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マーガリンは、モノから体験へ

「モノとしてのマーガリンは終わった。正直、マーガリンはもう衰退していく市場だと考えています」

戦後のライフスタイルの洋風化をマーガリンの供給によって支えてきたミヨシ油脂の代表取締役社長兼CEO、三木逸郎さんは自社が属する業界をそのように捉えている。

一昨年の消費税増税から続く消費の冷え込み、新型コロナウイルス蔓延による外食機会の損失、人口減少による食品業界全体の不景気に加え、マーガリン業界独自の課題として「トランス脂肪酸」に関するマイナスイメージも未だに根強い。

ただし、と三木社長は続ける。

「マーガリンを単なる“モノ”としてだけ捉えるのであれば、もう私たちに未来はない。でも全く違う思想を取り入れることで、別の“体験”に生まれ変わらせることはできるかもしれない」

新しいマーガリン体験

モノを売る時代から、コト(体験)を提供する時代へ。数年前から、ミヨシ油脂では「体験」をキーワードに新たな活動を始めた。

2019年には本社近くにベーカリー『カフェ・マルガパーネ』をオープン。様々な製品を通じて、マーガリンの知られざる魅力を体験してもらうことをコンセプトにしたカフェだ。100g中のマーガリンに含まれるトランス脂肪酸が、ここ数年間で「8.7g」から「0.91g」まで大幅に低減されていることなども、美味しいパンを味わいながら体験として知ることができる。

カフェ・マルガパーネ

さらに翌2020年には新ブランド「botanova(ボタノバ)」を市場に投入。「動物油脂の美味しさをプラントベース(※)でつくりだす」をキーワードに、これからの時代を生きる人たちに必要な「体験」に焦点を当て、製品として発信している。

「botanova」では、動物性油脂に含まれる香りや味わいのバランスを徹底的に分析し、それを植物性原料だけで再現することを通じて新たなおいしさを創出

※プラントベース:英語で“植物”を意味する「plant」と“由来”を意味する「base」から成る言葉で、1980年代にアメリカの生化学者であるT.コリン.キャンベル博士によって「健康のための低脂肪かつ繊維質を多く含む植物由来の食事」と提唱された。また、2010年代に入ってからの急速な市場拡大を受け、アメリカのプラントベースフードアソシエーションではプラントベース食を「野菜、果物、全粒穀物、ナッツ、種子、豆類などの植物由来の食物からつくられる製品」とより具体的に定義した。

参考:Plant Based Foods Association Certified Plant Based Claim Certification Program

マーガリンを再価値化

マーガリンにはまだ見ぬポテンシャルがある。かつてマーガリンは「バターの代わり」として世に広がった。そして改めていま、その役割が別の文脈で価値を帯びるようになっている。その可能性を信じるからこそ、ミヨシ油脂は走り続ける。

カフェ・マルガパーネ
https://cafemargapane.jp/

ミヨシ油脂
〒124-8510 東京都葛飾区堀切4-66-1
https://www.miyoshi-yushi.co.jp/