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みんなTONO先生の『カルバニア物語』を読もう

※2019年5月14日 ネタバレ部分を追記しました。
最近はTONO先生の作品をゴリゴリに推している。『カルバニア物語』を無料キャンペーンで3巻まで読み、順番でちょっとずつ買おうかと思っていたら、新刊18巻にプレゼント応募券(今は〆切過ぎてる)がついていて、買ってそれを読んだ。
カルバニア物語は初めての女王タニアが即位した王国の日々を描いている。タニアの幼なじみ、エキューは男装と女装を軽やかに着こなし、初めての女公爵として働いている。カルバニアでは国家元首が女性になったから、社会も女性の進出を許さざるを得なくなったのだ。
3巻からとんで18巻を読んで不思議なことに途中から読んでいる時の違和感がない。エキューがライアン(多分初期に出てきた少年好きのひとだよね?)と恋仲になっていてびっくりしたが、ああ、エキューそうなんだ、とすんなり理解し、私がこの巻で初めて見た人物ナジャルやその恋人たちの話は前から続いているようなのに、何が起きているのかはすっと入ってくる。
私は漫画を1巻から通しで読まないと気が済まないタイプである。というより1巻から積み重なる物語を読むのが好みなのだと思う。名探偵コナンは途中の巻から読めるっちゃ読めるけど単行本によっては事件解決編からページが始まることもあって、こういう時は読んでもさっぱりである。HUNTER × HUNTER未読の人に、アルカとキルアの話が感動的だからと、選挙編から貸せるか?あれはキルアの家族たちの歪んだ所を前から描いているからあの緊張感が成り立つのだ。通しで読むべき作品というものが世の中にはある。

※ここから『カルバニア物語』18巻のネタバレになります。


18巻ではタニアのいとこ、ナジャルを中心とした女性の話である。ナジャルの一族の男達は代々たくさん愛人をつくって「適材適所で女性を何種類もキープしながらやってきた」(36ページより引用)のである。また、ナジャルは王族の血を引いているので、ナジャルの「正規の愛人」になれば国から完璧に予算が出て、正規でない愛人にも、王族の子を産む可能性がある女性への手当としてある程度のお金が出るのだ。つまりこれは色恋の話であると共に女性のキャリアの話でもあるのだ。
「正規の愛人」アナベルは美しく着飾り何ヶ国語もたくさん勉強して社交界にでているが、周りの人達から懐妊への期待を露骨に出されて参っている。その様子をみてエキューは自分の彼氏とのエロ話を話の枕にしてアナベルにナジャルとはうまくいっているのかときく。これは今を生きる私たち女性が直面する悩みとダイレクトにつながっているではないか。私たちにもエキューみたいにきいてくれる友達、知り合いがいるではないか。
タニアやエキューは、やんごとない身分なんだけど私たちのそばにいて、キャリアや恋の世間話をしていく。それは中学の同級生に久しぶりに会って最近どうなの?と話すような、聞く方は切れ切れの断片でも、ひと繋がりの人生の物語である。

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