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一生働ける仕事として選んだ、教師の仕事のおもしろさ〜木村裕美

近未来ハイスクールの先生インタビュー。第五弾は都立駒場高校の木村裕美さんです。リーダーシップを授業に活用するという、一見異色な家庭科の授業を展開する木村さんは、凛々しいという表現がぴったりな先生です。

木村さんが登壇するイベントはコチラ!(10/13開催)

絶対にならないと誓っていた職業、それが教師

近未来ハイスクール 小林 高校の先生のおもしろさはどんなところですか。

木村 生徒の成長を目の前で見ることができる点ですね。また、高校生は一緒に切磋琢磨できる相手でもあり、人間同士の深い交流もできます。さらに、私の専門分野のマニアックな部分も一緒に楽しむことができるのも高校生相手だからできることなのかなと思います。

小林 自分の子どもをみていても、高校生になると好きな分野の知識がぐっと深まるなぁと思います。

木村 実は、絶対にならないと誓っていた職業が教師でした。

小林 え、そうだったんですか。

木村 親が家庭科の教師で、その苦労をみていたからです。中学校の教師でした。まじめに生徒に向き合い、全力で仕事に取り組んでいた分、つらそうに見える時も多かったんです。

小林 お母様も同じ家庭科だったんですね。

木村 学生時代、就職氷河期に突入していたため、自分が持っているリソースを活用して、経済的に一生涯自立していくことができる仕事として選んだのが教師でした。高校時代のキャリア教育の影響のせいか、専門職に就かないと食べていけないという固定観念もあったような気がします。大学では、教師と栄養士の資格を取りました。栄養士の仕事に対しては夢が大きかった分、現実が厳しい状況であることを知り、教師の道を選びました。

小林 消去法で先生になるというのは、珍しいですね。

木村 そう思います。でも、母親と生活を共にしていて、教師の現実の世界を垣間見ていた分、この仕事のつらい部分がなんとなくわかっているということが、私の強みにもなっていると感じています。

熱い想いを持って先生になった人のようにキラキラした感じはないので、「中学校の頃から先生に憧れていて、この仕事に就きました!」という先生の前では、なんだか申し訳ない気持ちになるのですが、冷静でいられるからこそ、枠に自分をはめ込まず、教師という仕事を楽しむことができているのだと思います。

小林 冷静なんですが機械的・作業的な感じではなく、静かな熱意を感じます。

木村 それに大学一年の時の教職担当のおばあちゃん教授(その時はそう見えていました!)がとてもかっこよくて憧れだったんです。教師になる気持ちは定まっていませんでしたが、その教授から「教師を目指すなら採用試験に一発で受かる気持ちでやりなさい」といわれ、とりあえず準備を始めました。このことがこの仕事に就くきっかけになりました。

大学4年の採用試験の直前にいろんな出来事があり、試験勉強が手が付かない時期がありましたが、無事に受かることができたのは、その教授の一言があったからだと思います。

小林 あこがれた大学教授のようになっていると思います。本質をついた木村さんの家庭科の授業はとても素敵です。

木村さんの授業は、リーダーシップを取り入れるとか、長期的な視点でSDGsを取り上げるとか、社会科に近いと感じます。社会科は世の中全体から見て人や社会を学び、木村さんの家庭科は家庭や個人の視点から社会を学ぶ。近未来ハイスクールで木村さんの授業に入った変人たちも、木村さんの家庭科の授業を受けたいと話してました。

今、授業で大切にしていることは何かありますか?

木村 人としての尊厳を体感し、意識化してもらうことです。どうしたら生徒が、自分や他者を尊重し、高め合う関係性を創り出す力を持てるようになるのかを常に模索しています。

好きな学校の好きな授業が受けられる

小林 学校現場で課題に感じることはありますか。

木村 教科指導と生徒指導では教師に求められる能力が違うと考えているのですが、生徒指導能力を向上させることを学び続けることに対しての関心が低い先生が多いと感じています。教師自身がもっと自己研磨をするとともに、学校システム側も教師を育てる環境を整える必要があると思います。

小林 よりよい学びの場を作るために、こんな風に変えていきたいということがあれば、教えてください。

木村 生徒がいろいろな価値観に触れる機会を増やしたいです。

たとえば、自分が好きな高校の好きな授業を受けることができるような制度にできるといいですね。今日の午前中は駒場高校の国語、午後は国際高校の数学、明日は三田高校の音楽を受けようとか。本当に受けたい授業を探して、受けに行くことができるシステムが構築できたらいいなと思いますし、通信教育の良さも活用できたら良いと考えています。このようなシステムが構築できれば、中学生の段階で高校選びをしなくても良くなりますし、学びのデザインを生徒が描けるようになるのかなと思います。その結果として、選ばれる側に立つ教師側の切磋琢磨が促されると思いますし。

小林 学校同士の連携ですね。連携という意味で高大連携についての考えを聞かせてください。

木村 生徒たちにはスポーツ、音楽、美術など、知識の幅を広げ、人生を豊かにするような学びにもっと取り組んで欲しいと思っています。高校で人生に必要なことをバランスよく学んだうえで行きたい大学に進学できる、そういう仕組みがあったら良いのになと思いますが、評価方法等の課題も抱えているので実現が難しいのも現実ですね。

自分から行動する

小林 最近の子どもたちをみていて何か傾向を感じますか。

木村 駒場高校の生徒たちを見ていると、とても素直で人に対して優しいですね。生徒たちは、受験勉強や部活に追われて非常に忙しい毎日ですが、それを支える親の力の大きさを感じます。

また、他者の目を意識して、自分から行動することを躊躇する生徒が増えているように感じます。自分のためになると判断したことは頑張るのですが、そう判断できないことは挑戦しないという生徒が多いですね。

小林 木村さん自身は、どんなことに挑戦してみたいですか。

木村 教育全般に貢献したいので、将来的には「教える側」の先生方のためのアドバイザーになりたいと考えています。現場で頑張っている若い先生方をサポートしていきたいです。

また、森林保全やスマートグリッドも興味がありますね。これからの時代は今まで以上に、自然とのつながりを意識していくことが必要だと思います。持続可能な社会の実現は教師の仕事ともつながっています。

小林 木村さんは東京チェンソーズの東京美林倶楽部で木を育てることにも関わっていて、写真はその苗木とのこと。ちなみに、東京チェンソーズ 青木亮輔さんにも近未来ハイスクールに協力いただいたことがありますが、木と自然を愛する素敵な変人です。

木は根を張ってやがて水をもたらす。木を育てるように、長期的な視点で生徒の成長を考えている木村さんには、ぜひとも先生を教える立場でもご活躍いただきたいです。

最後に10月13日のイベントへの木村さんの期待を教えていただけますか?

木村 新しい価値観に触れて、自分の変容を感じたいです。楽しみにしています。

小林 それぞれの先生がたの個性がいい形ででるよう、がんばります!

(オプンラボ 小林利恵子)

木村裕美さん 東京都立駒場高校主任教諭(家庭科)
町田高校定時制、農業高校、調布北高校を経て4校目。「人間と社会」研究開発委員(2018)並びに教育課程委員会作業部会委員(2017)。全国家庭科教育協会(ZKK)常任理事。高校リーダーシップ教育を授業実践している。

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