ジョブ理論に関する備忘録的な
マーケティングをやってきた人からすれば今さらかもしれないけれど、「ジョブ理論」の本を読んだ(まだ読んでおります)。
「ジョブ」というのは「ある特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩」と定義されている。
こう聞くと、なんだかややこしいことを言っているように思えるが、要するに、今どうしたいか、どうなりたいか、ということである(要しすぎか)。
人が商品やサービスを購入するのは、この「ジョブ」を達成するためであり、ジョブをもとに人が何を買って何を買わないかを説明するのがジョブ理論である。
今回は、このジョブ理論の最も基本となる部分の備忘録的な内容が大半になるので、既に知っている方には「知ってます」という以外の感想が生まれない記事になることだろう。
顧客の数だけジョブがある
ジョブ理論について、お腹が空いたので、食べ物で例えることにしよう(余計にお腹が空きそうである)。
マクドナルドで昼食をとった人がいたとする。
「この人がどんな課題を解決したくて、マクドナルドで商品を買ったのか」を導き出すのが、ジョブ理論の考え方だ。
この観点で、顧客を一人ひとりを分析すると、いろいろな背景が見えてくる。
〈Aさんのケース〉
毎日、会社帰りに飲み歩くのを楽しみにしているAさん。
夜にお金を使うので、昼は出費を抑えたい。
でも、朝が早い会社なので、お昼休みにはお腹ペコペコ。
安くてボリュームもあるランチを会社の周りで探したら……マックだ!
つまり「会社の近くで、出費を抑えつつ空腹を満たしたい」がAさんのジョブ。
ということは、マクドナルドがAさんに対して訴求するべきメッセージは「お手頃価格でお腹いっぱいに!」ということになる。
ところが、これが違う人になると、ジョブも全く変わってくる。
〈Bさんのケース〉
地方に出張に出てきたBさん。
出張先に行く前に、軽く食事を済ませてクライアントにメールをしておきたい。
ただ、残念なことに今日はネット環境がない。
自分の知らない土地で、ネットを利用できるところといえば……マックだ!
Bさんの場合は、「軽食をとりながら、wi-fiを利用したい」がジョブとなる。
訴求ポイントは「(ほとんど)全店でwi-fi環境完備!」である。
ほかにも、入院していて質素な食事が続いていたCさんは「とにかくジャンクなものが食べたい! ジャンクといえばマックだ!」となっているかもしれないし、ハライチのファンであるDさんは「この前のハライチのラジオでマックの話題が出たからマックが食べたくなった!」と思っているかもしれない。
細かく分析していくと、顧客の数だけジョブがあると言える。
その改良は、顧客のジョブに即しているか
この話の肝は、商品やサービスの機能面だけを追い求めていても顧客を取り込めるとは限らない、ということである。
仮にマックがここから徹底的に味を追求したとする。(してると思うけど、もっと極端に味の追求に力を注いだとしよう)
もちろん、「マックがさらにおいしくなった」という訴求を魅力に感じて店を訪れる人は出てくるだろう。
ところが、上述のA〜Dの人たちにどれだけそれを訴えても、マックを訪れる理由にはならない。
※ここでいう「A〜Dの人たち」というのは、上記の状況も含めて指し示す。
なぜなら、マクドナルドのハンバーガーがさらにおいしくなることは、A〜Dの人たちのジョブを解決することにつながらないからだ。
A〜Dの人たちの立場に立ったとき、マクドナルドの競合が実に様々であるということもわかってもらえると思う。
ここまで聞くと、当たり前のことのように聞こえるかもしれない。
しかし、多くの企業は実はこれが理解できていない、と提唱者のクリステンセンは指摘する。
ものすごく簡略化すると、商品やサービスをつくったり、改良したり上で、企業は特に機能面ばかりに目が行きがち、ということだ。
掃除機なら吸引力をいかにして上げるか、食品ならどれだけおいしくするか、洗剤ならどれだけ汚れが落ちるか、といった分だ。
そうした改良は、決して間違っているわけでも、無駄というわけではない。
ただ、顧客の本当のジョブを把握した上で、商品(材料の調達から生産、流通、販売、アフターフォローまですべて含め)を設計しているか、ということだ。
とりわけ、規模が大きくなって部門が細分化した組織が、自部門の仕事の質を上げようとすることによって、結果的に企業全体で見るとジョブを見失った活動になっているケースが多い。
ジョブの種類には機能面のほかに感情、社会性といった側面がある話だったりとか、ジョブをどう見つけていくか、という話もあるけれど、それはまたいつかのネタにとっておくことにして、今回はここらで結びに入ろう。
自分になかった観点が与えてくれる気づき
顧客目線で考えることが大切だと、ビジネスに携わる人ならきっと一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。
そして、それに対して「そりゃそうだ」と思っていることだろう。
ただ、それは僕たちが思っている以上に難しくて、ジョブ理論はそれを実践するための大きなヒントになる考え方になる。
「顧客目線で考えろ」と言われたときにやりがちなのが「この商品はどうしたら顧客にとって魅力的になるだろうか」とか「顧客はこの商品に求めていることは何か」と考えることである。
これもたぶん間違ってはいないのだろうが、ジョブの概念を認識することで、まだまだこの考え方の軸が商品にある(商品ありき)と気づかせられる。
「顧客は、どんな問題を解決したくて商品を買うのか」
この目線を持てるかどうか、ここがポイントになってくる。
まずは、あなたが扱っている商品を買ったお客さんを観察してみよう。
もし聞けるなら、聞いてみるといい。
さらには、競合企業の商品や、一見すると全く無関係の業界の商品を買うときのジョブを探ってみるのも面白そうだ。
ジョブ理論自体は3年ほど前に提唱されたものだけれど、決して新しいマーケティングのノウハウでもツールでもなく、考え方というか、概念的なものにすぎない。
それでも、こうした観点が加わるだけで、視界が大きく広がる可能性を秘めていると思うと、人の思考ってなんかすげぇなぁと、思わず浅い感想を漏らしたくもなる。
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