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オリベの豆やの思い

この写真は、大正10年代、今からおよそ100年前の上士幌。開拓時代の農作業風景です。

畑で馬を曳く女性。後ろで農機具を操る男性。二人は夫婦でしょうか。除草作業をしています。作物の様子から見ると、おそらく6月。作物の発芽が揃い、日に日に成長する頃です。
今年はどんな秋を迎えられるのか。作物は無事に収穫できるか。作物の相場はどうなるか。明日の天気はどうだろう。頑張ってこの畑は終わらそうか。今夜の夕食は何にしよう。その前に馬の餌を用意しないと。洗濯物は乾いたかな。あぁ、そろそろ子どもが帰ってくる…。馬も疲れてきたな。やっぱり今日は早めに上がろうか…

当時の生活は現代とは大きく違うでしょう。けれど、家族での農作業、そして広大な畑を目の前にしながら日々を積み重ねていくことは、今と変わりません。

この写真は、北海道農業の原点です。

私は今、上士幌町で農業を営んでいます。
上士幌は十勝の北に位置する、人口およそ5,000人の町です。ここは寒暖の差が激しく、作物にとっても人間にとっても決して楽な自然環境ではありません。
100年前、その上士幌を開拓した人たちがいました。人の手で大きな木を切り倒し、鍬で畑を開墾した人たちがいました。
春、畑に種子を落とすとき。秋、作物を収穫するとき。私は先人たちに思いを馳せずにはいられません。
何を目指して北海道に来たのか。どんな思いで土と向き合ったのか。厳しい環境のなかで試行錯誤を繰り返し、先人たちは北海道を「農業王国」と言われるまでにしました。
そこには数えきれない物語があるはずです。けれど、開拓の時代から今まで、決して変わらない思いがあります。
「大切な人に、美味しいものを届けたい。」
最初は家族へ。仲間たちへ。もっと多くの人へ届けたい。思いは広がり続けました。

きょう、あなたが食べる北海道の食材。
あなたが「美味しい」と感じた時、その思いが叶います。

今も変わらない先人たちの思いを大切にしながら、私は畑に立ちたいです。

(写真:帯広百年記念館収蔵)

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