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カフェオレにしようか、今日くらい。

朝令暮改、という四字熟語が思い出せなくて、思わずググった。

あんなに昼は強気だったのに、夜のニュースでは「GOTO 検討」の文字。眠気が覚めてしまった私はそれを表現する言葉をは当てはめて皮肉りたかった。きっと事情はたくさんあるのだろうし、異なるのだろう。拭いて飛ぶような末端の国民が見ているものは、一国を担う総理の視界とは。

それにしたってなぁと思わず肩を落としてしまう。

あまり政治的な話はここではしたくないし、いまもここでごりごりに書くつもりはない。提言や主張もするつもりもない。ただちょっと疲れてしまった、という個人的な話を書き留めておきたいのである。

◇        ◇        ◇

「いやぁまいったねー。なんだかんだGOTO強行突破すると思ってたんだけどね。」

「ほんとですね。今日問い合わせの嵐になるかもしれないですね・・。」

「せっかく予約してくれたのにキャンセルかー・・・。」

「そうなりそうだね、でもネガティブになるのはよくないから今日もなんとかポジティブにいきましょ・・」

今日の朝のある旅行代理店のスタッフ間の会話である。逆境をなんとかりそめの明るさで受け取ることには慣れてしまった。東京がGOTO対象外になった時も、クーポンの詳細がなかなか降りてこなかった時も。残業せず、限られた出社回数で前代未聞の状況と向き合っていたのである。

この未曾有の事態だからこそ、試行錯誤が必要だった。いつもと違う業務にストレスを抱えていたからこそピリピリとした空気になってしまうこともあった。

今日はどんな一日になるだろうか。お客さんが来るとは思えないが、そういう気のゆるみが問題につながってしまうことがある。気合いれにはカフェインが必要だった。私は缶コーヒーを飲み干す。なにも起こりませんように、と願かけて。

◇         ◇       ◇

座ってパソコンを眺めてニュースを確認したり、商品のチェックをして時間は過ぎた。時間を持て余しながら、壁にかかった時計は、閉店時間を示した。

やっぱりお客さんこなかったね・・・と誰かが言った。これからどうなるんだろうね、と不安を吐露したり、明日は三連休中日だから多少なりともお客さんが来るのではないか、今日の夜また政府は何かいうだろうか、心配は尽きなかった。

それでも、お店を締める準備をしながらこんな雑談が始まった。

「ねぇそういえば今年の夏休みどこ行く予定だった?」

「私は台湾です」「そういえばバリいきたかったんですよねぇ」

次々とみんな答えていく。あーいいねー、私も行きたいー、バリめちゃくちゃいいよなど、会話のラリーが次々と起こる。

ふと思った。私はどこへ行きたかったのだろうか。コロナ禍の前の自分は何を考えていたのだろうか。海外旅行のパンフレットをお客さんと同じようなわくわくを引っ提げて開き、私は何を夢見ていたのだろう。

「織田さんは?」

「私は・・・」

私は・・・。ガラス越しにベットに寝そべりながら、夜空を見上げると、白いカーテンが、光る。想像上の景色が脳裏をかすめた。

「私は・・フィンランドに行きたかったんです!」

そういうと次々と怒涛の共感が返ってきた。

「フィンランド!私もめちゃくちゃそれ聞いていきたくなったわ!」
「フィンエアーのりたいよねー、マリメッコ絶対おしゃれ」
「オーロラ一回見てみたいよねー!」
「私ガラスイグルー泊まりたいんですよね!!!」

ちょっとだけ水を差すけど、私はあまり職場での人間関係はうまくいっていない。いろいろあったので。(ただ自分の悪いところをべっとべっとにさらけ出さなければいけないからNOTEに書くのはもうちょい、かかるかも)それでもこんな話は旅行好きが集まれば盛り上がる。そんな彼ら、彼女たちは採用面接でどんな夢を語ったのだろうか。そんな若き日の私たちはこの状況をもちろん想像していなかっただろうに。

いつもは暇から生まれる世間話は苦痛だけど、なんなら今日だってちょっと苦痛だったダメな大人だけど、それでも明るい未来の話には、それがどんなに遠かったとしても救われる。

◇      ◇       ◇

連日明日は我が身とも思えるようなニュースも続く。政府の方針に振り回される日々も続く。やっとお客さんも少しずつ戻ってきたところ、また振り出しにもどってしまった。希望が見えたと思ったら、また再び突き落とされた気分だ。もちろん、それは私の話で、GOTOがなくなって救われる人がいるものもわかっている。旅行って今売るべきなのか葛藤もしてしまう。

ただ、深くは書かないけど、どこにいけばいいのか、どうなればこの国がコロナに勝つことになるのかがわからない。迷路をただやみくもに進んでいるような心許ない気持ちだ。

転職は心のなかで決めているとはいえ、少し疲れてしまった。まだここにいるうちは役に立ちたいと思っているからこそ。

最近マクドナルドでコーヒーを飲みながらnoteを書いている。今日も仕事終わりに立ち寄る。

カウンターのマクドナルドのお姉さんはいつも笑顔だ。メニューに目を落とす。ホットドリンクがおいしい季節になってきた。いつもは迷わずホットコーヒーのMサイズ。

でもちょっと自分をいたわりたくなってきた。今日くらい。

コーヒーは好きなんだけど、たまに胃が持たれることがある。今日はもっと優しいものを飲みたい。優しいものを飲んでつらつらと文章が書きたい気分だった。

コーヒーの横にカフェオレが並んでいた。私はおもむろに指をさす。

「カフェオレのMサイズで」

かしこまりました。とお姉さんは笑顔を壊さずに言う。

カウンターで蓋つきのカフェオレを受け取った私はテーブルにパソコンを広げた。みなさんのnoteを読みながらカフェオレを飲む。今日はなんだかミルクの甘さと温かさが五臓六腑に優しく染みた。

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