マガジンのカバー画像

詩作まとめ

29
詩たち。
運営しているクリエイター

2022年2月の記事一覧

『踊子』

神様ある日 意を決して

宇宙のとおくへ 引っ越すと

胸いっぱいに 風を吸う

その目はとても 嬉しそう

「星々の 砕ける音色に合わせつつ 
ひねもす踊り明かそうか!」

✳︎✳︎

踊りはじめて 幾億年

なんだか 悲しくなってきて

その目と髪と 脇の下

涙と汗が 飛び散って

万物全てを 巻き込んで

風船みたいに 飛んでった

後に残るは 踊子と

絶対零度の ボイドだけ

踊れば 

もっとみる

『ほころび』

子どもたちの まつりのなかで

いっそう かまびすしく吼えた!

君はいくぶん 優しくも

キチンとナイフを 隠してた!

ときどき 闇夜にまじっては

おまわりさんと 仲直り

きょうはどこで 寝るのかな

あしたは何を 視るのかな

あれからねころび 約9回

みんなとおしゃべり 覚えてからは

君はずいぶん まんまるだ!

僕らのほころび 数えきれない

このまま直さず いきてくよー!

『8号室』

わたしは ウソをつきました

ミナモにむかって コッソリと

いつしかウソが 糸を縫い

わたしは サナギになりました

ところが 膜があつくって

冬をも越せる あたたかさ

✳︎✳︎

そんなサナギは 息絶えた

✳︎

わたしの ちいさなポケットで

きらきら輝く みなさまへ

ーーこの部屋で あげたウブ声

いつまでも 憶えていてください

わたしは 忘れっぽいですが

おもい出すのは 上

もっとみる

『虐殺』

もしもし、そこの綿帽子。

おれを焼いちゃあくれないか。

生憎さ、銀貨二枚とホーロー瓶しか持ってないが、

アザラシと、こいつで一杯やってくれ。

――休みの夜の、気晴らしさ。



煮るのはいやだ、焼いてくれ。

煮るのはいやだ、焼いてくれ。

だいじに残さず、捨ててくれ。

そっくりそのまま、捨ててくれ。

綿帽子。

『のっぺらなだれ』

南に帰った わたしを追って

のっぺら雪崩が つららをつり下げ

歳末の街を 覆い尽くすの

あなたの顔が 見たくなって

西へ 戻ってきたのでしょう

怯えてちぢんだ おじぎ草

摘み取り逃げてきたんだよ

北に向かった わたしを抱いた

どっかのだれかが うずらのお家で

最後の景色を 飾りあげるの

あなたの顔が 見たくなくて

東へ 戻ってゆくのでしょう

抱えきれない お土産を

あたた

もっとみる

『ムーン・ライト』

あした着る衣装の色を、
どうしようかと迷っていたら。

“『コペンハーゲン』を観て、死のう。”

ってパパが言ったわ。
――いい話とは思わなかったの。
本当よ。



その後ね。
色とりどりでたくさんの、
3人乗りの自転車が、教会へ向かっていったの。

”お祈りしようかな、け飛ばしちゃうかな。”

そうすると、2つのお月さまがあたしを照らしたの。
見ては駄目だと、分かっていたのに。

そこには、

もっとみる