見出し画像

弾ける瑞々しさの立役者

寒天ならではの特筆すべき力が「保水性」。分子の網目に入った水を抱え込むという寒天ならではの物性も、私たちの身近で多く活用されています。

昨今の製菓製パン業界では特にフィリングやスプレッドをつくるメーカーで寒天を求められるケースが増えている、と自社で100種類以上の寒天製品を取り扱う長野県の寒天メーカー伊那食品工業の取締役開発本部長を務める柴克宏さんは言います。

「フィリングに寒天を入れると、食べた時のベタつきを抑え、見た目の艶やかさや瑞々しさを向上することができます。また、水を抱え込む力によって、フィリングの食感を軽やかに保つ効果や、周りのパン生地に水分を移行させない作用も期待できます」

さらにこの物性を応用した一例が、なんとドリンクゼリー

「意外かもしれませんが、ドリンクゼリーは今食品業界で和菓子や乳製品の次に多い寒天の用途です。“ゼリーだけど喉にはツルっと入っていく”というあの特徴的な食感をつくっているのが、寒天なのです」

ドリンクゼリーのスパウトの内側を覗くと、特徴的な構造でつくられていることがわかります。これは摂食する際にゼリーが適当な大きさに壊れるよう意図してつくられたものです。

「寒天によって水を抱えたゼリーは、スパウトを通過する過程で破壊され、抱えていた水を一気に離します。つまり、この瞬間にゼリーの一部が溶液に変化するのです。寒天の保水力と、ゼリーが壊れた時のスピーディな状態変化というふたつの特徴を活かした好例です」

寒天は私たちの身近な暮らしにさまざまな可能性をもたらし、活躍の場を広げ続けています。