Noita - Version 1.0 @ 2020-10-16

【秀】昨年の私的GotYに輝いた超新星は、一年後の正式リリースで再び私を驚愕させてくれることになった。一年前の地点ですでにゲームとして完成されており、もはや一体ここから何が進化できるのかと高をくくっていたのだ。とんでもない。当時Noitaを買ってクリアした人も今すぐ再度インストールして1からプレイし直すべきだ、再び貴方にフレッシュな未知の体験を与えてくれるだろう。

まだ買ってない人?よもやそんな人間がここに存在するわけがないな?20%引の1640円を、こんな十年に一度の神ゲーに支払えないような人間が。

基本的な要素は以前のレビューのときから変わっていないため、基本については以前の記事を参照されたい。今回は正式リリースで何が一体私を驚かせてくれたのかについて注目したい。

長所
・正式リリース以前でも十分すぎるほど沢山存在したPerkとSpellが、最低でも2倍、いや3倍ぐらいに増えている。以前本作をクリアした人でも「何だこのスペルは!」と驚くことしきりだろう。すでに本作をやり尽くしたと思っている人でも再度楽しめるほどにはあらゆる要素が変わっていて、例えばHeartが固定で置いてある隠し部屋の配置やギミックまでもが変更されている。コレまでと同じ感覚で遊ぶと痛い目に会う。
・細かい改善点が無数に存在する。例えばスタート時の装備がある程度ランダムになっていたりとか、ダンジョン内のバイオームがランダムになっていて普段とは違う敵が存在する場合があるだとか。私の中で最も面白い変更点だったのがポーションをインベントリから直接飲み込むことができるようになった点だ(これまではVampirismのPerkを取って血の上でしゃがむと血を飲み込むことができた)。いつの間にやらこの液体を飲むシステムが進化していて、液体によっては飲む場合と浸かる場合で効果が別々になっている。例えばBerserkeriumのポーションを飲み込めば継続的にバーサーカーの効果が得られるようになったし、Ambrosiaのポーションは飲み込んでも食あたりでゲロ吐き出すだけだが直接液体に浸ると無敵になることができる。これのおかげで以前よりもポーションが使いやすくなり面白みと有用性が増した。胃袋の中身と容量も追加されており、以前はVampirismで無限に血を飲んで回復できたのだが、今では腹一杯になるとそれ以上飲めなくなるため以前ほどの凶悪さが失われており、バランスが良くなっている。
・本作に無数に用意された隠し要素の豊かさと、それらがもたらす驚きは、これまでに存在したあらゆるゲームの中でも間違いなく上位に位置する秀逸さだ。実は本作には、本作の本質はローグライトではなくオープンワールドなのでは、と思われるような隠し要素が存在する。詳しくは述べないが、本作は1回のランで10時間でも20時間でも、いやその気になれば一生死なないで遊び続けることが出来る方法が存在するのだ。そしておそらく貴方がこのゲームを購入して最初に想像したよりもこの世界は広いのである。多分、10倍は広い。いや、100倍は広いかもしれない。冗談でもなんでも無く、本当に、100倍は広いかもしれない。どうぞ自らの想像の限界を超えて欲しい。無数に存在するスペルと杖を組み合わせ、世界の限界を文字通り破壊するような魔法の杖を作り上げてほしい。そうして初めて、どれほど今まで自分たちが遊んでいたラスボスを倒すまでの道のりが狭い世界だったのか思い知ることになるのである。そこまで体験して初めて「何だこの神ゲーは」と真に驚愕することができる。

短所
・以前の記事にも書いたのだが、本作にはアンロック要素やプログレス要素は無い。正式リリースでも追加されなかった。つまりゲームを繰り返し遊んでいればどんどんアンロック要素が増えていきプレイヤーが強化されていつかは必ずゴールにたどり着けるという類のゲームではない。確かに「発見したPerk / Spell / Enemy / Secret」を一覧で表示するカタログ的な画面が追加されてこれまでのプログレスを振り返ることができるようになったのは大きなプラスなのだが、しかし基本的に本作をクリアするためには貴方自身の知識と経験とスキルだけが頼りになる。もし貴方がこの手のアクションゲームが苦手で何度プレイしても上達の限界に達してしまったのであれば、何回死に続けてもゴールにたどり着けない恐れがあるのだ。これは同じ死を前提とするローグライトでも先日レビューしたHadesとは大きく異なる点だ。この点において、本作はプレイする人を選ぶ。
・上記と関連するのだが、本作の難易度は高い。とにかく、高い。比較的に本作について熟知している私でも、いともたやすく死ぬ。50ランに1回クリアできれば上々、というぐらいにはクリアできない。
・1回のランが基本的に長い。普通にプレイしても長い。最低でも1時間以上は掛かるだろう。長所で述べたオープンワールド的な楽しみ方をするとなるとさらに1回のランが長くなるだろう。死ぬかラスボスを倒すまで遊ぶというより、適当にキリのいいところで切り上げなければならない。
・本作の隠し要素は確かに豊富で秀逸であるが、しかし、おそらく普通にプレイしていれば全プレイヤー人口のうち1%にも満たない人間だけが体験できるようなものだ。ほとんどどこにも何のヒントもない。MODの力に頼るか、ネタバレを調べるか、文字通りあらゆる場所をくまなく、常識を捨てて血眼で探し回らないかぎり、たどり着くことはできない。余りにも人を選んでしまうと思っている。例えるなら昭和のファミコンのゲームの隠し要素のようなものだ。こんなもん分かるかボケ!と。

私が今年の私的GotY候補だと睨んでいるHadesとは奇しくも同じローグライトジャンルで一致しているのだが、HadesとNoitaでは面白さの方向性がまるで異なるのが興味深い。Hadesはスピーディーであり、繰り返す死をプラスに買え、ストーリーのレールに乗せて、複数のプログレス要素のおかげで誰でもクリアできるように仕立て上げたゲームであり、一方のNoitaは死を恐れながら一歩一歩慎重にダンジョンに潜り、無限の可能性を秘めたピクセルシミュレートの世界と魔法の杖でこれまでに見たこともないほど自由に遊ぶことができるゲームだ。レールの上に載せられた面白さと、自由に遊ぶ面白さ、どちらにも甲乙付けがたい良さがある。

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最初の鉱山バイオームにこんな見慣れない茨が。この茨は急速に成長してあたりを塞いでくるし、蕾を破壊すると毒をばらまいてとても厄介だ。一度クリアしたことがある猛者でも全く新鮮に楽しめる。

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Holy Mountainもいつの間にやらこんなにきれいになって・・・ちなみに少しでも破壊したらGodがキレだすのは相変わらず。

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Noita界隈で最も有名な隠し部屋であるこのHeartがおいてあるOrb Roomも見た目が大幅に変化。しかもここまでたどり着くための道が変わっている。何より・・・

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しめしめHeart丸儲け、と帰路につくとこのザマである。ブラックホールを持ち込まなかったあなたが悪い。そこで頓死してくれたまえ。このように隠しギミックまで全て手が入っているようで、Early Accessでの体験を一度リセットして学び直さなければならないようだ。面白い。