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発売前から『SEKIRO』にハマっていた【俺ゲーム・オブ・ザ・イヤー2019】

ゲームライターマガジン12月ふたつめのお題は、自分のなかでの今年一年のベストゲームを決める【俺ゲーム・オブ・ザ・イヤー2019】 。既に1月に入っているので長々前文で引っ張らず、さっさと結論から書きましょう。自分のなかでの今年一番のタイトルは迷うことなく

『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』

です。と書くと「The Game Awards」の後追いみたいな勘違いをする人が出そうなので、ここでちょっと動画を張っておきましょう。

発売日にまぼろしお蝶の攻略動画とか、かっこいいなあ。憧れちゃうなあ。いったいプレイヤーは誰なんだろう……。
これ、俺ね。

鬼庭刑部雅孝の猛攻を平然と弾く凄腕の隻狼。すごいなあ、キュンキュンしちゃうなあ……。
これも俺ね。

と、発売日に攻略動画のプレイヤーを務められるくらいにはプレイしていたんですよ。発売日時点で一心倒してたんだっけな? もしかすると上の動画を含めた攻略動画の作成に追われて一心だけは発売後に倒したかも。逆に上の2人のボスだけに限れば、倒して古いセーブデータ読み込んでの繰り返しで発売前に10を超えるくらいは倒していましたね。

あと、これも俺ね。
そんなわけで、発売直後のSNSや掲示板の盛り上がりは自分にとって愉悦の源。まぼろしお蝶が倒せないという声には「まだまだ子犬よ」と心躍り、鬼刑部に何度も何度も刺突されている様など感動すら覚えました。動画配信サイトも大好きで、“クリアまで配信!”と掲げたYoutuberが志半ばにバタバタとなぎ倒されていくのは最高でした。

うん、我ながらキモイな。

おちょう

経験が指数関数的に手ごたえに変わる体幹ゲージ

そんな『SEKIRO』というタイトルの魅力を誰かに聞くと多くの場合、断片的に語られるストーリーと切った張ったのアクションのふたつを挙げるでしょう。実際ゲーム中で書物や会話で手に入る情報をつなぎ合わせていくと、『SEKIRO』には明確に前日譚があり、それが隻狼や御子を含めた『SEKIRO』の“今”に関連している話だということがわかります。ただ、その前日譚でもすべては語られず、考察の余地が残っているのもおもしろいところでしょう。

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ですが、自分の場合そこまで『SEKIRO』の物語に入れ込んだわけではなく、あくまで戦ってきた、もしくはこれから先に戦う相手の背景を知ることでより戦うことが楽しくなるスパイス的な位置づけ。【俺ゲーム・オブ・ザ・イヤー2019】に輝いた(?)のは、『SEKIRO』のアクション性が大きいですね。と言っても今更『SEKIRO』が高難易度であるという点や、それでいて繰り返しのプレイによる上達が実感となって返ってくるといった根本の部分を語りたいわけではありません。

自分が『SEKIRO』で衝撃を受けたのは“体幹ゲージ”とそれに紐づいた戦闘システム。一応『SEKIRO』をプレイしていない人のために軽く説明すると、体幹ゲージは“あとどれだけ、体勢を崩すことなく攻撃を受け続けられるか”を示すゲージ。敵の体幹ゲージが限界までたまると、敵の体力を最大でゲージ1本分減らせる“忍殺”が行えます。下の動画6:00過ぎくらいで体幹ゲージをためきってから忍殺を行っているので、よくわからんという人はご覧あれ。

ちなみにこれも俺ね

動画のとおり(動画を見るまでもないという人は知ってのとおり)、ボス戦は体幹ゲージをため切って忍殺するというのが基本の流れ。ただ、時間とともにたまった体幹ゲージは減少してしまいます。これがよかった!
一般的なアクションゲームのボス戦だとボスの体力が見えていれば一発でも攻撃を当てればあと何回攻撃を当てれば倒せるかってわかるじゃないですか。もちろん『ロックマン』のように特定の攻撃がとくに有効といった場合や、そもそも体力が膨大過ぎてよくわからんという場合はありますが、それでも何回攻撃を当てればいいかはスクショを撮ったり定規で測ったりすれば明確です。

それが『SEKIRO』の場合、ボスはおろか中ボスクラスの敵であっても疑似的な体力である体幹ゲージが時間とともに回復していくので、どれだけ攻撃を積み重ねればいいかわからない。どちらかというとマゾ系のプレイヤーである自分には、この先の見えなさが刺さりましたね。
「せっかくためた体幹ゲージが、どんどん減っていく。うへへ」
「体力回復してたら、あっちの体幹ゲージもゼロになったよ。楽しいなあ」
だいたいそんな感じ。
話が逸れた! 大事なのは体幹ゲージがじわじわ回復することじゃなくて、継続して相手の体幹ゲージを増やすと時間経過による減少が止まること。この仕組みによってプレイヤーに生まれる感覚を考えると、『SEKIRO』の戦いはアクションゲームのなかでも一歩先を言っていると感じます。

こかげ

まず何を置いても大きいのが、少し自分の腕前が上がると相手の体幹ゲージの蓄積量が目に見えて変わる点。攻撃回数や弾きの回数が増えれば相手の体幹ゲージをより多く蓄積できるのはもちろんですが、体幹ゲージをためる回数が増える=体幹ゲージの時間による減少を抑える時間が長くなるということなので同じ時間で攻撃できる回数が2倍に増えれば体幹ゲージの増え方は2倍では効かない量に。腕前が上がるごとに指数関数的に勝利に近づいていく気持ちよさは、体幹ゲージが疑似的に体力と同等であり、時間とともに減るという要素があるからこそ味わえるものでしょう。

げんちゃん

また、時間とともに減る相手の体幹ゲージがプレイヤーに焦りを生み出す点もおもしろいところ。またまた一般的なアクションの話ですが、ボスの体力が残りわずか。自分の体力も残りわずか。そんなとき、自分が確実に対処できるボスの攻撃が来るまで待って反撃をたたき込むのが手堅い選択肢になりますよね。ですが『SEKIRO』のボスはそれを許さない。時間がたてばあと一撃があと二撃になり、それだけ自分が敗北する可能性が増す。だからトドメを刺すにも焦るんですよ。あのゲージが減る前に、あのゲージが減る前にって。実際、トドメを焦って返り討ちになった経験がある人は何人もいるでしょう。少なくともここに一人います。

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もうひとつ、体幹ゲージに紐づいて語っておきたいのが『SEKIRO』は公平感を感じさせながら意外とプレイヤーに優しいゲームだということ。というのも、隻狼にも敵にも用意されている体幹ゲージ。どちらも限界までたまれば体勢を崩すため、一見敵との体幹ゲージのやり取りは公平なもののように見えます。ですが、隻狼は相手の体幹ゲージをためきれば問答無用で即死させる攻撃を行えるのに対して、敵には隻狼の体幹ゲージをため切ったからといって即トドメを刺してくるような攻撃は用意されていないんですよ。一部の敵は、こちらが体勢を崩したとき専用の攻撃を持っていますがそれはあくまで大ダメージを受けるだけ。同じようなゲージをやり取りさせることで公平な戦いを演出しつつも、実は最後の一手はプレイヤー側にしか用意されていない。そういった作りも含めて体幹ゲージは素晴らしいものだと思うわけです。

もっと人を斬りたかった

体幹という独自のアプローチがとにかく輝いていた『SEKIRO』ですが、少しだけ不満な点もあります。それが“もっと人を斬りたかった”というお話。『SEKIRO』のボス敵には、みんなのアイドル葦名弦一郎をはじめとした“人”と、獅子猿などの“化け物や動物”がいます。正直この“化け物”との戦いは『SEKIRO』の戦いとしては物足りないんですよ。体幹ゲージのすばらしさについて語りたかったので、説明は省略しましたが『SEKIRO』の人との戦いには攻撃を仕掛けて相手にガードを誘発させることで戦いの流れをコントロールしていく楽しみがあります。ですが、“化け物”たちにはこちらから攻撃を仕掛けてもガードを誘発することができません。攻撃を重ねれば素早く忍殺ができるという要素こそあるものの、基本的には相手の攻撃を覚えて、対処して、そのスキをつく、という従来のアクションゲームのボス戦に近い体験しかさせてくれないんですよね。こちらはある意味『ソウル』シリーズ寄りの戦いと言ったところでしょうか。

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個人的な想像ですが、“化け物”との戦いが『ソウル』シリーズに近いものになっているのはフロム・ソフトウェアの保険だったのかもしれません。発売前、さらにはTGSなどでのお披露目前、システム面で『SEKIRO』に『デモンズソウル』や『ダークソウル』のような戦いを期待した層は少なくないでしょうし、その点はフロム・ソフトウェアも承知していたと思います。そういったプレイヤーが“人”との戦いを受け入れないかもしれない。そう考えたフロム・ソフトウェアがあえて“人”との戦いと“化け物”との戦いの2種類をゲーム中に用意したのかもしれませんね。あっ、このあたり100%想像でもろもろのメディアのインタビューとか調べないで書いています。自分としてはこの“人”との戦いをより突き詰めた新作が出るなら10年くらいは待てそうかな。『SEKIRO』は俺 GAME OF THE YEARどころか俺 GAME OF 10 YEARSになりうるタイトルです。

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