吹奏楽に足を踏み入れた日

今日は「元弱小吹奏楽部員の記憶(1)」です。
吹奏楽は私の学校生活の大部分を占める要素なので、シリーズ的な名前をつけ、少しずつ書いていきます。


年が明け、小学3年生の児童に、吹奏楽部からお便りが配布される。「部員募集!」

ああ!入部届だ!私も、とうとう、加入する時が来たんだ。大会前の激励会や校内音楽会で演奏する彼らを、羨望の眼差しで見つめるだけだった。ようやく、あの一団に加わることができるんだ…!
前から「吹奏楽部入ろうかな」と言う友達は結構いたけれど、私はそんなもんじゃない。他の人より何倍も憧れていて、小学校に入学した時点で既に決めていたんだ。嬉しい!
お便りに印刷された集合写真。来年からは、ここに私も加わるのね…そう考えてワクワクした。

帰宅すると、すぐさまお便りを母親に見せて、入部届にサインとハンコを貰う。母親は私の「絶対入る!」という意志は知っていたし、自分も小中と吹奏楽部だったから、とても好意的だった。
よし!もう明日にも提出しよう!


数日後、部活動見学があった。3年生の間は一応「仮入部期間」で、部活参加も「見学」と称される。しかし、入部届を出しているわけだし、この日は実質の部活動初日だった。
「みさちゃん、一緒に行こうよ」
「うん」
同じクラスの幼なじみであるみさちゃんと、ちょっと緊張して音楽室に向かった。ブルブル震えていたのは、1月の寒さのせいだけではなかったと思う。

音楽室は、まだセッティングの最中だった。顧問の先生が「もう少し待っててね」と言う。
(顧問のO先生は声がよく通り、話し方の優しい男の先生だ。担任は持っておらず、4年生以上の書写を担当していた。習字も指揮も全くド素人である私にも感じられるくらい、ダイナミックかつ優雅なパフォーマンスをする先生だった)
私達3年生は隅っこの方に突っ立って、様子をもじもじと眺めた。
「ああ!イス用意しないとね!」
先輩の1人がテキパキとイスを持ってきて並べてくれる。私達はそれに腰掛けた。

準備が整ったようだ。
部長「練習を始めます、お願いします」
全「お願いします!」
先生「はい、お願いします」
揃った挨拶に、少々圧倒された。
先生の指示で、パートリーダーはパートと楽器の紹介をした後、自分達は自己紹介をした。

「名前、組と好きなこと、あと希望の楽器でも」
私は1番端に座っていたのでトップバッターになった。「希望はフルートです」と言った為に、その後の女の子達が全員「希望はフルート」と言っていたのがちょっと面白かった。日本人ですねぇ。(帰宅して両親に話したら爆笑していた。「アンタもアンタだよ…。『今のところはないので、いろいろ試してみたいです!』とか言った方が感じ良いよ」と諭された。全くその通りだ)
その度に部員からは笑いが起こって、フルートパートからは「ヤッタァ」と声が上がった。

最後に演奏を聞いた。「気になる楽器を吹いてる人の近くで聞いていいよ」とのことで、みさちゃんと一緒に、フルートの先輩の近くにそろそろと移動して聞く。ディズニー名曲メドレーだった。間近だと、手の動き、息遣いまで分かって、なおさら凄い!と思った。楽器に息を吹き込んで正に”操っている”、と。
曲が終わって私たちは精一杯拍手した。

「それじゃ、3年生はこの辺で解散かな。誰か、あいさつ!」と先生が促す。
男の子が周りの子にせっつかれて代表になった。(この子が後の部長となる)
男の子「ありがとうございました!」
3年生「ありがとうございました!」


友達と、「凄かった」「カッコ良かった」などと言い合って音楽室を去る。
帰り際に、2月上旬にある6年生引退&サンクスコンサートで「新入部員お披露目」として簡単な合奏をしてもらうこと、明日はとりあえずリコーダーと鍵盤ハーモニカを持ってくることが告げられた。楽器決めはまだ先のようだ。なあんだ。ちょっと落胆した。

こうして私の部活動初日は終わった。

私は、これから中3まで約6年間、吹奏楽部を続けていくことになる。(みさちゃんに至っては、高3まで約9年間)そして、なくては生きていけないほど大切なものになる。この日は始まりの日だった。




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