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日銀が金利を上げられない理由を考えると

11月3日、FOMCは政策金利について、引き続き0.75%での利上げを発表しました。日本の政策金利は、据え置かれたままで金利の差が開く一方ですね。その影響もあり、2022年に入ってから急激に円安が進み、バブル期以来となる32年ぶりの水準となりました。
今回は、日銀が金利を上げられない理由を私なりに4つまとめてみました。


(GoogleFinance2022年11月12日時点)

理由その① 個人消費を減速させたくない!

500兆円を超えるGDPにおいて、およそ半分を占める個人消費は、日本経済の要といえます。金利が上がると、住宅ローンへも波及します。

例えば、借入金1,000万円あたりで比較すると金利1%で30年返済の場合、毎月の住宅ローンの支払いは月額32,000円程度です。金利が2%になると、毎月の返済額は37,000円程度(約5,000円プラス)になります。

たった1%でも借入金1,000万円あたりの返済額が5,000円増えます。3,000万円のローンなら、月あたり15,000円(5,000円×3)もの家計負担となるわけです。そうなると昨今の物価高のなか、消費意欲がますます失速してしまいますよね。

また本来25%以内が望ましいとされる、住宅ローンの返済負担率(返済額÷年収)をみると、25%超の利用者割合は変動型18.9%、固定期間選択型26.2%という現状です。(出所:住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査2022年4月より)

およそ4人に1人が、すでに銀行の基準を超える負担を強いられていることからも、容易に利上げには踏み切れないのではないでしょうか。

理由その② 裾野が広い建設業界へ配慮

令和2年度における建設業界の投資額は、GDPのおよそ10%にあたる58.4兆円、建設業界に従事する人は492万人といわれています。(出所:令和3年国土交通省 建設業の働き方改革の現状と課題)わずか10%ですが、建設業界への投資は業界内だけにとどまらず、幅広い産業への波及効果が期待されています。

また個人消費同様に、住宅ローン金利が上がると、新しく家を建てる人、マンションを買う人、リフォームをする人、不動産投資をする人が少なくなってしまいます。ここ数年の住宅ローン新規貸出額は毎年約20兆円ほどあります。(出所:国土交通省住宅局 令和3年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書)

公共事業においては、その事業資金の一部は建設国債で調達されています。近年の発行額は6〜7兆円を推移しています。(出所:財務省 最近10年間の国債発行額の推移(予算ベース))
金利が上がると、国債の利払いが増えることにもつながり、政府の財政がさらに圧迫されます。

理由その③ 日本株式を買い続けてほしい!

東証一部の株式市場における売買代金のうち、およそ20%は国内の個人投資家による取引です。(出所:株式会社東京証券取引所 投資部門別株式売買状況東証一部全50社2021年)
※ちなみに最も多いのは海外投資家の約70%です。

とはいえ、国内の個人金融資産の大半は現預金で占められており、政府は「iDeCo」や「つみたてNISA」の制度改正で、株式(投資信託含む)への資金シフトに向けて期待をよせています。
いよいよ国民の意識が投資へ向かいつつある今の雰囲気のなかで、安全資産の金利が上がると政策の足を引っ張ることになりかねません。

現預金が株式へシフトしないと、株価の低迷や企業の設備投資や新規事業が進まず、不景気を助長してしまう恐れがあるのではないでしょうか。iDeCoやつみたてNISAを通して、個人投資家が株式を買い続ければ、株価の下支えともなります。株安になれば、海外の企業や投資家からの買収リスクも高まります。

理由その④ 輸出関連企業を応援したい!

日本を代表する超優良企業のうち、海外での売上高比率が70%を超える企業はあまたあります。全業種平均においても海外の売上高比率は40%近くあり、今後も大半が強化&拡大していく方針を打ち出しています。(出所:株式会社国際協力銀行 わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告2021年度)

今回の歴史的な円安で、最高益を発表した企業が多くあるように、円安は一時的ですが好決算の要因となります。もし日銀が政策金利を上げ続けることができれば、円に資金が集まり、今度は逆に極端な円高が進む可能性があります。そうなると輸出関連企業の決算にとっては、向かい風となり得ます。
ほどほどの円安をキープする必要があるのではないでしょうか。

まとめ

日銀が金利を上げられないのは、経済成長をさらに遅らせてしまうことになるから、という当たり前の結論にいたります。
そもそも日本の経済構造に稼ぐ力があり、賃金を上げることができていれば、多少の金利上昇なら個人の消費も投資も耐えられるでしょう。

しかしさらに根本的なところでいえば、少子化対策が一向に手つかずのままになっていることが問題だと感じます。与野党かかわらず、またメディアを含めた国民が一丸となって大きな改革を良しとすれば、もっと現実は変わっていたと思います。

わたしは子どもの数を増やすことはできませんが、金融教育を通してこれからの日本の未来に貢献できればと常々考えています。

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