが潜んでいるのか?
たくさんあるのですが、今日は厳選して以下3つのテーマを軸にご紹介しようと思います。
①講演環境への最適化
②スピーカーのパフォーマンスの最大化
③運営からの心遣い
では、1つずつ見ていきましょう!
①講演環境への最適化
イベントやセミナーといっても、会場の広さから機材設備まで、現場の環境は実にさまざまです。
まずは、現場環境に合わせた「届け方」をご紹介します。
講演にもいろんな種類がある
講演方法には、大きく分けて3つのタイプがあります。
オンライン
オフライン
ハイブリッド
特にオフラインの場合、会場の広さや、スクリーンの大きさ、オーディエンスとの距離などが会場によって全く異なり、それぞれの違いや条件に合わせて、見せ方も変える必要があります。
スクリーンがどのくらい見えるのか
この「会場の違い」で気をつけるべきポイントは「スクリーンがどのくらい見えるのか」です。
こういった「よくある声」は、主にスライドを会場に合わせて最適化できていないために起こっています。
最適化するには、スライドを制作するときに、以下2点を重点的に環境に合わせてアレンジしましょう。
文字が読める大きさ
スライドが隠れない表示領域(セーフティーゾーン)
具体的には、以下のような対応が良いと思います。
会場の形が奥に伸びている会場であれば、文字サイズを大きめにしたり、要素を高い位置に配置したりして、後ろの席の人でも見えるような工夫を心がけよう
前の人の頭でスライドが隠れてしまうなら、隠れないセーフティゾーンを設計しよう
暗い会場では、スライドのベースカラーは暗めに
イベントによっては、半日かけて複数のセッションを分けて実施するケースもあります。会場によっては、セッション中は会場の照明を下げて、ステージに集中しやすいような演出をします。
この場合、薄暗い空間で数時間も眩しいスライドを見続けるのは、目に負担がかかります(眩しいよ〜って)。
スライドのベースカラーを暗めにして、目の負担を減らしてあげると良いと思います。
番外編:プレゼン資料のバックアップ
会場のネット環境は不安定なことがあります。最近は、Figmaなどのクラウド上のスライドを使ってプレゼンする方も多いと思いますが、通信が不安定でモタつくことがあります。
最悪なのは、パソコンが故障して資料が出せないときです(絶対に起きないとは、言い切れません)。パソコンは代替機を運営や他の登壇者にお借りすることも可能ですが、プレゼン資料はどうにもなりません。
特に有料イベントなどで費用が発生している場合は、参加者のみならず、主催にも迷惑がかかってしまいます。
プレゼン資料は、バックアップとしてフラッシュメモリーなどに保存をすることを強くお勧めします(会場に関係なく)。
②スピーカーのパフォーマンスの最大化
続いては、スピーカーのパフォーマンスについてです。
パフォーマンスといっても「道化になりましょう」とか、そーゆー話ではないです(笑)。
どんな心遣いをすると、オーディエンスの集中力を高く保ったまま進行できるのかについて、現場環境や機材の視点からご紹介します。
マイクの使い方
主にオフラインでの話になりますが、マイクの使い方を覚えておくとパフォーマンスが上がり、正しく使うことで「聞こえなかった」などを防いで、オーディエンスにちゃんと届けることができます。
①オン・マイクで(=マイクを近づけて)喋ろう
オーディエンスにとっては、安定した音量は集中力を保つのにとても重要です。
ハンドマイクは、口から1-5cm程度が最適な距離と言われていて、この状態を「オン・マイク」といいます(マイクの電源のONではないです)。
マイクは口から離すと、音量が小さくなってしまいます。音響の設定で調整することもできますが、雑音まで拾いやすくなってしまったり、ハウリングしやすくなってしまいます。
オン・マイクを意識しましょう!
②マイクは正しい位置を握ろう
マイクの先端(球状部分)は握らないようにしましょう。球状部分を握ると、音がこもったり、ハウリングが発生しやすくなります。
また、ワイヤレスマイクの場合、最下部がアンテナになっていることが多いので、ここを握ると音が途切れやすくなってしまいます。
マイクは正しい位置を握りましょう!
③スクリーンに向かって喋らない
マイクには「指向性」があります。音を拾う方向ですね。
ついついスクリーンの方を向いてしまいがちですが、スクリーンを見上げる際にマイクから口が離れてしまうので、音量が下がって聞き取りにくくなってしまいます(特に固定マイクの場合は注意が必要です)。
聞き手にとって聞きやすいトークのために、正しいマイクの使い方を心がけましょう。
視聴ノイズを減らす
スピーカーのスライドをみるとき、スライド以外の情報が気になってしまう人はいませんか?
他人のブックマークバーなんて「どんな分類をしてるんだろう?わくわく」って、気になってしょうがないですよねぇ(笑)
(個人の感想なので、異論は認める)
これらについては、スピーチ情報として必要か不要かで言えば、不要でしょう。
スピーチの集中力を下げるノイズは少ない方が良いので、非表示や通知OFFにして参加者がスピーチに集中できるようにしましょう。
特に、Slackの通知は会社のセキュリティに抵触してしまうでしょうから、通知は必ずOFFにしましょう!(通知内容次第では、戦慄のSlack事故になります)
録画あり/なしで情報量をアレンジ
主にオンラインの講演の場合ですが、講演内容を録画し、後日アーカイブとして振り返れるケースがあります(オフラインでも収録があり、アーカイブが残る場合もあります)。
ちょっと高度なテクニックかもしれませんが、この録画あり/なしで「登壇の情報量をアレンジする」という手法があります。
その場限りのオフラインイベントの場合、スピーカーはオーディエンスがついてこれるスピードで進行する必要があります。
しかし、録画がある場合は「後で振り返ればよい」と割り切ることができます。
当日のキャッチアップで溢れてしまっても、あとでゆっくり見直すことができるので、スピーチ内容を完璧に理解してもらうことを前提にしなくて済みます。その分、内容や情報量を充実させて、少しでも多くの学びを持ち帰れるようにする、という発想です。
限りある短い時間の中で情報量をより充実させるために「話すスピード」を早めたり、「深く理解するまでの間」を短くするといった、時間の使い方を意図的にアレンジする手法として、ご紹介しました。
言ったと伝わったは違う
1つだけ、現場環境とは違う話をさせてください。
ちょっとした例え話です。
みなさんは「CxO」という言葉を耳にしたことはありませんか?CEO、CFO、CTO…など、企業の最高位の役員を指すものですね。
ところで、このCxOという省略された言葉。みなさんは、それぞれすぐに正しく理解できますか?正直なところ、僕はわからないことが多いです(たくさんあって覚えきれない)。
CxOの省略に限らず、こういった「言ったけど伝わっていない」は、講演の場ではもったいないな、と思います。
その点、弊社CDO(Chief Design Officer)のセルジオさんは、社内外の講演で自己紹介をする際には、必ず「Chief Design Officerのセルジオです」と、略さずに自己紹介されています。
さまざまなバックグラウンドの方の前で講演することが多い方なので、正しく伝わるように意図的に略さないようにしているんだと、勝手に思っています(ご本人に確認したわけではないです笑)。
どんなバックグラウンドの人が集まっている場所なのか?
参加者のバックグラウンドに合わせたワードをチョイスすることも、立派な講演の心遣いであり、コミュニケーションデザインだと思っています。
ここまでは、スピーカーやオーディエンスを軸にご紹介させていただきました。最後に、運営目線での「心遣い」についてご紹介しようと思います。
③運営からの心遣い
よくある開演直前に起きる土壇場のバタバタとして、以下のようなことがあります。
今回ご紹介した内容と合わせて振り返ると、準備段階に必要な情報がたくさんあることがご理解いただけたのではないでしょうか?
事前に押さえておきたい情報
会場の見取り図
収容人数
スクリーンサイズ
プロジェクターの解像度
講演台サイズ
映像・音響の出力端子
マイク(ハンドマイク、ヘッドセットなど)
ネット回線(有線/無線)
登壇に慣れている方(著名な方とか)であれば、この辺りは運営よりも経験豊富で詳しいこともあります。
運営としては、ご登壇いただいた方に「この運営ならまた来たいな!」と思ってもらえるようにするためにも、事前アナウンスで情報提供するなど、可能な限りの心遣いができると良いと思います。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございます。
どうやって機材や環境を利活用すれば、スピーカーのパフォーマンスを向上できるのか?オーディエンスの集中力を削がないパフォーマンスができるのか?について、わたしなりの視点でご紹介させていただきました。
そして、こういった「どうやったら最も伝わるのか?」を考え抜くコミュニケーションデザインの視点は、さまざまなところで活用できるんだなぁ、と改めて誇らしい気持ちになりました。
少しでもみなさんのお役に立てば幸いです。
さて、明日のアドベントカレンダーはendo maoさんです。
引き続き、お楽しみいただければと思います!