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未来の日本に役立てたい。UIJが「テクノロジー×地域」の力で目指す、地域・社会課題解決の方法とは?

松村亮平/1984年滋賀県生まれ。大学卒業後、スタートアップのIT企業に入社し、エンジニアとして幅広い経験を積んだ後、フリーランスとして独立。フリーランス時代に日本の各地域を見て回ったことで「地域 × IT」の可能性を感じ、NPO法人コミュニティリンクに参画。Urban Innovation KOBE(現在:Urban Innovation JAPAN)を立ち上げ時から携わる。

「社会に良いことをしたい」と学生時代からなんとなく考えていました。しかしあの当時はアルバイトと大学の学食でだべっていた思い出しか無い大学生活。いっちょ前に何か社会に良いことをしたいと思いながら、一体何から始めたら良いものか…。
そんな際に偶然就活で出会った社長の目指すビジョンに共感し、その会社に入社しました。入社した会社はWEBサービスを開発するスタートアップ。6年ほどネット広告の分析サービスの開発、プロジェクトマネジメントをエンジニアとして幅広く経験しました。ですが、より現場に近い、社会課題解決、社会の役に立つことがしたいと思い、次のステップに踏み出すことにしました。

その後、フリーランスとして2年ほどシステム開発の受託を受けながら、日本全国の地域をブラブラしていました。実は退職した当初は「まちづくり」とかぜんぜん興味は無く、というよりはそんな業界があることすら知らない状態でした。

しかし、いろんな人、面白い人に会い行き、いろんな場所に行くうちに、徳島県の神山町(注1)や島根県の北に浮かぶ隠岐諸島の海士町(注2)が面白いという話をよく聞くようになりました。そして、実際に訪れてみるとたぶん変人と言われる部類の移住者がめっちゃ多くて確かに面白いことになっているんです。

(注1) IT系企業等が相次いでサテライトオフィスを開いた山里
(注2) Iターン人材が奮闘し、教育分野等で一歩先行く離島

たとえば、東京でバリバリやってそうな外資系金融機関やコンサルティングファームに勤めていた人が移住していることに驚きました。移住の理由を聞いてみると、島根などのいわゆる少子高齢化が進んでいる地域は、日本が20年30年後の未来に直面するであろう課題に、まさに今向き合っている地域であり、これらの地域の課題を解決することが日本に未来に役立つという話を聞いて。ほんまにそうだなあって思ったんです。

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神山町への訪問時の写真。自然豊かな里山です。

実はそのときに吉永さんとも、東京の自由大学という社会人大学でたまたまつながりました。当時は互いに次の道を探しているところでしたが。

その頃から、まちづくりは次の20年くらい自分の人生をかけてでもやってみたい仕事だと思うと同時に、自身のITのスキルを活かせる仕事をしたいと考えていました。そんな際に出会ったのが、「IT×地域」でテクノロジーを社会実装を試みているNPO法人コミュニティリンクでした。

コミュニティリンクには2016年ごろから所属し、まちづくりの”いろは”を学んでいきました。2017年の後半からは神戸市と一緒にUrban Innovation KOBE(以下、UIK)のプロジェクトの運営を開始し、運良く立ち上げに携わります。そして現在は、より広い範囲でスタートアップと自治体職員が協働した新たな地域・行政課題解決プロジェクト「Urban Innovation JAPAN」(以下、UIJ)の運営を主に担当しています。

地域・社会課題解決には
課題にフィットしたテクノロジーと
ユーザー目線の開発が必要

UIJはスタートアップをはじめとしたテクノロジーを持っている民間企業と自治体職員が一緒になって、協働でサービス開発を行い、社会・地域・行政課題の解決を試みるというものです。

ご存知の通り自治体や地域社会は課題が山積しています。しかしその一方で、民間企業より圧倒的にテクノロジーの活用が遅れています。UIJでは、今まで行政ができなかったアプローチで課題解決に取り組み、実に約70%の課題が解決に至っています。

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スタートアップと市職員への説明の様子

私が担当したもので印象に残っているプロジェクトは、2018年上期に実施した神戸市の長田区役所と株式会社ためまが取り組んだ「子育てイベント参加アプリの実証開発」(注4)です。

(注4) 神戸市 長田区 総務部 まちづくり課
子育てイベント参加アプリの実証開発
https://urban-innovation-japan.com/project/20181st/nagataku-childcare/

発端は、長田区役所のアンケート。子育て中のお父さんお母さんの多くは「子供を連れて行けるイベント、場所を知りたい」とアンケートで答えています。その一方で、長田区には17以上の子育てサークルが存在し、ほぼ毎日イベントが開催されていますが、まだまだサークルの具体的な活動内容が知られておらず、そのため参加に結びつかないといった実態がありました。そして、市としては、地域ぐるみの子育てを推進する上で、両者のニーズをマッチングさせたいという想いからプロジェクトがスタートしました。

そこでUIJで協働開発されたのが「ためまっぷながた」です。
仕組みはものすごく簡単で、イベントを伝えたい側がスマホでチラシをパシャッと撮影してアップロード。ママやパパは自身の位置情報からたとえば2km以内の近日開催のイベント情報が見れるというものです。

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WEBサービス「ためまっぷながた」の画面イメージ

子育て中のご家族は共働きの方が多いので、公共施設などにチラシを取りに行く暇なんてありません。しかし、その情報を手軽にスマホで知れるわけです。
一方、地域の市民団体も皆がスマホを使いこなせるわけではありませんし、広報手段はチラシがほとんど。ためまっぷは、チラシを写真で取って基本的な情報を入力するだけですので、操作が簡単ですし、なによりチラシは単なる文字情報では表現できない個性に溢れています。

すごく単純な仕組みなんですが、好評でイベント参加率がグンとあがりました。

課題解決には、いつも最新のテクノロジーを使えば良いというわけではなく、ましてやAIやIoTといったバズワードに惑わされるでもなく、課題にフィットしたテクノロジーとユーザー(市民)に寄り添ったサービス開発こそが必要(注5,6)なのです。

(注5) すごく当たり前なことなのですが、多くの自治体のシステム開発ではそれができていないのが実情なのです…。
(注6) また、”正しい”課題に取り組むことも非常に重要なことですが、今回はアンケートでそれが実証されていました。

しかし、どんな解決策も万能薬ではありません。たとえば、今回の事例だと、ユーザーが閲覧していることはわかるけれど、ためまっぷを見てイベントに参加した人がどれぐらいいるかまでは追えないんですね。(技術的には可能だが、運用が追いつかないため。)そこで、長田区役所の職員が子育てサークルに、ためっまっぷ経由で参加された方が何人いたか一件一件ヒアリングして回って下さったんです。

そうすることで、本サービスの効果測定ができると同時に、ここが使いにくいといった情報をイベント主催者や利用する側のママから直接仕入れることができ、そのフィードバックを元に開発側のためまさんが改善していきました。

市職員と民間企業がお互いに汗をかくことで、まさに今まででは解決できなかったことが解決されようとしている。どちらが欠けてもダメだったと思います。上下関係もない、まさに一進一退の「協働」でした。

長田区役所の担当者の方が4ヶ月を経てどんどん成長していくのも非常に印象的で、「めちゃくちゃ楽しい4ヶ月でした」という声を市職員の方からもらった時は、本当にやっていてよかったと思った瞬間でもありました。

スタートアップと行政の協働

スタートアップと自治体は様々な面で正反対で、まさに水と油な部分があります。そもそもスタートアップはビジネスのスケールを目指し、自治体は自身の課題解決を目指しているので、そのベクトルが違います。

自分自身がスタートアップのエンジニアとして、サービス開発や、そしてマネジメントをしていた経験があることから、スタートアップの気持ちや開発上の課題を理解した上で、プロジェクトを推進してきました。

一方で、自治体は総合商社と呼ばれるように、業務が非常に多岐に渡っています。それこそ役所の窓口から、商店街の振興などのわかりやすいところから、土地開発の許可申請や税金不支払いの市民の資産の差し押さえまで、馴染みのない業務もたくさんあります。

UIJの運営は双方の知見を総動員した、ベクトルを合わせるためのコミュニケーションが難しいところでもあり、やりがいを感じるところでもあります。私自身、スタートアップと行政がどうすればWinWinになれるかを常に考えてきました。

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ただ、ここまでカッコいい話ばかりしてきましたが、失敗体験はもう本当に山のようにあります。今のUIJの成功率は、そういった失敗を改善してきた結果です。UIJは日本初のプロジェクトでもあるので参考にできるような事例が国内にはなく、すべて試行錯誤でやってきました。

しかしそれでもやってこれたのは、テクノロジー企業と行政の協働という、正反対のような組織同士の「協働」に、未来を感じるからです。

自治体が変わることの意味

少子・超高齢化社会に突入する日本の課題が深刻化するのは待ったなしです。近年の日本は、コロナウイルスの感染が広がる前から悲観的なニュースが多いこともあり、閉塞的な社会だと感じることも少なくないかもしれません。一方で、人口動態は人類が未来予測できる数少ない確度の高い未来です。つまり、その未来はある程度予測できるので、実はあらかじめ対策を講じることができるとも言えます。UIJの仕組みは、ささやかではありますが一つの手立てには成り得ると考えています。

自治体は多くの地域の中で一番大きい組織です。たとえば、政令指定都市で人口150万人超を抱える神戸市内でも、約2万人の職員を抱える神戸市役所は、神戸市内の有数の大企業です。いわんや、日本の多くの地域では、自治体は地域最大の企業でしょう。そういう意味で、自治体が変わることは、まさに地域の未来を変えることにつながると考えています。

そして、資本主義が全盛期とも言える現在では、自治体も企業との協働が欠かせません。

そんな想いを持って取り組んでいますが、UIJを今年度から本格的に全国展開するにあたり、一緒に働いてくれる仲間を募集しています。

もちろん私たちができることは限られています。
しかし、20年、30年後の将来を担う世代に、残すに値する未来を残すために、今できることはやっておきたいと割と本気で考えています。UIJはまだまだ創業期であり、これからたくさんの困難もあるかと思います。
しかし、それを乗り越えるだけの価値があると信じていますし、何より楽しいし、社会の役にも立てる、個人的にはめちゃくちゃいい仕事だと感じています。

ぜひ、私たちといっしょに一歩を踏み出してみませんか?

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吉永隆之(東灘区役所の事例を収録)


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