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DUNE/砂の惑星における母親の欲望について

ライムスター宇多丸のホドロフスキーのDUNE評の中でDUNE映画化の話がリドリー・スコットにもいっていてリドリー・スコットは映画に近親相姦の要素を入れたいといったら原作者のフランク・ハーバートが激怒したというエピソードが紹介されている

確かに一見、ポールとジェシカの関係は母子相姦的にみえなくもない

しかも二人が密閉された空間の中で、全くの二人っきりになり飛行している最中に父親が死ぬのである

これはあまりに明白なエディプスコンプレックスの話ではないか?

ただ実際にはそうではないのである

疎まれているのは実は母親の方なのである

映画の冒頭からして、この母親と息子の間には情愛的な交流が何もないことが描かれている

それゆえにポールの表情は物憂げなのである

ポールの内面にはわだかまりがある

この女、もっと普通の母親らしくできないのか?

妙な訓練ばかりやらせやがって

これが実の母と息子の関係なのか?

映画館で一回みたきりなので見落としはあると思うが、僕の記憶ではこの二人の間にスキンシップ的なものは皆無だった

それと比べると父親の方は、頻繁に肩を叩いたり親密な関係ができあがっている

ポールの手下のダンカンともよくハグをしていてホモソーシャルの世界ではポールは情緒的に充たされている

充たされていないのは母との関係なのである

ただ母ジェシカは息子に対して愛情がないわけではない

むしろ過多なほどの愛情がある

ただそれを何らかの理由があって押し殺している

その理由がポールには癪に障るのである

何故、僕を産んだのだ?という根本的な疑念がある

その感情がテントの中で爆発する

パパやダンカンが死んだのもみんなお前のせいなんだぞ

そもそもなんで僕を産んだんだ

バカヤロー

ただこのような感情の爆発が起きる前段階として、オーニソプターの動力を切って完全に機体に自身を任せ切った状態で、嵐の中に入っていくという過程が必要だった

この何かに任せ切るという体験の中でポールは乳児期にはあったのかもしれない関係を取り急ぎ再現した上で感情を爆発させるのである

このときにその秘めた欲望によって息子を従わせていた母親は、今度は息子に従うようになる

主従関係は逆転して息子が母に教える立場になるのである

だがそれは息子が母親の欲望に屈服することでもあった

つまりジェシカは一見、善人のようだが夫(正式な結婚はしていないが)と息子を自身の欲望に従わせることだけに専念している強かな女なのである







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