RBMK-1000 MWe Simulator @ 2020-07-17

【良】最初に断っておく。本作は何をどう間違ってもゲームではない。シミュレータである。本作で問題なくチェルノブイリ原発を稼働させる事ができたなら、あなたは本物のチェルノブイリ原発を問題なく稼働させることができるだろう。そういう存在だ。すなわち100ページに渡るPDFマニュアルを熟読し熟知した上で操作しなければ、原子炉をメルトダウンさせるところか稼働状態にすることさえ困難だろう。だが、それが面白い。

長所
・異常にリアル。多分、世界中どこを探しても、チェルノブイリ原発をここまで完璧にシミュレートした存在は地上に存在しないと思われる。このシミュレーターで定格出力を達成できたら東電に就職して原発を再稼働できるぐらいには原発に詳しくなるだろう。
・原発がどうやって運営されているか、電気を発電しているかが学べる。夏休みの学校の自由研究にどうぞ。小学生に理解できる内容と思えないが。
・無料だ。ダウンロード時に名前とメアドを聞かれるが、デタラメに入れてもダウンロードできる。

短所
・間違ってもゲームではない。難易度設定とかチュートリアルとかそういうユーザーが楽しく遊ぶためのおもてなし機能は一切何も用意されていない。上記の紹介動画を見てほんの僅かでも「面白そう」と思わなかったらその場でスルーするべきだ。おそらく全人類の0.1%程度しか面白いと思える変人は居ないと思われる。
・異常に難しい。まともに原子炉を稼働開始することすらできない。100ページ以上あるPDFマニュアルを熟読し、原子炉すべての構成要素についての知識がなければ全く何をやっているのか理解できない。
・もともとWindows 3.1用のシミュレータだったらしく、いくらなんでも画面表示も操作系も何もかもが古すぎる。そして字が小さすぎる。老眼の年寄には辛い。

あまりにもニッチすぎるのだが、そのニッチが好きな人にはたまらない。ある意味Microsoft Flight Simulatorでボーイング747を飛ばすのと同じような体験に近い。すなわちフライトマニュアルに従ってスイッチをポチポチして、計器とにらめっこして、問題が発生したら対処する、そう、システムの一部となる体験というか、そういう体験だ。普通の人類には絶対におすすめしないが、一部の変な性癖のおじさんには唯一無二の存在だろう。


以下蛇足

私はTwitterなんぞとっくの昔にやめてしまったのだが、代わりに私の友人がこのような物を見つけてきてくれた。

白状するが、私はこういうシミュレータが好きで好きでたまらないのだ。それに自慢じゃないが、私はこう見えてもウィキペデイアで原発のしくみを調べたことがある程度には原発に詳しいのだ。そもそも現実世界でだいたいちゃんと動いているのだから(歴史上2~3回ほど派手にぶっ壊れたこともあるが)私にだって問題なく動かせるはずだ。そもそもメルトダウンなんて冷却水が喪失したり自動スクラムをオフにしたりしなければ発生するわけがない。楽勝だ。早速やってみよう。

スクリーンショット (9)

あかん、無理、待って。老人には字が小さすぎる。

スクリーンショット (10)

それでもマニュアルを片手に四苦八苦しながら原子炉を臨界状態にすることに成功した!何?どこがさっきの画面と変わったのかって?よく見るがいい、Thermal Powerが9.6%にまで上昇し、Neutron Fluxも安定しているではないか。あとは蒸気タービンを稼働させるだけだ!

スクリーンショット (11)

しかしここに来て大問題が!何故か蒸気タービンの稼働スイッチを入れてもタービンが回りださずエラーが出てしまう。何度繰り返してもダメだ。そうこうしている間に次の問題が発生、復水器の隣についているDeaerator(脱気装置)のリザーブタンクがみるみる間に減っていき空になってしまったのだ。あれよあれよという間に原子炉が自動的にスクラムに入り停止。何が起きているのかさっぱりわからない。どこかのバルブが閉じているのだろうか、逆に配管から水が漏れているのだろうか?どこを見ても問題がさっぱりわからない。くそ、無念だ。残念ながら現実世界の東電の作業員は私よりも有能らしい。原発事故と言うとメルトダウンのような派手な災害を思い浮かべる人が多いだろうが、現実に起きる問題はもっと地味なものなのだ。それが体感できただけでもなかなか面白かった。