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交流宿だが触れない流儀もある

 遠方の他業種の方とZoomで打ち合わせ中、宿で起こるアレコレをなんとなく話したところ、「えー、そんなことが起こるですか〜!!めっちゃおもろいやないですか〜」というようなコメントをいただいた。確かに宿をやっていると、日々いろんなドラマティックなことが起こる。ある種ネタの宝庫だ。

宿で起こるアレコレ、パターン①

 例えば宿で出会った2人が結婚したり、地球のあっちとこっちに住む友だち同士が数十年ぶりに宿で感動の再会を果たしたり、オンラインゲームで知り合った学生さんたちが宿で初めてリアルで顔を合わせたり。

宿で起こるアレコレ、パターン②

 ちょっと似た話なように思うので追記すると、ある層のなかではかなり有名、そんなひとが泊まりに来たりもする。例えばコアファンの多いゲストハウスのオーナー、たくさんの著書を出しているかた、人気ユーチューバー…。

宿で起こるアレコレ、パターン③

 名はまだ売れてはいないかもしれないけれど、職業的に「え!?なになに!」と言いたくなるようなひともくる。例えば、AV男優、力士、絵の修復師…。職業的、というわけではないけれど、15歳でよく泊まりに来ていた男の子。

どこまで触れていいのか

 そういう面々が泊まりに来たとき、または次に泊まりにきたとき、どういうテンションで接するか、どういうふうに他のゲストに紹介するか慎重になる。結婚した2人は確かにこの宿で出会ったという事実はあるかもしれないが、それはただ宿として嬉しいだけで、当事者にとっては特筆することではない可能性もある。まして他人にべらべらと喋られるネタにはなりたくないだろう。有名な方の宿泊においても、その人は今は仕事上のその人物から少し離れたくて泊まりにきているかもしれない。ゲストハウスオーナーがプライベートで旅に出た際に「こちらは〇〇ホステルのオーナーさんなんですよ〜」なんて他の旅人に紹介されたら、そこからは営業スマイルをしなくてはいけなくなる、かもしれない。

触れない流儀

 なのでゲストを他のゲストに紹介する際に、私は心のなかで(えっと、あなたはどういう紹介のされ方がちょうどいいんでしょうね…)と探りを入れている。「〇〇県から来られたんですよね〜」や「今日は△△寄ってから来られたんですって〜」のような当たり障りのない言葉で居合わせたゲスト同士を繋ぎわせて、そこから先の深掘りはゲスト同士でやってもらう。互いに打ち解けたいと思ったら深い話もするかもしれないし、今はそういう気持ちじゃないんだという場合はさらっとした会話で終わるかもしれない。きかっけは作るが、「知らない人と出会う」場所でありながら、「話さない」そして「探らない」という選択も残したいと思っている。

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