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独裁政権を乗り越えた街、それがアルバニアのティラナ。
2023/11/20 アルバニア ティラナ 🇦🇱
朝、ピザ屋で目覚める。8時くらいには店員が明けに来てくれたのだろうか。そこにホステルのオーナーも居合わせていた。なぜ昨夜電話してこなかったのだと聞いていたが、私は電話しろという指示を正直ちゃんと理解していなかったのだが、電波がなくて出来なかったということにした。実際アプリ上での電話はできるのだが、携帯番号は使えないので嘘ではない。
ピザ屋にお礼を言うと、クレープもあるから後でまた来てねと言われた。ホステルのオーナーがピザ屋にチップを渡していた。オーナーに連れられてホステルに向かう。
ピザ屋から程近い場所にあったのだが、看板も何もなく初見では絶対にわからない場所にあった。建物の隙間に造られた1.5メートルないくらいの幅の入り口に扉が付けられていたのだが、納屋のそれのような感じ。扉を開けて階段を上がると開けた場所に行き着いた。キッチンには昨夜の一瞬ピザ屋に来た女性が経理の仕事をしていた。軽く会釈をして、オーナーに促されるままにチェックインを済ませた。
ベッドがある場所は2フロアあり、私は上の階を割り当てられたのでそこからさらに階段を登らなければならず、まだ寝ている宿泊者に申し訳ないなと思いながら精一杯音を殺して入室する。幸いにも起きていた力持ちの男性がキャリーケースを運んでくれたので、必要以上の音は出さずに済んだと思う。
オーナーにフリーウォークがあるらしいと聞いていたのでそれを視野に入れつつ、まずは現金を入手することにした。ホステルからは歩いて15分くらいのところに換金所があったのでそちらに向かう。これまではユーロで通用していたのだが、アルバニアではレクになる。
無事換金を終え、泊めてもらったピザ屋に向かった。昨夜無銭で宿泊させてもらったのでお金を落とさなくてはというのと、出席しなければならないミーティングもあるということでこの場所が最適だなと思ったのだ。ピスタチオのソースがかかったクレープとラテを注文した。ミーティングといっても簡単な進捗報告であとは雑談として旅について聞かれるようなゆるっとしたものだった。ただ、ミーティングにより10時からのフリーウィークのツアーには間に合わず、今日は自分で回ることにした。
ピザ屋の店員に改めてお礼を言ってハグをしてお別れをした。
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最初の目的地は少し離れたところにあったので、バスを利用することにした。昨夜空港からのバスもそうだったように、中心地の公園がバスターミナルになっているようだった。昨夜とはまた異なり、人々で賑わっているティラーナの街を歩くのは楽しかった。路上で靴磨きをしている様子を見たのはまた新鮮で面白い。
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バスのチケットはどういう仕組みだったのか忘れてしまったが、80レクで現地までついたんだと思われる。写真を見て推測するに、多分バス内でチケット係の人と現金のやり取りをして、その距離分のチケットを入手するような仕組みだった。このシステムはタイに行った時もそうで、車掌に加えてチケット係と言う人が車内を移動してお客の乗車賃を徴収していくと言う割とアナログな手法で驚いた記憶がある。
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市街地から30程バスに揺られ、バス停からは坂道を登って長いトンネルを抜けると目的地に辿り着く。BUNK’ART 1(バンカート1)、と呼ばれるその場所は核戦争に備えて造られた核シェルターである。アルバニアでは共産主義時代、核戦争に備えて17万から18万個以上のバンカーと呼ばれる地下シェルターが作られた。その中でもこのバンカート1は政府高官らを収容する為に建てられた最大規模のバンカーであるらしい。現在はアート作品と融合した共産主義時代に纏わる展示がなされているためにバンカートとアートでBUNK’ART 1という名が付いているらしい。ちなみに、市街地にBUNK’ART 2という施設も存在しているので、そちらの方がアクセスも良く比較的気軽に訪れられる施設になっているようだ。
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この場所は多分ホステルのオーナーにおすすめされて来ることにしたのだと思うのだが、私にとっては行きたいけど行きたくない場所であった。私は本当に戦争というものが嫌いだからである。誰も好きな人はいないと思うのだが、そのことについて考えるだけで気分が悪くなってしまう。従って、考えることから逃げたいと思うし、こうした戦争関連の場所に行くのはとても勇気を必要とする。それでも、自分がそうなることを分かっていてもこうした場所に足を運ぶのは、戦争を知らない自分がその恐怖を覚えることで戦争を抑止する重要性を認識しているからだ。
特に今回は地下シェルターであるので窓もない閉塞的な空間を歩くことになる。平日の午前中という時間帯もあってか、観光客はまばらだった。シェルターも広大であったので、基本的には周りに誰もいないような環境で回らなければならずとてつもない恐怖心を感じる。また私は蝋人形恐怖症でもあるのだが、展示の中には当時の状況再現の為に、のっぺらぼうではあるものの、そうした等身大のマネキンがあることで余計にびびらされていた。そして極め付けは共産党時代の映像が絶えず流れているところである。とてもおどろおどろしい内部の雰囲気に終始心の平穏が阻害されていた。途中、本当に頭が痛く胸がむかむかするような体調の悪さを感じ、立ちくらみしたのだが、途中離脱も出来ないような空間だし、こうした感情は現地でしか味わうことが出来ない貴重なものだとして享受する。
幸いにも後半はより内部の空間が開かれ、そのアートが表現しているものは恐ろしいものであるにせよアート要素の強い展示だったので助かった。
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最後まで鑑賞し切って外に出ると、施設の職員で道案内をしていた人に出会った。彼はどこから来たのか、なぜこの施設に来たのか尋ねてきた。確かにティラナの中でも辺鄙な場所であるし、そもそもアルバニアに来る日本人が少ないということで興味を持ってくれたようだった。そして、彼はこの施設を訪れることの重要性を語っていた印象がある。最後に近くにあるロープウェイも人気の観光施設だと教えてくれた。
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折角ここまできたのだしということで向かってみることにした。途中商店でお水を購入。バンカート1からは少し坂を登った先にロープウェイの発着所があった。
往復分のチケットを購入してロープウェイに乗り込む。空いていたのだが、タイミング的に何故か相席となり北欧、確かスウェーデン出身の2人組のご婦人方とご一緒になった。11月の後半ということもあって、美しく葉が色づいていた。山の中腹にもまばらに家々があり、アルバニアの人々の生活が垣間見れた。夢中で写真を撮っていると、ご婦人方が話しかけてくれた。ヨーロッパ中を旅していると話すと、北欧は行ったかと聞かれた。北欧も行ってみたい土地ではあるのだが、今回の旅程では時間が限られておりそこには行けないと伝えると残念がっていたが、良いところだからいつか来てねと言ってくれた。いつかちゃんと北欧の地も自分の足で踏みたいと思っている。
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山の上からはティラナの街を一望することができた。ヨーロッパの古い歴史を持つような街並みとは異なり、ティラナの街は割と近代的な建物が多い印象。
また、ロープウェイで降り立った場所はレジャー施設にもなっているようで、乗馬体験やミニゴルフコーナー、レストランやカフェなどとても充実していた。そういえば山の上ということもあり、市街地よりも少し寒かったことを思い出した。
山頂には公園もあり、日本の公園では見慣れないような遊具が沢山あった。中身が5歳児と謳っている私は人がまばらなこともあり、1人で遊具で遊び出してみる。流石に誰かいて欲しいなと思いつつも楽しかった。山頂の方のロープウェイ発着所にはそれなりに人がいたのだが、施設が広大なこともあって公園の付近にはそこまで人がいなかったのである。ただ、ここでどんな流れか忘れてしまったのだが、イギリス人夫婦と言葉を交わした記憶がある。彼らはアルバニアにいる日本人を珍しく思っていたが、物価も安いし良い国だと評価していた気がする。彼らにもイギリスにも来てねと言われたのだが、イギリスもまだ行けていないがいつかは訪れたいと思っている国だ。そのいつかが近々来ることを願っている。
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話が逸れたが、暫く街と山の景色とロープウェイが発着していく様子を満喫してから下界へと戻ることにした。
お昼時ということもあり、調べていたパスタ屋にいくことにした。どうやらレストランの集合施設内にあるようで、おしゃれな外観に気分が上がる。
テラス席を選択して着席。注文するものは決まっていた。トリュフカルボナーラである。YouTubeか何かでこのお店を知ったのだが、高級食材にしてはリーズナブルに楽しめるということで楽しみにしていた。サラダとカルボナーラを食したのだが、美味しかったことを覚えている。しかし、流石に量が多かった。1人で来ることの弊害はここなんだよなと思いながらも、移動費や宿泊費を抑える代わりにこうしたご飯等では贅沢ができたことも良かったと思う。高くても取るべき経験だよなと満足して店を出た。ちなみにクレジット決済が決済可能であった。
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お店を出て腹ごなしも兼ねてティラナの街を散策することにした。先程山の上からも見えていたように、ティラナの街には割と近代的な建築物が多く存在する。その中でも逆に古風なというか文化的な巨大ムスクやタバケ橋という石造りの橋を見ることができるのが面白かった。この橋は18世紀オスマン帝国時代の名残で長さ8m程と橋にしては短いのだが、さらにこの橋は少なくとも現代においては橋としての意味を成していないというのが興味深い点であった。
道の横に存在するこの橋の下は草木が生い茂っているのだが、その横の道を通ると普通に橋の端と端を行き来することが出来るのだ。即ち、語弊を恐れずに言うなれば現在は何も結んでいない端なのである。しかし、その橋は一軒の価値がある程に石の橋として美しかった。また、私はこうした橋や梯子を渡ってみたくなる少年の心を持っているのでしっかりとこの橋を渡ってきた。満足に舗装されていない石そのままの形状を感じられる橋が新鮮で良い体験だったと思う。
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また、元々はムスクだったのだろうと思われる教会も存在し、この地がオスマン帝国という世界史の授業でよく耳にする地域だったことを実感した。
今度は逆に近代建築を目指してみる。道中で何やらお祭り騒ぎをしている人々に鉢合わせた。バレーボールコートが隣接した広場でアルバニアカラーのユニフォームに身を包んだサポーターらしき人々が数十人で盛り上がっている。きっとサッカーか何かの試合があるのだろう。私はそこら辺の事情に精通していないので何のことかは分からなかったのだが、幅広い世代の人々が一丸となって盛り上がっている姿には活気がありとても素敵だなと思った。ところで、ティラナの街ではアルバニアの国旗をデザインにあしらったグッズや服をよく見かけた。日本ではあまり自国の国旗を掲げている観光地というのは余程政治的な関連の場所や文化歴史的な場所でしか見かけないイメージなので街中でこんなにも国旗を目にするものなのかと彼らの愛国心を感じることが出来て興味深かった。
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目指していた場所はティラナのピラミットと呼ばれるものだ。元々はかつての独裁者であるエンヴェスト・ホッジャに捧げる記念碑兼博物館として建設された。しかし、現在では、カフェやスタジオだけでなく無料でテクノロジーを学ぶことが出来るような若者のための施設として活用されている。カラフルなボックスの建物が目を引く造形になっているのだが、中心にあるピラミッドも階段が設けられていることで誰もがその上へ足を運ぶことが出来る設計にすることで独裁政権を克服したという意味が込められているらしい。発想が素敵だなとも思うし、くらい過去を持つような遺産を敢えて残しつつも若者に向けた施設として活用する発想に感心せざるを得ない。自分の街にこの様な施設があれば入り浸ってしまうだろうなとティラナの学生を羨ましく思った。
ところで、このピラミットからの景色も最高であった。夕日に染まったティラナの街も美しい。景色を堪能してから最後はスカンデンベルク広場に戻る。バスターミナルがあったティラナ市街地の中心となっているところだ。
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この広場には博物館やイスラーム寺院など観光地としても人気の場所が多々あるのだが、この日は先程のスポーツイベントの観戦用巨大スクリーンが設置されていたり、イスラーム文化に関してのエキスポなのか特設テントで何かイベントが開かれていたり、はたまた食の野外フェスも開催されているような市民の生活にも欠かせない憩いの場所となっているようだった。フェスの会場では花火も上がっている始末。その盛り上がりにこちらまで楽しくなってきた。
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しかし、何故かこの時間帯の写真がまたもや消失してしまっていたので、次の日の朝に撮影したものを掲載しておく。早朝7時前なので人もいないのだが、前日はこの広場がたくさんの人で賑わっていたのだ。その証拠がタバコの吸い殻というのは何とも悲しいことである。
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夜ご飯はアルバニア名物として目をつけていたラム肉をいただくことにして目をつけていた。北海道のジンギスカンでラム肉にハマっていた時期だったのでどうしても食べたかったのである。ネットで調べて見つけたレストランOdaという場所でいただく事にした。様々なおすすめ料理があったのだが、何せ1人で来ているものでそう多くは食べられない。取り敢えずラム肉とコーラを注文した。炭火で焼かれた素材の味が生かされたラム肉は柔らかくて美味しかった。しかし、流石にラム肉だけというのは喉が渇いて仕方がない。コーラは節約しつつ飲んでいたのだが、食べている途中でとうとう底をついてしまった。再注文を検討するもやはりレストラン価格のジュースをもう一度頼む気にはなれず我慢して食べ切る。謎の自分鍛をしていた。やっと完食した後にスーパーでこれまたアルバニア名物のヨーグルトドリンクですっきりとする。そういえば、テーブルはお客さんが食べ終わるごとにテーブルクロスごと交換するという斬新なシステムにも驚いた記憶がある。なんだかんだ行って良かったと思うし、写真が残っていなくてもここまで思い出せるのはやはり印象的なレストランだったのだなと思った。
レストランを後にしてホステルに帰宅する。ホステルまでの道のりにあるパブで人々が盛り上がっていた。どうやら彼らも本日のサッカー観戦をしている様だった。
ホステルは先述の通りとても見つけにくい外見をしているので隣の扉だったかこの扉なのかと2回目でも迷ってしまった。何度か帰宅に成功し安堵する。
これは余談であるのだが、ホステルのバスルームがまさかのダブル便器で面白かった。イタリアのトイレでは便器の横にビデはあるものの、隣接した便器は流石に初めての光景だった。何故このような構造になったのか本当に謎だなと思った。
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明日は早朝のバスで次の国へと向かう予定になっていた。早めにベットに入り就寝する事にする。